無いなら作ればいいじゃない
前回までのあらすじ
「推しチームができたけど、何したら良いのかな?」
推しチームとの運命の出会いを果たした私だったが、残念ながら現時点で自分に出来る事は何も無かった。情報もない、コネもない、だったら作ればいいじゃない。
「無ければ作ればいいじゃない」は、私の悪い癖である。伊達に手作りガチ勢と呼ばれていない。水筒カバーが必要とあれば作り、欲しい形の服が無ければ作り、レース編みをし、紙細工をし、プラ板で工作をし、CDをかけるのが面倒なら歌い、実家に新築祝いとして自作の水彩画を贈る…ドケチおかんアートの申し子たる私は、作る事にした。推しチームとの繋がりを。
夫のタブレットから地味過ぎる問い合わせページを開き、思いの丈をぶつけること数十分。私はスタッフ応募の文面を書き上げていた。
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題名: スタッフとして貢献したい
お問い合わせ種別: スタッフ採用
メッセージ本文:
初めまして、市内在住の松村(仮)と申します。
昨日、郵便局でポスターを見て流山市にサッカークラブができると知り、いてもたってもいられなくなり、勢いでメールしてしまいました。
私は埼玉県出身ですが、住まいが浦和や大宮からは離れており、ホームチームとして応援する気持ちになれずに大人になりました。
札幌サポの夫と出会い、ゴール裏での熱狂やチームを支える喜びを感じるとともに、アウェイの地で活動する困難や苦しみも知りました。(コロナ渦での柏戦観戦はとても辛かったです)
数年前、夫がゲームサカつくで作った架空のサッカーチーム「流山フェデルタ」の詳細を夫婦で詰めながら「本当に流山にあったらどんなに素敵だろう」と、何度も熱く語り明かしました。
今、私は41歳にして未だに自分探しの途中です。家事、子育て、ボランティア活動等で忙しく楽しい毎日ではありますが、夢を追い、情熱を捧げられる仕事に出会える時をずっと待っていました。
ホームタウン流山で、途方もない大きな夢を追う人たちを、スタッフとして支えたいと考えています。どのような仕事があるか分からないのですが、何か自分に出来ることがあればお手伝いさせて下さい。
ご連絡お待ちしております。
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……正直、暑苦しい文章だったと思う。担当のMさんも、困惑したと思うが、返信をくれた。「有償でのスタッフ募集は、今のところしておりませんが、それでも良ければ面談しましょうか」。
なんとありがたいお話。
しかしながら、私はこの返信が来るまでの数日間で、さらに妄想を膨らませていたのだった。
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担当者様
ご連絡ありがとうございます。
地域の発展に繋がる活動をしたいと考えておりますので、はじめは社員としてではなく、アルバイトやボランティアスタッフとして支えていきたく思います。
なお、別件でお願いがございます。
私は趣味で絵を描いておりまして、市内のカフェで年内に個展開催を検討しています。
題材として、NAGAREYAMA.F.Cを使わせて頂けますでしょうか。
具体的には、現時点で公開されている選手の似顔絵を描いて展示したいと思っております。
アマチュアですので、販売ではなく単純に流山のチームを多くの人に知ってもらう為の企画です。
感染対策として接触は避け、写真を元に描くつもりです。
サンプルが必要でしたら、一週間ほどで1作品仕上げて添付いたします。
ご検討よろしくお願いいたします。
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……この女、スタッフとして雇って貰う話から、勝手に広報活動をする事への許可をとる方向に舵を振り切りました。これを読んだMさんもさぞかし驚かれたと思うが、Mさんは良い人なので、また返信をくれる。「まずは一度、お会いしてみましょうか」。松村、狂喜乱舞。取り急ぎデフォルメのイラストと、描き溜めていた別件の人物スケッチを添付し、指定された日を待つ。
1作品と言いながら、勢い余って数人描いて持参。今考えると顔から火が出そうな雑なクオリティなのだが、Mさんはとても喜んで下さった。そして、絵描きは絵を誉められると調子に乗る。
『このチームの為に、絶対に個展を成功させよう』
私の推し活のスイッチが、また一段階深く入った瞬間であった。
お読み頂きありがとうございます。
次回は、思いがけず選手本人と出会い、推し活本格スタートします。




