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蒼翼の獣戦機トライセイバー~崩壊から始まる、希望の蒼き翼~  作者: 硫化鉄
    第五話  「合体シークェンス」

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二 天才少女。

「Gコントローラー……で、ありますか」


 金富が口を開いた。声音に緊張感がにじんでいる。宮司は金富にとって少し苦手な相手らしい。このミーティングで金富が静かにしているのも、宮司の存在が大きな理由だった。


「いわゆる、重力場制御ってヤツだな。重力そのものに介入して飛ばすんなら、機体重量なんざ関係ないからな。詳細は華夕ちゃんの方が詳しいんだが、華夕ちゃん、説明してもらえるかな?」

「はい」


 先生に当てられた生徒のように華夕は立ち上がった。


「この機体に採用されているGコントローラーは、重力の影響をカットするだけではなく、任意のベクトルで重力を発生させることが出来るようです。つまり、簡単に言えば、進みたい方向に【自由落下】させるという事です。この方法ですと、機体の中は無重力状態になるので、他の推進機構のような、急激な加速のGによるパイロットへの負担もありません」


「夢のような推進システムってわけだな。しかし、こんなシステムが実用化されたなんて情報は全くなかった。俺も実用化にはあと20年はかかると踏んでたんだがなぁ」


 宮司の言葉は大榊にとっても実感だった。実際に現物が飛んでいるのを見ているのに信じられないという気持ちが強い。重力場制御なんてSFの中だけの話であって、現実に存在するとは思えなかった。


「重力を制御するというのは、理論的にはそう難しいことではないんです。基本相互作用の中で重力が最も弱く、無視しても良いくらいに小さいものですから。でも、実用化するには大きなハードルがありました」


「【負の質量】ってやつだな」


 宮司が言った。


「前に華夕ちゃんが書いた【正の質量・負の質量・零の質量】は俺も読んだ。あれはすごかったなぁ」


 宮司が目を細めて華夕を見る。華夕は少しはにかんだ表情を見せた。


「ありがとうございます。そうなんです。重力場制御を実用化するには、負の質量を持つ物体が必要なんです」


「となると、これらを建造したものは負の質量を発見、確保し、重力場制御を可能にしているという事か……」


 大榊が椅子の背もたれに体重を預け天井を仰いだ。


「しかも俺らが知らない超技術はそれだけじゃない。大榊も知っていると思うが、この六機には通信機能が付いている」


 それは大榊も気になっているところだった。空間電位の不安定化によって電波通信が実用性を失っている現在、遠距離通信手段を持つことは最強の兵器を持つことと同義だった。防警軍でもその技術を流用できるのかは、大榊にとって大きな関心事だ。


「まぁこれにも重力場制御の技術が応用されているらしいが詳細はまだわからん。そしてもちろん、センサー類は我が軍の比ではない」

「少なくとも我が国が建造した物ではなさそうですね。一体どこの……」


 金富が訝しげな面持ちで口ごもる。宮司は興味なさそうに手を振った。


「そんな詮索は後回しだ。俺らが考えることでもない。まずはT3-2や他の5機がどういうもので、俺らに運用できるのかってことに絞って話す。華夕ちゃん、あれを」

「はい」


 華夕が膝の上に持っていた小型のタブレットを持ち上げて、皆に見せた。


「T3-2のメインコンソール下にセットされていた端末です。これは始動キーの役割も兼ねていると思います。この端末からデータを抽出して分析してもらっています。また、この端末にはマニュアルと、簡単な操作シミュレーションも入っていました」


「練度が高いやつならそれほど時間はかからねえだろうな。ただし、問題がある。現状、例の六機には、最初に乗った六名がパイロットとして登録されている。この登録を解除しなきゃならないんだが、現状まだ出来ていないんだ。明朝までにはなんとか間に合わせるつもりだが、他の五機については詳細不明、専用のシミュレーションも不十分のままって事になりかねないな」


 状況はいつ変化するかわからない。大榊としては、早急に出撃準備を整えておく必要があった。本来であればこのような不明機を実戦に投入する事などあり得ないのだが、統幕からの命令である。この六機を投入する重大な理由が、何かあるのかも知れなかった。


 まずは、命令に対応する最大の準備をすることだ。大榊の腹は据わった。


「宮司さん。そのシミュレーターを軍のタブレットにコピーする事は出来ますか? パイロットを選定する上で、シミュレーションの成績を基準にします。また、出来るだけ早急に習熟させなければなりませんから。それから、出撃後は戦闘も想定されますが、武装の搭載は確認できていますか?」


「シミュレーターのコピーはできそうだ。それから武装だが、端的に言えば、少なくともT3-2には搭載されていない。多分他の五機も同じだろう。だが、まずこの質量自体が武器になる可能性がある」


 大榊が【考える段階】から【動く段階】に切り替わったのを感じ、宮司はにやっと笑った。宮司はこの若い同僚を高く評価している。【考える段階】の大榊にはできるだけ情報を生で提示し、【動く段階】に切り替われば大榊の指示に従えばよい。大榊の、このはっきりとした、メリハリの利いたところが、宮司にとりとても好ましく感じる理由であった。


「質量が武器、ですか?」

「そう。分析の結果、このとんでもない質量は、装甲の分厚さも理由になっているんだ。なにしろ軽量化の必要がないんだからな。とてつもなく頑丈で重いもんが猛スピードでぶつかったらどうなる? 空恐ろしいだろ?」


 大榊は納得してうなずく。


「だがまぁそれがメインの戦闘方法だとは考えづらい。さすがにパイロットへの衝撃がとんでもないものになるし、第一スマートじゃねえ。それに、実はこの機体にはまだデータ解析ができていないシステムがあってな。Pコントローラーって名前なんだが、俺はこのPコントローラーってヤツが怪しいと睨んでる」


 宮司は端末の画面を指で叩きながら言った。正体不明のまま報告しなければならない事が不本意なのだろう。しかも名前からはどんなものか想像もつかない。大榊としても、正体不明のものを計算に入れて計画を立てることは出来ないはずだ。宮司は歯がゆかった。

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― 新着の感想 ―
重くて硬いものが衝突しただけで充分に兵器たり得ますよね〜。 (・∀・) 引き続き、合体を心待ちにしておりますよ。 (「`・ω・)「
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