136.異空間での戦い
「……ここは」
突然違う場所へと連れて来られた天弓は戸惑いの声をあげています。現在私たちがいるのはエルフィオン様が空間魔法で作った異空間です。
かなりの魔力を消費するのと、この場所を維持するのにかなり集中しないといけない事から、エルフィオン様は動く事が出来ませんが、天弓を閉じ込めることの出来る強度と外からこの場所が把握されない隠密性があります。
そして、この場所に天弓を連れて来てくださった功労者であるベアトリス様もやって来ました。
「よくやってくれました、ベアトリス様。首尾良くここに連れて来てくださり」
「ふん、別にそなたのためにやったわけではない。主のためにやったまでじゃ」
「わかっております。それではハルト様の指示通り進めましょうか」
私がそう言うと、ベアトリス様が連れて来てくださった四大聖天使の1人である天弓の周りに七星天女が現れ、聖天使へと向かいます。
嬉々として飛び出して行くルクアとマナ。ルクアは異空間から太刀を取り出して天弓へと切りかかります。同時に飛び出していたマナも頬を耳の横辺りまで裂くほど大きく口を開けて噛み付きます。
天弓は大きな弓を動かしてルクアの太刀を受け止めて、マナへは人差し指を向けます。天弓の人差し指に魔力が集まり、それが矢へと変わり、マナへと放たれました。
しかしマナは悪食。なんでも食べてしまいます。当然魔力すら彼女の食料。たまにハルト様から貰っていて美味しそうに食べているのを見ますし。羨ましい……。
そんな風に天弓が放った魔力矢を食べたマナは、そのまま真っ直ぐと天弓に向かい噛み付きました。しかし、天弓は怯む様子もなく、マナを振り払ってしまいました。
「ふん、魔物風情の噛み付きがフィストリア様より賜わった聖具の防御を突破出来ると思っていますの!」
天弓は、そう言いながらルクアの太刀も弾き返して距離を取ります。しかし、そこに大音の羽音を鳴らしながら飛んでいく虫が。デューアが放ったデスサイズアントたちが天弓へと迫ります。
迫るデスサイズアントに天弓は慌てる様子はなく弓を構えますが、四方から蔓が伸びて天弓の手足を縛ります。レミナイアの蔓ですね。蔓に縛られて動けないところに、デスサイズアントと天弓の頭上からケイシー、ネイシーのデストロスライムたちの触手が天弓へと迫ります。
手足を動かす事が出来ない天弓。ただ、私もこれで終わるとは思っておりません。なので
「やりなさい、エンリエ」
離れたところで準備をしていたエンリエに指示を出します。エンリエは私の声と共にクロノ様、ヘパイネル様の合作による魔導具を構えてそして
「魔銃槍『神撃』発射」
引き金を引きました。途轍もない魔力の塊がエンリエの持つ魔導具から放たれました。放たれた魔力の塊は真っ直ぐと天弓へと向かい被弾します。少し遅れてデスサイズアント、デストロスライムの触手が天弓の居た場所へと向かいます。
しかし、次の瞬間、触手は弾けて消えて、デスサイズアントたちも頭が潰されて死んでいきます。更に煙の向こうから放たれる矢。追撃をしようと向かっていたルクアと私の指示で隙を突こうとしたレルシェンド様も防御に専念しなければいけなくなりました。
「ふぅ……流石に今の一撃は驚きましたわ。しかし、所詮は人間が作った道具に過ぎません。その程度ではやはり聖具は突破できませんことよ」
煙の向こうから現れた天弓には傷は1つも付いていませんでした。……困りましたね。あの防御力はかなり厄介です。
「ベアトリス様、あの聖具というものは?」
「すでに話してはおるが、四大聖天使は女神より力を賜っておる。それと同時に神の力で創られた聖具、天弓であればあの弓と防具じゃ。
神の力で創られているためかなりの能力を有してあったのじゃが……妾と殺し合った頃よりも能力が上がっておる」
……うーん、それは困りましたね。ベアトリス様の話の頃よりは当然能力は上がっているだろうと想定して今回の作戦が考えられたのですが、その想定を遥かに上回っています。
エンリエが放った神撃も調整中とはいえ女神フィストリアに対抗するために作っている武器です。それが配下にすら効かないとなると、女神にも効かないでしょう。
……これは困りましたね。
11月5日には「世界に復讐を誓った少年」が発売されます!!
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