いやに高級なコーヒー
「まったく、この山道で煽るなんて危ないじゃないか!」
髭男は山荘の椅子に腰掛けて吐き捨てるように言う。
「いやでも店長ノリノリだったじゃないですか。」
ヤンに突っ込まれて声をくぐもらせる髭男。
そこへ絹の袋を持った男が来る。
「はいこれ言ってたコーヒー豆とおまけの珍しいコーヒー。君はヤンくん?名前は聞いてるよ、僕はクスノキ。」
クスノキは簡素に挨拶を済ませる。
「まあ車は貸すから君の車が治ったら返してよ。」
クスノキは髭男に車のキーを渡す。髭男はキーには目もくれず袋を覗いていた。
「了解、っていうかこの豆の何が珍しいんだ?」
袋の中身は普段と変わらない黒い豆。
「それ、コピ・ルアクね。」
髭男は眉に皺を寄せる。
「いやいや、日本語でおk」
「店長それジャコウネコのフンからとったコーヒーですよ。」
髭男は嫌悪感を露わにして袋を覗く。
「結構有名ですし喫茶店の店長が知らないって割と致命的ですよ。」
「えっそうなの?」
髭男はしばらくのあいだ袋の中の豆を睨んでいた。
「店長おかえりなさい、大丈夫ですか?」
マキは帰ってきた二人に労いの声をかけた。
「まったく大変だったよ、マキちゃんの運転のほうが安全だね。」
ハハハと笑うヤン。
「いや私路上教習で玉突き事故起こしたので免許無いんですはははははは」
「ごめん。」
マキの禁忌に触れたヤンはすぐに謝った。
「あーこれ、おみやげだから。」
髭男がクスノキに貰ったコーヒーをマキに渡す。
「すごく高級な豆なんだ、美味しいから是非飲んでよ!」
髭男はマキにコピ・ルアクを渡す、コピ・ルアクと知らせることは無く。
「わあ、ありがとうございます。」
揚々と受け取るマキをヤンはほくそ笑んだ。
人の不幸を最大限楽しむ、それがこの喫茶店の男である。
マキが帰ったあとで髭男とヤンは顔を合わせて爆笑した。
「イーーーヒッヒヒ!!ありがとう御座いますだってよォ!ネコのブツから出てきたものとは知らずに!!」
「ウーーーハッハハ!!あれ家でオシャレに堪能するんすかねえ!!?胆嚢を堪能するんすかねえ!!?」
「いやそういうのいいから。」
「うぃっす。」
「働いて。」
一方マキはパソコンで調べ物をしていた。
「袋にコピ・ルアクって書いてあったけど本当に高いの?」
パソコンの画面に映しだされる様々な値段。
「本当だ……1万超えてるのもあるよ。」
「え、コレそういうコーヒーなんだ……だからあのバカ二人がやたらテンション高かったのね、カエデさんにメールしておこう叱ってもらわなくちゃ。」




