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黒い斑紋が白に溶け込んだ大理石の玉座に足を組みたたずむ男がいた。男の名はキング。傍らには目に映し出される光景を貪欲に吸収する女クイーンがいる。王の間は、重厚な壁に囲まれ独自の空気を作り出す。気品と風格が入室する者を選別していた。
「申し訳ありません」
スペードはひざまずきこうべを垂れた。命令に背き、クローバーを失った失態に絨毯の一点を見つめ続けていた。
「弟はここにくるのだろう」
「はい、必ず来ます」
多くを語る必要はなかった。
凝視されたスペードは心の中を空っぽにする。キングに嘘は通じない。
「なら、それでいい」
滝本京也を侮っていた。命令は簡単なはずだった。我々の脅威になるだろう獣を抹殺すること。もうひとつはキングの弟を説得してこちら側に引き入れること。前者をクローバーが、後者をダイヤが担当した。スペードは監視役だった。クローバーとダイヤの暴走はあったが、四天王の能力を持ってすれば造作もない任務だった。
「ボクに任せてよ、キング」
耳に埋め込まれた緑の宝石を摘み、ハートが懇願する。
「まだ早いよ」
死んだはず? のダイヤがハートを背後から抱きしめる。
「姉さん、もういいの」
「首筋がむず痒いけど大丈夫だよ」
じゃれ合う姉妹をよそにスペードは進言する。
「ジャックの称号は弟君に与えるとして、空席のクローバーはどうしましょうか」
「心配しなくていい。その者は既に私のペンダントを所持している」
「わかりました」
「全員さがれ」
三人が居なくなるとキングが椅子に深く腰掛け直す。
「お前を殺すことは命令していなかった」
「再び命をもらいました。目も見えるようになった。感謝しています」
クイーンが、肘掛に乗せ冷たくなっているキングの手を取った。言葉を返すことなくただ頷く。キングに色はない。無色透明。クイーンは立ち上がると金色のノブを回し自室に戻る。細く長い廊下に灯る色とりどりのキャンドルたちが足元を照らす。見るもの全て新鮮で美しく思えた。再会はすぐそこだ。赤・緑・青の三色で編み込められたペアのプロミスリングをなぞる。無意識にほころんだ。
「京ちゃんにもうすぐ会える。早くこの目で見てみたい。あなたの姿を」




