第113話 特訓の変更
土の1の月、5の週の月の日。
今日の授業は魔法具の話だった。
一言に魔法具と言っても大変多くの種類があり、そのすべてを授業で教えるわけではない。
ミカはサーベンジールの魔法具屋に出入りして、そこの店主であるお爺さんからいろいろ聞いていたので多少の知識がある。
授業で取り上げるのは基本的な知識と、特に魔法士に縁の深い魔法具。
普段ミカたちが使う魔法具と言えば、授業でも使っている”判定の腕輪”。
【神の奇跡】の発現を阻害し、その分の魔力を貯える。
また、最近はほとんど使わないが、魔力の感知や操作の練習で使っていた水晶なんかも勿論魔法具だ。
これらはどういった仕組みによって、その機能を有しているのか。
基本は魔石、または希少金属を使うこと。
両方を使うことも勿論あり、それぞれの質や量で値段が跳ね上がっていく。
ミカの持つ魔法具の袋も百万ラーツとバカ高いが、魔力量を測定する魔法具などはそんなもんじゃないらしい。
いくらなのかはっきりとは言わなかったが、おそらく桁が一つ違う。さすがに二桁までは行かないだろうが。
構造としては、説明を聞く限り電子基板のような物に近いと感じた。
魔力の流れを制御し、様々な神々の力を組み込んで、得ようとする機能を実現する。
話を聞くだけで、ミカにはちょっと手が出せそうにない。
正直、あまり細かい作業はなあ……、とげんなりしてしまう。
こうした魔法具を考え、作成するのも基本的には魔法士だ。
求める効果から逆算して、仕組みや構造などを考え、魔法士が設計するらしい。
そして、有用な効果が得られた物は、特殊な技能を持った職人が手作業で生産していく。
大量生産できないので数は限られるし、値段もどうしても高くなってしまう。
一口に魔法士と言っても、どうやらいくつかに細分化されるようだ。
軍にいる、【神の奇跡】という大砲をぶっ放す兵士としての魔法士。
宮廷魔法院にいる、【神の奇跡】の研究をしている魔法士。
こちらも宮廷魔法院になるが、魔法具の研究、開発をしている魔法士。
また、軍や宮廷魔法院を辞めた後に、個人で錬金術や魔法具などを研究している魔法士などだ。
学院にいる間にお世話になる魔法具は”判定の腕輪”以外にもある。
今後、演習などを行う様になると、”変換光の腕輪”という物をよく使うことになるらしい。
これは、発現した【神の奇跡】を光に変換してくれる腕輪だ。
(そんなの、今使ってる”判定の腕輪”も光ってるじゃん。)
と思ったが、この”変換光の腕輪”の優れた部分はそこではない。
なんとこの腕輪、発現させる【神の奇跡】によって色が変わるのだ。
(…………それに、何の意味が……?)
と授業を聞いていて呆けてしまったが、これにはちゃんと意味がある。
そもそも、この腕輪は【神の奇跡】の発現を阻害するが、効果範囲はそのまま機能する。
つまり、”変換光の腕輪”によって光るのは、発現しようとした【神の奇跡】の効果範囲なのだ。
【爆炎】を例にする。
この腕輪を身につけて【爆炎】の呪文を唱えると、本来【爆炎】によって爆発が起きた場所が光るのだ。
【爆炎】なら赤、他の【神の奇跡】ならまた別の色で。これが変換光と呼ばれる光。
【爆炎】は消費した魔力量によって爆発の強さ、炎や爆風の威力、規模が変わる。
その辺りも加味された効果範囲が光るというのが、この腕輪の効果だ。
そして、対になるもう一つの腕輪がある。
それが”変換光検知の腕輪”。
致命的な威力の【神の奇跡】と判断される変換光を受けると、この腕輪が反応して光る。
これで実際の【神の奇跡】の呪文を唱えながら、サバゲーの様に遊びつつ距離感や効果範囲を身につけられるという訳だ。
破壊目標などが設定された演習の場合、この変換光検知の腕輪と同じような機能を備えた物を使用する。
【爆炎】五回で破壊されたと看做す、みたいな感じに。
一応威力も考慮され、一定以上のダメージを与えれば目標の破壊達成となるルールのようだ。
なんだか、早く遊びたくてちょっとうずうずしてきたのは俺だけじゃないはず。
だが、残念ながらサバゲーで遊ばせてくれるのは中等部になってから。
初等部の間は、まだだめらしい。
ちぇーっ。
魔法具という括りは非常に広く、【付与】によって効果を与えられた物もすべて大きな括りでは魔法具になる。
トリュスの使っている長剣が対”不浄なる者”用の効果を与えているようだが、これも広義では魔法具に入る。
腕輪や指輪、首飾りなどにこうした【付与】を与えて、装備している冒険者は多い。
体力、腕力、生命力が上がるような物から、火や熱に強くなる、【神の奇跡】の効果を高める、などなど。
先人が思いつく物は大抵、すでに作られている。
効果もピンキリなら、値段もピンキリ。
本当に有用で、効果の高い物になると魔法具店にもそうそう置いていない。
オーダーメイドで作ってもらうことになるらしい、
当然、素材は”銀系希少金属”などの希少金属だ。
稀に、所有していた冒険者が引退する時に売ったりして出回ることもあるが、そんなことは滅多にないという。
大抵の場合、知り合いの冒険者に少しだけ安くして譲ったりするのだとか。
戦闘などの様々なシーンで、冒険者の役に立つ魔法具。
(こういうのも、そろそろ揃えた方がいいかなあ。)
授業を聞きながら、そんなことを思うミカなのだった。
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土の1の月、5の週の土の日。
「そらっ、よっと!」
授業の後の、いつもの特訓の時間。
学院のグラウンドの隅で、ミカは短剣でリムリーシェを攻め立てていた。
リムリーシェも何とか短剣で受けようとするが、すべては受けきれない。
リムリーシェはすでに砂まみれになっていた。
何度も転び、そのたびに立ち上がって、再びミカに攻められ、また転倒する。
そんなことを、この十分ほどの間に何度も繰り返していた。
「ほらほら、どうしたどうした。」
「くっ! あっ!?」
ずざぁーっ!
リムリーシェがミカの執拗な攻めにバランスを崩して、派手に転んでしまう。
「痛ぁー……っ。」
どうやら、手の甲から手首の上あたりまで大きく擦り傷を作ってしまったようだ。
「大丈夫でござるか、リムリーシェ殿。」
それまで黙って見守っていたバザルが声をかける。
バザルは一人で毎日剣の修行をしているのだが、土の日はこうしてミカたちの特訓に付き合っていた。
というより、一人で黙々と修行をするバザルをミカが捕まえて来るという方が正しい。
剣の腕を上げるなら上手い人に見てもらうのが一番、というミカの考えにより、強引に付き合わされている。
「ミカ殿、もう少し手加減するでござるよ。」
「もうしてるよ。 ほら、リムリーシェ。 立って。」
「う、うん。」
リムリーシェが慌てて立ち上がる。
「手ぇ出して。」
言われた通りに、リムリーシェがすぐに手を見せる。
ミカはリムリーシェの手を取り、傷の具合を確認した。
擦り傷の範囲が広いのは大した問題ではないが、砂が傷口にばっちり張り付いている。
「一回洗い流した方がいいな。 痛むけど我慢しろよ。」
「う、うん。」
ミカはリムリーシェのジャージの袖を捲る。
「”制限解除”、”水飛沫”。」
そうして”水飛沫”で洗い流しながら、砂を取るために傷口をざっと手で擦る。
「ん~~~~っ!」
「はいはい、動かない動かない。」
傷口をいじられ、痛みを堪えるリムリーシェが呻く。
ミカはざっと傷口を流すと、皮膚の下に入り込んだ砂を確認。
洗い流しながら、それらも念入りに取り除く。
「んん~~~~っっっ!!!」
「容赦ないでござるな、ミカ殿……。」
涙目のリムリーシェに対し、淡々と治療を進めるミカを見ながら、バザルが半目になって呟く。
「【癒し】は便利だけど、異物までは取り除いてくれる訳じゃないから。 綺麗に治したければ、余計な物は取り除いておく必要があるんだよ。 バザルも覚えておくといいよ。 はい、終わった。」
ミカがそう言うと、リムリーシェが急いで【癒し】を使う。
黄色い光の粒がリムリーシェの手を包むと、あっという間に傷が完治した。
皮膚についた血を洗い流してやると、リムリーシェのつるつるの手が現れる。
「じゃ、リムリーシェは一休みかな。 さあやろうか、バザル。」
ミカがにやりと笑う。
ミカはリムリーシェを休ませ、その間バザルに付き合えという。
十分間、みっちり動いたリムリーシェは息が上がっていた。
今の治療で気力もごりごり削られただろう。
「……ミカ殿の相手は疲れるでござるからなあ。」
「何寝言言ってんだよ。 リムリーシェは休みながらでいいから、ちゃんと見てなよ。」
「うん。」
ミカとバザルは少し離れ、向かい合う。
「じゃ、ルールはいつも通りで。」
「分かったでござるよ。」
そう言ってバザルが溜息をつく。
そんなバザルの様子に構うことなく、ミカは短剣を構えるのであった。
■■■■■■
無事に【爆炎】と【癒し】を習得したリムリーシェ。
土の日の特訓も、特訓とは名ばかりのただの魔力操作の練習になっていた。
魔力操作は大事だし、特訓の時が一番集中できると言われれば、継続するのも悪いことではない。
それでも、正直もう必要ないのでは?という思いはずっとミカの中にあった。
【爆炎】と【癒し】、そのどちらかを発現できるというのは、クラスでもそこそこいる。
だいたい三分の一くらいか。
だが、両方を習得したのはレーヴタイン組だけ。
そのレーヴタイン組の中でも断トツに多い魔力量を誇るリムリーシェは、成績でいえばミカに次ぐ二番手につけている。
ぶっちゃけ、ミカとリムリーシェの成績は飛び抜けていた。
新たに習得した二つの【神の奇跡】は必要となる魔力量がかなり多い。
【爆炎】は特に「最低でもこれだけの魔力量が必要」というラインがめちゃくちゃ高い。
ミカとリムリーシェ以外のレーヴタイン組では、三回も使えば魔力枯渇でぶっ倒れる、というくらいだ。
【身体強化】で二倍強化を二時間維持できる程度の魔力量は、魔法士としては最低レベル。
これで他の【神の奇跡】でも使えば、もはや【身体強化】に回す分の魔力などない。
そして、【身体強化】を使えない魔法士など、どんな時でもただのお荷物だ。
素の体力が騎士や兵士に大きく劣るので、行軍では周りについて行くことができず、設営などでもあまり役に立たない。
これまでのリムリーシェは、どうしても目の前の課題に取り組むことに意識が向いてしまっていた。
それはそれで大事なことだが、今はその課題から解放された状態だ。
すでに一年で行うべき課題が終わり、さて残りの期間をどうしよう?と考えたのかもしれない。
「もっと短剣で戦えるようになりたい。 ミカ君みたいに。」
ある時、土の日の特訓の終わりに、そうリムリーシェが言ってきた。
素の状態の体力を底上げし、剣の腕を磨きたいのだという。
(なぜ、それを俺に?)
と思わなくもなかったが、まあ相談相手に選ばれたことを光栄に思っておこう。
自分に短剣の指導ができるか分からないが、やってみて無理そうならまた方法を考えることにしよう。
こうして、土の日の特訓の内容が魔力の操作から、短剣の訓練を含む身体を鍛えることに変わった。
だが、授業の延長程度の内容なら、わざわざミカが付き合う必要はない。
なので、最初に確認しておいた。
「厳しくいくよ。」
「い、いいよ。」
「泣いちゃうと思う。」
「な、泣いても平気だから。」
泣くことは否定しないのね。
「すぐにやめたくなるよ?」
「ならないから。」
リムリーシェは唇をぎゅっと引き結び、真剣な表情でミカを見る。
(……この子も随分と強くなったもんだ。)
少しずつ強くなっているとは思っていたけど、こんなにも強い意志を見せるとは。
ミカとしても、リムリーシェの成長は本当に嬉しい。
ならば、更なる成長のために一肌脱ぐのは吝かではない。
ミカは普段の授業では、リムリーシェとクレイリアの二人を同時に相手にしている。
そして、ミカが攻撃をしても二人には『やられた』という判定がされないため、基本は受け流したりすることを目的に剣を使っている。
あとは精々、動きをけん制するために剣を出すだけだ。
そうするとどうなるか。
リムリーシェは攻撃はするが、ほとんど防御をすることがなくなる。
なので、特訓ではミカは意識して手数を増やすことにした。
授業では二対一。
それが一対一に変わり、しかもミカが意図的に手数を増やしているのだから、リムリーシェは手も足も出ない。
防戦一方になる。
それでも追いつかず、すぐに無理な体勢になり、よく転倒するようになった。
一度、ひどく膝を擦り剥いてしまったことがあり、リムリーシェがすぐに【癒し】を使おうとした。
「痛っ。 うっ、く…………こ、浩々たる生命の源流、水の大神。 その偉大な――――。」
「あー、待て待て待て。 ちょっと待って。」
ミカは涙目のリムリーシェが【癒し】を使おうとするのを止める。
「な、なに!? なんで!?」
リムリーシェは早く治したいのか、焦った表情をしている。
これまで学院で怪我した時は教師が【癒し】を使ってくれた。
そして、そういう時は傷口の洗浄などは行わない。
【癒し】を使って「はいお終い、さあ行ってこい。」という感じ。
「そのまま【癒し】を使うのはだめだよ。 傷口を綺麗にしないと。」
「で、でも……。」
ここはグラウンドの隅の方だ。
傷口を洗うには、寮の近くの井戸まで行かなくてはならない。
痛みと血で、頭が混乱しているのだろう。
リムリーシェは涙目のまま、おろおろしていた。
ミカはそっと溜息をつき、怪我をした方のリムリーシェの靴を脱がす。
「……皆には内緒にしといてくれよ? ”制限解除”、”水飛沫”。」
ミカは左手から弱い”水飛沫”を出し、傷口を洗う。
この時のリムリーシェの顔は中々見ものだった。
ただただ目を見開いて、茫然としていた。
傷口を触られて痛いはずなのに、ぴくりとも動かない。
この時も皮膚の下に入り込んだ小石を取り除くのに、結構いじったのにね。
【癒し】も使い、治療が終わってもまだリムリーシェは再起動しなかった。
なので、そのまま一旦休憩。
そうしてしばらく休んでいると、リムリーシェがぽつりと呟く。
「…………今の……何……?」
見ると、まだ再起動が完了したとは言い難いリムリーシェが、こちらを見ていた。
「【神の奇跡】。 ……みたいなものかな。」
「…………習って、ないよね……?」
「そうだね。」
少しずつ頭が働くようになってきたのか、声に少しだけ力が戻る。
「習ってないけど、使えるの? ううん……学院以外で、習った?」
リムリーシェは眉を寄せ、難しい顔をしていた。
少しは考える力が戻ってきたらしい。
「習ってないよ。」
ミカは微笑みながら答える。
さて、どこまで話したものか。
(今までも必要に応じて人がいても使ってたから、絶対に隠さないとって訳じゃないけど。)
そういえば、自分で考えた魔法だってことは、これまでも誰にも言ったことなかったか。
さすがにそこまでは言わない方がいいか?
「誰にも言わない?」
「う、うん。」
リムリーシェが真剣な顔をして頷く。
ミカがじっと目を見つめると、リムリーシェも背筋を伸ばして見つめ返す。
「……僕は、学院に入る前からこんなことができたんだ。 ”水球”。」
手のひらに小さな水の塊を作ってみせる。
リムリーシェは、目を丸くして驚くが、さっきのように固まりはしなかった。
「学院に入る、前から……?」
「そう。 ていうか、これがバレたから学院に来ることになったんだけど。」
”水球”をぽいっと投げ捨てる。
まあ、”学院逃れ”とかの細かい話はいいだろう。
「学院に来る前から魔力の操作くらい普通にやってたんだよ。 だから、リムリーシェの魔力感知が上手くいかない理由もすぐに見当がついた。」
「あ……。」
リムリーシェが口を僅かに開き、また呆けたような顔になった。
再起動が始まってしまったようだ。
そうして、しばらく待っていると再び動き出した。
「……だから、ミカ君はすごかったんだね。 誰にも習わなくても、こんなことができちゃうくらいなんだもん。」
リムリーシェの目がきらきらし始めた。
何だか、妙な納得のされ方をしたな。
「僕は努力しただけだよ。」
「そんなことないよ! ミカ君はやっぱりすごい才能があるんだよ!」
そういうことではないんだが……。
「僕、本当なら魔力なしだから。 たぶんここにいなかったよ。」
「ええっ!?」
よっぽどびっくりしたのか、リムリーシェには珍しいくらいの大声で驚く。
「教会の儀式で魔力のことを知って、きっかけを得て魔力の操作を自分でやれるようになった。 本当なら僕は魔法学院じゃなくて、教会で教わってたと思う。」
今思えば、本当にごく僅かな魔力を喜々として操作して遊んでいた。
あの頃の経験があるから、俺は細かな魔力の操作が得意なのかもしれない。
「魔力の放出方法に気づいて魔力量が少しずつ増えていって、そのうち”水球”もできるようになって。 それでようやく魔力量が規定に届いたんだ。」
思い返すと、本当によくそこまで魔力量を増やせたと感心する。
「努力してなかったら、僕はここにいないよ。」
「………………。」
ミカの話を聞いて、リムリーシェが深刻な表情をして黙り込む。
この日は、リムリーシェが上の空になってしまったので、特訓はお終い。
週明けには元のリムリーシェに戻っていたが、何だか短剣の授業の本気度が上がったような気がした。
授業で本気出されると、二対一なんで非常につらいんですけど……。
その次の特訓でバザルを見つけ、捕獲。
特訓に付き合わせることにした。
リムリーシェがまたも派手に転倒して怪我をしたので、”水飛沫”を使った。
勿論、バザルにも口外しないように約束させた上で。
■■■■■■
「はぁーーっ、やっぱ勝てねーっ。」
「ミカ殿も倒しきれなかったでござる。 やっぱり、ミカ殿は厄介でござるな。」
バザルとの訓練が終わり、ミカは大の字になって寝転ぶ。
今のところ、ミカはバザルに一度も勝てていなかった。
もっとも、ミカは短剣、バザルは剣。
得物の長さが全然違う。
これで勝とうという方が割と無茶な話なのだ。
何より、剣術家を目指して何年も努力してきたバザルに早々勝てる訳がない。
むしろ、一方的にやられないだけでも驚異的といえる。
「くっそー、次は勝つ!」
「それはないでござるな。」
「うっせー、余裕見せやがってーっ!」
ミカは寝っ転がったまま、癇癪を起したようにじたばた暴れる。
「これだけやって、それだけ元気があるのだから、ミカ殿も大したものでござるよ?」
「そんな慰めはいらねーんだよ! 僕が欲しいのはバザルの首だ!」
「怖いこと言わないで欲しいでござるよ!?」
負けず嫌いを発揮するミカを見て、リムリーシェは苦笑する。
そういえば、サーベンジールの学院に通っていた時もミカはこうしてムールトに挑み続け、ついには勝ってしまったのだ。
そのことを思い出し、
(私ももっと頑張ろう。)
そう思うリムリーシェなのだった。




