至れり尽くせりな件について(仮)
「わからないな」
中根はそっと立ち上がる。
「どうして、この人間に自由にやらしているんだい? ベルフェゴール」
かおるの周りに大きな黒炎の竜の形状がしたものができる。
《俺は怠惰だからな。お前みたいに勤勉じゃないんだ。人間の体を乗っ取るなんてめんどくさいことはしたくない》
「なら、ワタシに力だけ貸したまえ、その人間の体だけあれば、お前はまだ、この世の中にいることができるだろう? だから、その人間の意識だけ切り取り、ワタシにその力だけ渡せば、お前は何もしなくていい。その人間の寿命分、この世の中に入れる。それなら、しばらく向こうには行かなくて済むだろう? どうだい?」
《そうだな。その提案はいいものだな》
「なら・・・」
《だが、残念だ。俺は怠惰だが、面白いことは見ていたいと最近思うようになった。そして、それはお前に力を貸すよりも、この男に力を使われていたほうが見ることができると感じた。だから、俺はお前に敵対する》
中根は腕組みをして、首をまたかしげている。
「また、わからないな。ワタシが目覚めない間にどうしてこうなったのか・・・、ふむ・・・」
かおるは、あえて今、相手が何かしてくるまで待っていた。今回はかおるが相手に戦いを挑んでいるほうだという意識からである。だから、今回はすべて先手ではなく後手で仕掛けて、相手の攻撃をすべて防いだ上で、完膚なきまでに叩き潰す。
「その人間には、何か面白いことがあるのか、お前がそこまで言うのだから、その人間を解剖でもして調べさせてもらおうか」
中根は、ある小瓶を手に取る。
それはアリスが持っていたものだ。その中にはある炎が入っている。
「これは、ウリエルの炎だな。我らに効力があるものだ。そして、契約をしているのがあの人間ということは、直接触れさえしなければワタシでも使えるかな。副作用はすべてあの人間に向くわけだし、いい考えだと思うぞ」
中根はそれを浮かす。すると、小瓶の蓋が開く。
「operation(操作)」
すると、ウリエルの炎が浮かび上がり、それが増えだした。
「お! 偽者だからか、操れた。だが、これだとベルフェゴールには勝てないか・・・、ならadd(付加)」
すると、ウリエルの炎が光出した。
《あれは、アウモデウスの力をウリエルの力に付加することによって、威力を挙げたな。あれだと、本物と同等の力と考えたほうがいいかもしれないぞ》
「そうか・・・」
アリスの話から、アウモデウスの能力は言魂を主体としたものであることは予想していたので、ここまでの展開には何も驚きはなかった。
「一つ聞いてもいいかな? 人間」
中根からの初めての質問で、初めてかおるに対して言葉を発したものだ。
「何だ?」
「先ほど、貴様はあの人間に、力を分けただろう? それによって、貴様の面白さが半減するということはないのか?」
「ふん。そんな心配はいらない。漆黒の力は本人の意思で随分変わるものだっていうのは、今日学んだことだからな。俺の怒りがピークになっている今、より面白くなってるはずだぞ」
「そうか、ならいい」
中根が構える。人間相手に構えを見せるとは、よほど自分を壊したいんだろうとかおるは思った。
「来いよ」
その言葉よりも早く。アウモデウスが突っ込んでくる。それと同時にウリエルの炎も向かってくる。
かおるは、自身の周りに黒雷炎を纏う。これは黒炎と、黒雷をマックスで掛け合わせたものだ。それを、ウリエルの炎に飛ばす。
2つの炎が激突する。
その瞬間、アウモデウスが急速に後退して、かおるから距離を取る。
「驚いたな」
衝突による煙が消えると、2つの炎がぶつかり合った場所には黒雷炎だけが残っていた。
「本物と同等まで引き上げたウリエルの炎を消し去るほどの力とは、うむ、面白い」
そのとき、地面にある術式が発動する。
「これは・・・」
「お前なら、わかるだろう? これは漆黒の祭典、これでもう逃げることはできない。そして、これだ・・・」
かおるの右手には、ある球状の玉がもたれていた。
「これは、川瀬さんの中にあるお前が欲していた力だ」
かおるは先ほど、孝子に自分の力を与えると同時に、その力を川瀬から抜き出していた。
「この力は、お前が人間を襲って種付けをしていた力だろう? その人間の中で人間の生命を栄養としてこの力は成長をする。そして、それをお前が喰らうことによって、お前は力を得る仕組みになっている」
この力の玉を触れたとき、漆黒の力のおかげなのか、この玉に関しての情報がすべて頭に流れ込んできた。
「その玉を、あの人間から、なんのダメージも負わせないで抜き出すとはな。今日は驚いてばかりだ・・・、で? それをどうするんだ?」
「お前にくれてやるよ。この力を食らって、お前の最大の力で俺に攻撃をしてこい」
「それをすることのよって、貴様に何のメリットがあるんだ?」
「そんなことはどうでもいいんだ。ほら」
かおるは、その玉を中根に放る。
「安心しろよ。罠なんてものはないから」
中根は、少し躊躇した後、かおるの言葉が真実であると確認したのか、それをほお張る。
「かおる、随分強気じゃないか」
「まあな。ちょっと格好つけたんだ」
「字面だけ取ればね」
「どういうことだ!」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。




