いきなりニヤニヤしている件について(仮)
「どうしてなんだ?」
竹市が篠原に聞く。
「たかこは、純潔の魔女だ」
「彼女もなのか!」
「ああ、魔女は特殊な能力を持ってるだろう? たかこはその中でも世界の全精霊と対話をすることができるんだ」
篠原は店員に再度、お冷を頼む。
正子が、続きを言う。
「魔法使いは四元素の精霊を媒介として魔法を行使するんですが、精霊と対話できるわけではありません。あくまで媒介とするだけで、結果として魔法を使うことができるようになるんです。でもたかこさんは対話ができる。でも、これ自体が魔法の威力に直接的な影響があるわけではなんです。対話ができるからといって、精霊の力が増すわけではありませんから」
「つまり、精霊との対話ができるからといって、それが優位に働くわけではないってこと?」
「いえ、魔法自体の力を上げることはできませんが、その他は別です。例えば、相手が同じ魔法使いなら、相手が行使しようとしている魔法の種類などがわかったり、相手が隠れていても精霊が教えてくれます。戦闘ということを考えれば、これは大きな武器になります。そして、逃亡をする際にも同じです」
逃亡とは、なんとも大それた言い方であり、しかも、冷たい言い方ではあるが、それ以外に言い方がなかったのだと、かおるは理解した。
「つまり、俺達の行動を精霊によって把握することができるってこと?」
「そういうことです」
この説明に、竹市も納得をしたみたいで、何回も説明の途中で頷いていた。
かおるも、大体わかった。
しかし、それならなおさら全員で行動しても意味がない気がする。
それは竹市も同じであったみたいで、彼がそれを尋ねる。
「そこで、なぜ全員で一緒に捜索ということになるんでしょうか?」
「全員で捜索といっても、皆で一列揃って捜索するわけではないんです。ある一拠点を目指して、捜索するんです」
「どういうこと?」
かおるは首をかしげる。
それには篠原が反応した。
「つまり、ある地域を捜索するとするだろう。そのときに、皆で円状になって、ある最終地点に向かって移動するんだよ。簡単にいうと、東西南北から、中心に向かって移動する感じだな」
その説明を聞いてもかおるは首をかしげたままだった。
移動の仕方はわかる。
でも、それがなぜ、川瀬捜索に役立つのかわからなかった。
正子もそれを察したらしく、篠原の後を引き継ぐ。
「わたし達が捜索する地点の魔力分布と、固有電波を良太郎さんに確認してもらうんです。わたし達が、たかこさんに、常に通信を送り続ければ、いくら電波拒否をしていても、電波分布に異常がでます。その異常がでている箇所におそらく、たかこさんがいることになるんですが、今まではそれがわかっても、一人づつだったので逃げられてしまっていたのだと思います。それを、全員でしかも、包囲して探索することで、より発見する確率があがるというわけです」
理屈としてはわかる・・・だが・・・
「それだと、広範囲の探索はできないですよね? 円状に全員で分かれるとしても、お互いがフォローできる距離でしか広がることができない。そうなれば、そこまでの広範囲を一回でできるとは思えません。無理に広げてしまえば、間を抜けられてしまえば、居場所がわかっても意味がない。それでは本末転倒ですから」
そう。かおるもそれを感じていた。竹市ほどに詳細に自分の意見を理解していたわけではないが・・・。
「ええ、だから、ここからはむやみに捜索するのではなく。場所を特定して捜索します。そのほうがむやみに捜索するよりはいいかと」
「俺も正子の意見に賛成だ。ある程度限定して、捜索したほうがいいと思う」
竹市は、悩んでいる様子だった。
おそらく、この作戦の問題は、どこを捜索するのかというところだ。ある程度、予測ができる場所がなければ意味がない。
「そういえば、人員は俺達しかいないの? 宮内家の人達の手を借りることはできないのかな?」
ここで、かおるはいいことを思いついたと思った。
宮内家の人員を使えるなら、それに越したことはない。
しかし、帰ってきた答えはいいものではなかった。
「だめだ。宮内家は今、まだ、この前の騒動の収束に人員が割かれている。何せ、土地の管理者がいなくなったわけだからな。他の土地との関係やらなんやらで、簡単に人を避ける状況ではないんだ」
竹市は低い声で言う。
軽率なことを言ってしまった。
「限定する箇所はもう決まっているのですか?」
その言葉を聞いて、正子と篠原は、いじわるな笑顔になった。
「おびきよせようと思っています」
「どういうことですか?」
「簡単な話だ。あいつの中にある中二精神をくすぐるんだよ」
かおるは、その言葉を聞いてあまりいいものではないだろうなと思った。
だが、おそらく、このまま八方塞がりのまま捜索をしたとしても、彼女を見つけることはできないのだろう。何せ一週間も見つけられなかったのだから、これは、2人の意見に乗ったほうがいいのかもしれない。
かおるは、ニヤニヤしている2人を見て思った。
「なかなかカオスな話になっちゃったね」
「ほんとだぞ、まさか来るのかな?」
「明日のお楽しみってやつだね」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。




