予想がハズレた件について(仮)
「ごめんね。宮内さ・・・?」
玄関前に立っていのは、黒い衣装に身を包んでいる女性だった。
「えっと・・・どちら様で?」
正子ではないのかと、彼女の名前を出しながらドアを開けたことが、少し恥ずかしく、かおるの顔は少し赤くなる。
「ごめんね。死んで」
「えっ?」
女性の口角が上がる。
その瞬間、かおるの体が、家の中に吹き飛ばされる。
「いって!」
かおるは背中から、床に転がる。
顔を上げると、目の前には複数のナイフが浮かんでいた。
それが、かおる目掛けて飛んでくる。
「くそっ、ベルゴ!!」
そのナイフの雨を、黒炎が防ぎ、すべて燃やし尽くす。
いきなりの事態で、意味がわからなかったが、かおるもこの前より場慣れしているので臨機応変に対応はできる。
かおるは、自身の中にある臨戦態勢の格好で立ち上がる。
周りには黒炎が纏っている。
「いきなり物騒じゃないか。いったい誰なんだ?」
「驚いた。ここまでの力を持っている人間が、あいつの仲間にいたなんてね。自分の鍛練はロクにしてないのに、その替わりの強力な仲間集めには奮闘していたわけだ」
「あいつ・・・?」
「まあ、いいわ。無駄なことだから・・・」
井上家の辺りに魔法式が浮かび上がる。
「この辺一帯を吹き飛ばせば問題ない話だからね」
地面が揺れ始める。
(ベルゴ、防げるか!?)
《厳しいな。これは言うなれば地震だ。振動系魔法の広域連鎖によるものだな。もう魔法式は発動してしまったから、焼き尽くしても無駄だな》
どうする? 規模はこの家だが、周りに対する影響がないとはいえない。
「かおるさん!!」
そのとき、リビングから川瀬が出てくる。
「わたくしに魔力を注いでくださいまし!」
「!?」
「早く!!」
よくわからないが、川瀬の言う通りにしないといけない。そう思い。かおるは彼女に魔力供給を行う。これは、正子に彼女の祖母を送ったときにレヴィアタンの力を使ったときと、同様のやり方でできる。
「ありがとうございますわ!」
川瀬は、自分の手に持っているステッキを地面に下ろす。
「世界の理をすべし、全精霊に継ぐ、時の流れに身を任せし我をその枷から解き放ちたまえ!! エリミネイト!!」
ステッキから、青い発光が出る。
「!・・・収まった?」
ゆれは収まっていた。
かおるは、視線を川瀬に向けなおす。
「おい!!」
川瀬はその場に倒れていた。
彼女の元にかおるが駆け寄る。
すると、2人を黒炎が取り囲む。
「あら? 不意打ちでも反応するのね。その炎、なんとも便利なものじゃない」
「くっ!」
かおるは、謎の黒ずくめの女に、黒炎を伸ばす。
それを、彼女は家の敷地の外までかわした。
「仕方がない。今日は一旦引くとするわねナイト様、その子に伝えておいてくれるかしら、また迎えにくるってね」
「ナイト様? っておい!」
女は転移魔法っぽいものでその場から消えた。
まったく、なんだったんだと、かおるはなんとか、川瀬を抱きかかえた。
結構重い。
もしかしたら、また、何かに巻き込まれ始めているんではないかという疑問が拭いきれないが、今はそれを考えるよりも先に、川瀬が心配だ。今の彼女は意識がない。
そのとき、玄関から音がした。
かおるは、玄関を見る。
「あんた・・・、」
「おう、ハルカか、おかえり」
なぜか、ハルカは、かおるの顔を怖い顔で見ている。
「どうしたんだよ。入れば?」
「あんた。とうとう、人を攫うような犯罪者になったんじゃないでしょうね」
「は? 何いって・・・」
かおるは、自分が抱きかかえている人物を見る。
おっと、困ったもんだ。やはり、自分の幼馴染は妄想力豊かだ。
確かに、今の川瀬は格好があれだ。
まず、かおるのジャージを着ているし、なぜか、汗ばんでいて、いやらしい。しかも下着を現在着けていないんだから、その体のラインが際立ってはいる。
確かに、傍目からみたら、変な状況なのは、言うまでもないが、断じて今、変なことが起きているわけではない。断じて、今抱きかかえている人間からいい匂いがするなとか思っていはいない。断じて、意外に女の子って、やわらかいなとか思っていない。
そう、断じて!!
かおるは、平静を装ってハルカに向き直る。
「落ち着け、ハルカ、これに至るまでには、いろいろなことが起きたんだ。決して、何かやましいことがあるわけではない。だから、そのこぶしを収めてはくれまいか?」
「気持ち悪い顔して何いってんのよ!!」
「それは、元からだ」
「その子の変なところ触ってんじゃないわよ」
「誤解だ」
「しかも、その子、宮内さんの友達じゃない」
「それは正解だ」
「あんたの性根は私が叩きなおしてやるわ!!」
「うん、もう一度、最初から話し合おう」
「もう、遅い!!」
ハルカが、かおるに突進してくる。
おいおい、こいつは、今かおるが女の子のことを抱きかかえているのをわかっているんだろうか?
かおるは、鉄拳が飛んでくると思い、顔に力を入れる。
しかし、ハルカのほうが一枚も二枚も上手であった。
彼女はまず、脛に蹴りを入れる。
その激痛で弱まった手を引き剥がし、川瀬をかおるから奪い取る。そして、ガラ空きになった。かおるの顔面に上段蹴り。
これで決まりだ。
「ふん・・・いいけりだ・・・」
かおるはノックアウトされる。
「いいけりだ・・・って気持ち悪いね。どMだね」
「勘違いだ。これは作者の陰謀だ!」
「これからもかおるの変態度を高めていきますよ」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。




