ちゃんと確認しないといけない件について(仮)
かおるが、川瀬を説得するのには結構な労力がいった。
なので、井上家に川瀬を連れて行くまで、様々なやり取りがあったが、流石の彼女をそのままにはできなかったので、かおるの粘り勝ちで、川瀬を家で休憩させることができた。
本当に、年上とはいえ面倒な人であった。
「これでも使ってください」
「ありがとうですわ」
かおるは、川瀬にバスタオルを渡す。その他にも、ぬれている彼女の服の替わりとなるものをかおるは適当に探してきていた。
もう、夏前だというのに、なぜか、川瀬の体はかなり冷えていたのを先ほど体を支えた際に、かおるは感じていた。
家の電気は、2人が戻ってくるときには復旧していた。最近のライフラインの復旧の早さには、かおるも感心した。
「これは、ハルカの服なんですけど、もしかしたら、サイズが合わないかもです。こっちは俺のジャージなんですけど、どうしますか?」
ハルカには悪いが、適当に彼女の部屋から服を取ってきていた。
川瀬にはシャワーを浴びて欲しかったが、体調が芳しくない様子だったので、服だけでも着替えてもらうようにした。
「そうですわね。窮屈なのはいやだから、そちらのジャージにしようかしらね」
「あ、じゃあ、これに着替えてください。脱衣所は向こうにありますから」
「わかりましたわ」
下着もぬれているので、それも替えたほうがいいとは思ったが、ハルカからそこまで勝手に借りるのはできないし、そもそも、それこそサイズが合わない。川瀬は宮内と同様にかなり豊満だった。
2分ほどして、川瀬が脱衣所から戻ってきた。
「ちょ!」
かおるは、顔を背ける。
別に川瀬が、裸で出てきたわけではない。ちゃんとかおるが渡したジャージを上下着ている。そう・・・それだけしか着ていない。
「なんで、下着まで脱いでるんですか!」
「いや、気持ち悪かったものですから」
川瀬は、片手に下着、もう片手にゴスロリ衣装を持っていた。
「とりあえず。それは、乾燥機にかけますから、脱衣所にあるのに入れて乾燥してもらえますか?」
「わたくし、機械は使えないですわ」
「じゃあ、乾燥機は俺がかけますから、中に下着を入れておいてください!」
「わかりましたわ」
川瀬はまた脱衣所に入っていく。
まったく、あれは体調が悪いからなのか、素なのかどっちだ。恥じらいが欠けているのか、自分が男として見られていないのか・・・、後者なら少しショックだなとかおるは思った。
「入れてきましたわ」
「じゃあ、俺、乾燥してきますから、ここで休んでてください」
かおるは、乾燥機をかけにいく。
戻ってくると、川瀬はリビングのソファーに座って、髪の毛をタオルで拭いていた。
彼女の髪の毛は背中まで伸びるロングヘアーだ。髪の毛は明るく、ブロンドといってもいい髪色である。もしかしたら、ハーフか何かなのかもしれない。
かおるは、キッチンに入り、冷えた体を温めるものをと、適当に暖かいものをと思い。あたりを見渡した。
(まあ、これしかないか)
かおるは、ココアの粉が入った袋を手に取る。これはハルカが飲んでいるもので、あまり使ってはいけない気がするが、仕方がない。緊急事態だ。
それを、コップに入れて、お湯を入れる。ココアの深い香りが鼻にかかる。いい機会なので、かおるは自分のコップにもそれをいれた。
「どうぞ」
「どうもですわ」
コップを川瀬の前に置く。
部屋には冷房がかかっていたが、それは今は消した。
かおるは、リビングの長机のほうの椅子にすわる。
2人は同時に、コップに口をつけた。体に熱が染み渡る。
「あったかいですわね」
「そうですね」
かおるにとっては熱いであったが、かおるは同意する。
さてと、これからどうしたものか・・・。
かおるは、ココアを片手に、スマホである人物に連絡を取っていた。それは、もちろん正子にである。彼女に、これまでの経緯を手短に文章にして、送る。
返信はすぐには来ない。まあ、彼女も忙しい身だ。
「あの? 外って雨降っていましたっけ?」
沈黙に耐えれなくなって、かおるは尋ねる。先ほど、地面には雨の後がなかったのに、彼女の体はびしょぬれであった。
「そうですわね。山のほうでは降っていましたわ。かなりの豪雨でしたわよ」
ということは、山のほうからこっちまで来たということか・・・。
「ってことは、こっちもいきなり降ってくるかもしれませんね」
「山のほうの雨は一時的なものなので、こっちは降らないと思いますわよ」
「でも、天気予報では、こっちも雨の予報になってましたよ?」
「・・・・・・。」
川瀬は、窓から、空を眺めていた。
「あの・・?」
「え!、ああ、雨ですわね。そうですわね。天気予報がそうなら、そうなのではないかしらね」
川瀬は、交流の少ないかおるから見ても、明らかに上の空であった。
ピーンポーン
そのとき、チャイムがなる。
かおるは、もしかしたら、宮内が家に来たのかもしれないと思った。ハルカなら、そもそもチャイムを鳴らす必要がないからだ。
かおるは、玄関まで小走りで行く。
そのとき、かおるは後々後悔する。ちゃんと、インターホンのカメラを見てから行くべきであったと・・・。
「勝手に部屋に入っても大丈夫だったのかい?」
「ハルカのか?」
「そう」
「まあ、それはだめだよね」
「これからが大変だね」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。




