大物から小物への件について(仮)
「お前こんなことをして、ただで済むと思うなよ。俺が必ず、お前を捕らえてやるからな。」
「はいはい、そんなことよりも、竹市君には宮内家本家の場所を教えて欲しいんだけど、できれば連れて行ってほしい。」
「誰が教えるか! 宮内家に直接手を加える気が!」
今、そう叫んでいる人物、竹市 新之助は現在、かおるを発見した路地裏で黒炎によって、逆さ吊りにされている。
かおるは、宮内家も本家の場所を、直接、関係者に聞くことにした。
「違うって、竹市君、俺は宮内さんを助けたいんだよ。今、宮内家には脅威が迫っているんだ。それを俺はどうにかしたいわけ。」
「そんな言葉、信じられるか!」
まあ、それはそうか。今、竹市はかおるのことを、賊としか思っていないわけだ。
(果たしてどうしたものか・・・。)
「じゃあ、どうすれば、俺の言葉を信じてくれる?」
「ふん、お前の言葉など、どんなことがあっても信じられるか!」
「仕方ないか・・・。」
かおるは、右腕に炎を宿す。
「竹市君が何も教えてくれないなら、俺は君を消さないとな。」
黒炎が竹市に迫る。それが、鼻先にまで及んだとき竹市が叫んだ。
「わかった!!。教える。教えるから!」
かおるは、炎を止めて、消した。
こいつ、最初追ってきたときは大物感があったのに、もうここまできたら小物臭がすごいなと、かおるは思った。まあ、相手が漆黒の力を使う人間であるのが運が悪い。おそらく、本当なら、こいつもかなりの使い手なんだろうな。
「それはよかった。ちなみに、変なことは考えないでよ。怠惰は面倒が嫌いなんだ。うそなんか付かれたり、通信なんかして、仲間を呼ばれたら大変だからね。そうなったら、俺の中にいる。悪魔が暴れだすかもしれない。」
かおるの背後に大きな黒炎がせり上がる。
「わ・・・わかった。だが、ひとつだけ条件がある。」
「何?」
「俺も連れていけ、お前が本当に宮内家のことを考えているというなら、それをこの目で確かめたい。」
「わかった。それじゃ案内頼む。念のため、手錠はさせてもらう。」
かおるは、逆さ吊りの新之助をおろし、手に黒炎で手錠をした。これは、もし、相手が敵対行動に出たときに、手を切り落とせるようにしてあるもので、かおるが認識しないと発動はしない。
(上手く言ったなベルゴ)
《ああ》
後半のかおるの行動は、ベルゴの指示に従うものだ。漆黒の力は、本能的に人間の恐怖を掻き立てる効果があるので、それを利用した形になる。
ー - - - - - - - - - - - - -
「着いたぞ。」
「ここか。」
そこには、古い大きな木造のお屋敷があった。玄関近くからでは敷地の全体を把握することはできない。
「それにしても、ここまでの道のりわけがわからなかったよ。」
「宮内家は、大きな湖の近くがにあるが、湖の存在は普通の人間は知らない。」
かおるも正子から話を聞くまで、この土地に湖があることを知らなかった。
「それは、湖がいろいろな力によって、囲まれているからだ。それのせいで普通の道のりではここにくることができないし、上空からも霧がかかって認知することができない。だから、決まった順序でこの周りを進むことでしかここにはたどりつけないんだ。」
「へえ。その湖が見えないけど?」
「湖は、この本家の向こう側だ。」
かおるは全身にビリビリと刺激をこのとき受けていた。これが、同じ漆黒の力を持つ者同士が触れ合うことによるものなのかはわからないが、特別棟でぶつかったときにもないもので、今までにはないものだった。
《なんだ? 緊張しているのか?》
(ああ、命がかかってるわけだからな。バリバリ緊張してるぜ。で、作戦はあるんだろう?)
かおるは笑顔を見せる。それを見て、いきなり笑うとは変なやつだと新太郎は首をかしげた。
《おいおい、全部、俺任せなのか?》
(俺は初心者だからな。今回は頼む。)
《まあ、考えならある。今回だけだからな。》
その後、ベルゴから説明がかおるの対してあった。
(ふーん。そうなんだな。悪魔といろいろとあるのか・・・。)
「おい! ぼけっとするな。入るぞ。宮内家には様々なトラップがあるからな。俺の側から離れるなよ。」
「オッケー。」
新太郎が玄関のインターホンを押す。
「!?」
その瞬間、あきらかに漆黒の力による圧を、かおるは感じる。
かおるは新太郎を見るが、彼は感じていないみたいであった。
(おい! これって・・・。)
《急いだほうがいいぞ。あいつの場所なら、俺が感知できる。》
「悪い、竹市君、急がないといけなくなった。俺はもう行くわ。」
「は!?」
次の瞬間、かおるが、玄関を黒炎で破壊する。様々なトラップが同時に発動しようとしたが、見事にすべてかき消されてしまった。
かおるは、見通しのよくなった玄関を、奥へと走っていく。
新太郎はその姿にあっけにとられ、数秒固まっていたが、かおるの後をすぐに追った。
「おい! 待て!!」
《そこをまっすぐ行けば。やつがいるはずだ。》
かおるは、ある庭園に出る。そこには池があったり、盆栽があったり、家の中には不釣合いな大きな木があったりするところであった。
そこには、建物側にある大きな窓から光が差している。
かおるは中を覗き込む。
(おいあれって!)
そこには、正子の側に女が立ち、今にも何かをしようとしているところだった。
(あれってやばくないか?)
《あれは、体を乗っ取ろうとしているんだ。その女が悪魔だな。》
(とめられるか?)
《今、あいつは警戒を怠っているから、大丈夫だ。いける。少し、気の流れを変えれば、簡単だな。》
その瞬間、正子と女を包んでいた雷が音をたててはじかれる。
「じゃあ、行きますか。」
かおるは、大きな窓の前に立ち、そのまま入っていく。
窓が、かおるのまとっている黒炎の影響で、バリバリと割れていく。
「大活躍だね。竹市君!」
良太郎が言う。
「いや、これ大活躍なんですかね?」
竹市が言う。
「大活躍ですよ」
作者が言う。




