笑みは大事な件について(仮)
3人の人間に追われている。
かなりの使い手である。
しかも、特殊な能力の持ち主だ。
裏切り者を捕らえるための部隊。
流石の自分でも、見たことのない人間だ。
本当の有事のときにしか動かない部隊か。
直属の自分にも知らない部隊があったとは、少し驚きだ。
相手は自分の能力をすべて把握している。
もちろんアドバンテージポテンシャルについても。
俺が持っているアドバンテージポテンシャルは審美眼に分類されるもので、相手の考えていることがどういうことなのかを、大まかに知ることができるというものだ。これを駆使すれば、力の弱い俺でも、ある程度攻撃を避けることができる。
しかし、それが今は効かない。
まずいな。
どうする。
もう逃げ切れない。
彼女は回復できただろうか?
どうして、あの方はこんなことを?
いや、理由ならわかっている。しかし・・・
あんなにかわいがっていたのに・・・。
「捕らえました。今から本家に連行します。」
黒ずくめの男が3人のうち、最も背の低い人間に捕らえられる。
他の2人の人間が、その2人の周りに結界を張る。
そこまでしなくても、もう逃げるすべはないんだけどね。と良太郎は思った。
「痛いことはしないでね。痛いの嫌いだからさ。」
良太郎は軽口を叩くが、その言葉に誰も返答どころか反応をしなかった。
流石、徹底している。呪術による言術にひっかからないように会話はしないわけだ。
結界が、良太郎の拘束されている腕に嵌っていく。腕に完璧に嵌ると、良太郎を拘束していた人間が彼かな離れる。そして、拘束具から出たチェーンを持って乱暴に良太郎を立たせた。
「いたたた。だから痛くしないでって、頼むよ。」
また、3人の反応はない。
良太郎は彼らに引っ張られて、連れられていく。
おそらく、場所は宮内家本家である。
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<宮内家本家>
「もうすぐかしら?」
宮内家の中でもここは、一段と大きな部屋である。
ここは、宮内家当主が、ビップなお客様をおもてなしするときに使用する豪華な部屋である。
そこには今、現宮内家当主宮内 清が、部屋の中心にある大きなソファーにどっしりと座っており、その横にその息子である努が秘書として直立に立っていた。
「母上、もうすぐ、あの情報屋が連行されてくると思われます。」
「そう。それなら、ここまで連れてきてちょうだいね。」
「承知いたしました。」
努が一礼をし、その場を後にする。
「まさか、ここまでてこずらせるなんて・・・、あの子も伊達に私に付き従ってきたわけではないわね。でも、残念だけど、無駄な努力になるけどね。」
清は淫靡な微笑みを浮かべる。
その数分後
「母上! 連れてまいりました!」
威勢のいい声で努が入ってくる。
その、後ろに四人の人物が控えていた。
努の指示の下、四人の男が入室する。
といっても、その待遇には差がある。四人の男の中に一人だけ、拘束をされて入ってきたものがいる。彼は、清の前まで連れられる。
「跪け。」
清の前にその男がひざを着く。
「久しぶりね。小僧。」
「お久しぶりですね。清様、作戦開始のとき以来ですから、一週間と少しですか。」
「そうね。で、その作戦の経過を聞こうかしら? なぜ、特別棟に私の知らない人間がいて、正子がいなかったのかしら?」
「そのほうがいいと思いましてね。」
「ほう? その意見を聞かせてもらおうかしら?」
2人はともに笑みを浮かべている。
一方は淫靡に
もう一方はイタズラに
「まだ、彼女は清様のご期待には沿うことができないと思い。勝手ながら、作戦を変更させていただきました。」
「貴様! 勝手に正子の訓練を変更するとは、何事か!」
努が怒鳴る。
「将来、この家の時期当主であるあの子のために、家に混乱をもたらして、体も精神も鍛えることを目的とした。壮大なこの計画を、お前の一存で変更するとは、恥を知れ!」
良太郎はまだ笑みを絶やさない。その態度に努はより怒りに震え上がる。
「ふーん。」
そのとき、清が良太郎を観察するようにそういった。その一言で、努は追撃をやめる。
「どうして、私の期待にあの子が答えることができないと思ったのかしら?」
「残念ながら、お嬢様はまだ、覇竜にさへ認められていません。無理をして手に入れた力でさへ、上野を倒すことができなかった。あれでは、到底計画の先に行くことはできないと思い。代わりのものを用意しました。」
「なぜ代わりを用意したの? それなら、直接中止にすればよかった話しでしょう?」
「それでは、清様もつまらないでしょう? 何か面白いことをと思いまして。」
「へー、だから、上野の力も持ってきたのね。私を驚かすために。」
2人は笑みを絶やさず会話をする。
「あったかくなってきたと思ったら、寒くなってきたね。」
「そうだな。本当いやになるな。」
「みなさん、体調には気をつけてくださいね。」




