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いきなり漆黒の力手に入れちゃった件について(仮)  作者: 漆黒の鎧
第一部 ハードボイルドがわからない件について(仮)
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怠惰ではない件について(仮)


 (まんまと罠にはめられたってわけか・・・。)


 かおるは、一度大きなため息をつく。


 良太郎が向こう側であるなら、これまでの指示により、かおるをパニックにさせるために、彼を陥れる罠にはめることができる。


 (思っているよりも、敵の数は多いのかもしれないな。)


 といっても、良太郎が敵であるかどうかは、まだ決まったわけではない。こう考えることも相手の思い通りで、かおる達の仲間割れを狙っている可能性だってある。


 (だめだな。何を考えても、全部向こうの思い通りなのかもっていう疑心暗鬼にかかってしまう。)


 かおるは、顔を手で覆う。


 そして、中の悪魔に話しかけた。


 (ベルゴ、どう思う?)


 《・・・・・・・。》


 (おい! ベルゴ!)


 《ベルゴっていうのは、俺のことか? なんだ、その変な呼び名は。》


 ベルフェゴールのあきれた声がする。


 (いや、なんか、悪魔だとか、ベルフェゴールって言うのも何か他人行儀でいやだろ? だから、ベルフェゴールを短くしてベルゴだ。なんだ・・・、いやなのか?)


 《・・・・、別に好きに呼べばいいさ。》


 少しの沈黙の後、ベルゴがそういう。


 《お前、意外に冷静だな。今までの流れだと、もうだめな流れだと思っていたが。》


 (別にこれで、すべてが終わったわけじゃないからな。多少の動揺はまだあるけど、それは仕方ないからな。で、どうなんだ? 何かわかるか?)


 《まったく、俺に意見を求めてくるとは、俺は面倒なのはいやだといっているだろう。》


 (そこを頼むよ。もう、俺じゃこれ以上考えてもいい考えが出てこないと思うからさ。)


 《・・・・はあ、仕方ない。多少の知恵は与えてやる。おそらくだが、この要塞の目的は、別に相手の侵入を防ぐものじゃなくて、お前がかかりそうになった精神攻撃が目的だってことだな。お前は雰囲気で飲まれてしまっているから、わからないかもしれないが、この建物には別に特別な防御機能を持っていない。お前の今使っている力で十分に燃やし尽くすことが可能だ。》


 (え? マジで? でも、俺には対魔法、魔術、異能力を感じるんだけど・・・。)


 《これは、建物の中の気圧を下げて、体が何かそういうものがあるように感じさせているだけだ。それと、雰囲気作りでな。》


 かおるは、ためしに壁に炎を飛ばす。それは本当に軽いものであった。


 その炎が壁に当たる。すると、その炎があたった部分が見事に貫通された。


 (あ、本当だ。)


 《そして、ここがものすごい要塞であると、最初の雰囲気作りの一環としてお前に入れ知恵したのが・・・、》


 (良太郎か・・・。)


 《そうだ。この土地の本来の管理者である。あの少女の祖母の専属といわれているものが、この建物の本来の使い方を知らないはずはないからな。これで、お前の悩みの一つは解消されただろう。俺がするのはここまでだ。後は自分で頑張るんだな。もし、死にそうになったら、俺の力を使えるようにはしてやる。》


 (おい! まだもうちょっとなんかくれよ!)


 もう、かおるの中でベルゴの声はしなくなってしまった。かおるは、くそっ! と思うながらも、良太郎の件については感謝しなければならないと思い。心で謝辞を述べた。


 しかし、もしこの要塞がベルゴに言ったとおりであるとすると、その使いかたを知っている人物が、黒幕ということになる。玄関に出てきていた人間は、おそらくこの要塞の本来の使い方を知らない立場の人間だ。そうでなければ、あれほどの人間を配置する必要がない。あれでは、侵入されるのを目的としている要塞に侵入できなくなる可能性があるからだ。それでは本末転倒だ。


 (ということは・・・。)


 かおるが、最終的な相手方の目的に気が付いたとき、廊下から、足音が聞こえてきた。


 コツ、コツ、コツ


 おそらくヒールらしきものの音である。


 かおるは息を呑む。


 とうとう来た。ここまでの道のりの罠により、パニックに陥っているであろうかおるを仕留めに来る人間が、


 かおるは、自身に張っているバリアをさらに強固なものとする。


 そして、右腕に今までの中で一番多きな黒炎の塊を纏う。


 それをいつでも放つことができる構えで、相手が来るのを待つ。もしも、話し合いになるなら、かおるはそのほうがよかったが、そうはいかないであろう。


 相手の足音が、ドアの前で止まる。


 かおるの位置は、ドアから一番離れた場所で、部屋の隅である。


 ガチャ・・・。


 ドアが開く。


 「あら? まさこじゃないじゃない。どういうことかしらね。これは?」


 かおるは、明かりがないので、自らの腕に纏っている黒炎の明かりを頼りに相手を見る。といっても、普通の炎でない黒炎なので、その明かりは小さい。


 声からして、女性であり。しかも、その声の高さから歳はそこまでいっていないように思える。そして、何よりも、かおるが気になっていたのは、


 (まさこっていうのは、宮内さんのことだよな? ってことは、彼女の知り合い、しかも下の名前で呼ぶってことは、近しい人物?)


 かおるは自身がたどりついた答えが、ほぼ正しいことを理解した。


 (黒幕は、宮内家そのもの・・・。)


 そのとき、かおるは、自分のバリアがなくなっているのに気が付く。


 「?」


 「まさこじゃないのなら、消えなさい。」


 その言葉はとても冷たく、かおるが今までで聞いたことがあるもので、一番生気のないものであった。



「わけがわからんな。」


かおるが言う。


「俺はいろいろと知っているけどね。」


「教えろよ!」


「それはできなんだよねえ。」


「これからもよろしくお願いします。」

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