初めてをこんなところで見る件について(仮)
『やったのかい?』
電源を入れて通信を再開したイアホンから、良太郎の声がしてくる。それにかおるは少しほっとした。やっと、現実に戻ってきたような。今まで夢でも見ていたような気がしていた。
「ああ、今終わった。3体ともな。多分誰もどこからもきていないから、問題もないと思うよ。」
『流石、漆黒の力を持っている人間は違うね。たった、2、3分で、キメラを3体もやってしまうなんて、普通なら、キメラいったいにつき、上級能力者が一人はいる計算なんだよ。』
「はは、お褒め頂き光栄だよ。」
2、3分か・・・。かおるには先ほどの攻防が、少なくとも数十分には感じられていた。これから、もしもっとすごいものと戦闘になったとしたら、どれほどの疲労がくるんだろうか。かおるは内心心配になった。しかし、ここで今は立ち止まっている場合ではない。
「このさきにある梯子を上って、地上に出れば、病院なのか?」
『うん。そうだね。上に上がると、一般病棟の中にある中庭のマンホールに出ることになっているよ。そこから、病院の建物の中に侵入して、特別棟を目指す。』
「了解。」
かおるは、梯子までいき。マンホールにむかって上り始める。そのとき、良太郎が申し訳なさそうに言ってくる。
『もし、俺の思い過ごしじゃなければ、向こうには、こっちの考えが読まれている可能性が高いんだ。』
「マジか。」
かおるは驚いたように言うものの。うすうすそんな気はしれいないこともなかった。わざわざ、来るかどうかもわからいところにキメラなんてものを配置するとは、考えにくい。では、こっちの考えをある程度把握して配置していたと考えたほうが無難だ。
『うん。だからもしかしたら、地上にあがると、敵がわんさかいるかもしれない。』
「え?」
それは予想していなかった。かおるは、梯子を上るの途中で止まる。
『冗談だよ。』
良太郎の笑い声が耳から聞こえてくる。
「勘弁してくれよ。」
『ごめんごめん。でも、それぐらい、これからは危険になるってことを伝えたくてさ。』
「そうかい。」
かおるは、あきれた声をして言う。彼は梯子を上るのを再開した。
「ようしょ。」
マンホールに手をあてて、それを上にゆっくりと挙げる。できるだけ慎重に、そこで先ほどの良太郎の脅しが効いているのか、慎重になりすぎて、なかなかあがらなかった。
少し全体的にあがったマンホールを横にできるだけ音がならないようにずらす。
かおるは、顔を少し上げて周りを見渡す。
「お?」
かおるの目に映りこんできたのは、ものすごく広い庭で、かおるが顔を出しているところは、よくわからない岩とか、ある一定の長さで整えられてよくわからない草で覆われていて、周りからは見えずらい位置にある。
「出たよ。どうすればいい?」
『その近くに壁が見えるよね? そこにドアがあると思うから、それで出れるよ。鍵は内にあるやつだから、庭側から空けれると思う。多分特に人はいないと思うけど、なるべく音は立てないようにね。』
良太郎の言うとおり、壁にはドアがあった。
「オッケー。」
かおるはゆっくりと全身を穴から出し、マンホールを元に戻す。それから、良太郎が行ったとおりにドアの鍵をゆっくりあけて、一般病棟の中に入った。
「ふー、進入成功。」
あたりは薄暗く、軽く非常階段の明かりなどで照らされているだけである。
これからが本番だ。まさかのキメラの出現によって、ここまで来るのに少し労力を使ってしまったが、もっと気を引き締めないといけない。
通信を変換する。
(ここから、特別棟に行くために、どうすればいいんだっけ?)
『まずは、手術室にだね。第二手術室。四階にあるよ。』
(わかった。)
かおるは、非常階段に向かう。そこから駆け足で階段を駆け上がった。
四階にかおるが到達することには、彼の息が限界に達していた。
「やべ、気分悪い。」
『大丈夫かい? もしかして、さっきのキメラとの戦闘で何か怪我でもした?』
「いや・・・。」
ただの運動不足と、睡眠不足で、少しの運動でも息がすぐあがってしまうだけです。とはいえない。ここまで結構かっこよくきているんだ。最後までのこの調子で行きたい。
「心配しないでくれ。大丈夫だよ。」
かおるは、息をなんとか整えて、四階に足を踏み入れた。そこで、また目を疑うものを捕らえる。
「あの? 良太郎さん? 少しいいかな?」
『なんだい?』
「確実に俺たちの行動は読まれているみたいだ。」
かおるの目の前には、2人、いや、2体の甲冑が聳え立っていた。片方は日本の甲冑で、もう一方は西洋風の甲冑だ。おそらく、中に人は入っていない。
「甲冑って、初めてみたよ。」
「あと、もう少しでテストも終わりだから、やっと、本格的に書くことができるね。」
良太郎が言う。
「いや、そうですけど・・・。基本的には変わらないかと、期待はあまりしないでくださいね。」
「そこは大きくでるくらいしないと、だめだろう人として」
かおるの辛らつな言葉が胸にささる。




