何が大事なのかという件について(仮)
(お前ら悪魔が、宿主を支配するなんてことはないのかよ?)
《それは無理だな。俺たちは漆黒の力の器でしかない。もし俺たちが宿主を支配しようとしたら、それは漆黒の力が宿主を覆うことになる。そうすると、宿主は死んでしまう。》
(そうか。)
かおるは大きく深呼吸をする。
(俺は、後どれくらいなら力を使うことができる?)
《なんだ? さっきも言ったが使わないほうがいいぞ?》
(ああ、それは理解した。とりあえず。後どれくらいなら使えるんだ? それと、俺はこの力をどの程度扱うことができる?)
かおるの言葉から彼の真剣な思いが伝わったのか、ベルフェゴールはまじめに答える。
《そうだな。まず、お前が扱える力は本来の力の三分の一ってとこだな。最大でだが。そして、上限としては、一時間が限度だな。それ以上使うと命が持たない。》
(三分の一でどれくらいなんだ?)
《この街を一瞬で消し去るくらいだ。》
(へっ! 充分だな。)
《でも、さっきも言ったが、最大でだ。普通の人間であるお前がいきなりそれほどの力を使うことはできないぞ? 今急に使えるのはそうだな。この公園を吹き飛ばすくらいか。》
(それくらいできれば、まあ、手助けくらいはできるだろう?)
《あの娘のか? 娘が対峙する敵は随分強いらしいがな。》
(別に俺が勝つ必要はないんだよ。少しでも手助けさへできればいい。)
《死ぬことになってもか?》
「ふっ、」
かおるが声を出す。
(まだ、死ぬわけにはいかない。だから、限界を聞いたんだ。もし、限界が来たら、そのときは頼むぜ。)
《俺は怠惰だぞ。》
(俺が、死んだらお前は、また面倒なことになるんだろう? なんとなく察しはついたさ。)
《ふん。いいだろう。妙なところで頭の回転が早いやつだ。》
(俺もびっくりだよ。じゃあ、いくかな。)
かおるは、ベンチから立ち上がった。手始めに自分の腕に炎が出る想像をしてみた。
「おお! マジででる。」
右腕には黒炎が出ていた。それを、消して、かおるは公園を出る。戦い方はわからないが、まあなんとかなるだろう。今からその辺をどうにかしようとしても意味はない。
時刻は午後11時、時間まで後一時間だ。かおるがいる公園からは学校まで、十五分ほどだ。
「あれ? かおるか?」
かおるはその声がした方向を振り向く。
「江良さん?」
「おお! そうじゃ!」
そこには、手になぜかぼろぼろの人間の襟を持って、引きずっている江良さんがいた。
「お前、こんな時間にどうしたんじゃ?」
江良さんは手に持っているそれを適当にほうり捨てた。
かおるはそれを横目で見て答える。
「ちょっと、野暮用がありまして、江良さんは何を?」
何をしていたのかは聞きたくなかったが、かおるは聞く。詮索されるのを防ぐには相手に話を向たほうがいい。
「ああ? 俺か? 俺はなあ・・・。散歩や!」
絶対に違う。いや、もしかしたら散歩先で絡まれたのかもしれないが、少しの間が違うことを証明していた。
「それよりもお前はどうしたんや? なんか、偉い気合入った顔しとーな!」
「いや、そんなことないですよ。本当にただの野暮用です。」
「ええからええから、いってみろって、なんかあるなら助けたる!」
もしかしたら、江良さんなら、この状況を打破してくれるんじゃないかと、かおるは一瞬思ったが、流石にないなと思った。いくら喧嘩が強いからといっても、それが能力者と対等に渡り合えるとは思えない。しかも相手はその中でも随一の強さだ。
「いや・・、本当に何もないですよ。」
「なんや。信用ないなあ。」
江良さんはそういうと、少しいじけた表情を見せる。かおるは、これ以上長引くのも嫌だったので、ぼかして話すことにする。
「わかりました。話します。実は俺の友人が変なやつに絡まれてしまって、俺はこれからそれを助けにいく途中です。」
「なんやねん! それやったら、俺もいったるやんけ!」
「いえ! これは俺の勝手な話なんですが、これは男として、俺がやる必要があると思っています。その友人が絡まれた原因に俺も少し噛んでいるもんで・・・、だから、俺一人で行かしてください!」
何か、変な理屈かもしれないが、かおるは勢いで言った。
「そいか。お前もなかなか、根性あるやんけ。それなら俺は手をださんでおこう。でもな、もしお前に何かあれば、俺が行くからな。これは、もう俺たちもダチや。やから、俺もお前の理屈でいかしてもらうで。」
「はい。ありがとうございます!」
何に対しての感謝かはわからなかったが、かおるの口から自然と出た。
「じゃあまあ、頑張れよ。」
江良さんはそういうと、かおるの横を通って、歩いていった。途中で振り返る。
「喧嘩で大事なんはな。相手に自分よりも強いって常に見せることや。それが大事や、ハートで負けたら、勝てるもんもかたれへん。やから、常に相手を前にしては大きくおれ。それが今お前に伝えれえる言葉や。」
「はい!」
江良さんはその場から去っていった。そのときの後ろ姿がなぜかかっこよくて、かおるはその後ろ姿が見えなくなるまで、頭を下げていた。
「江良さんは唐突に現れるキャラクターですね。」
良太郎が作者に言い放つ。
「そうですね。彼には重要な位置を占めて欲しいですね。主人公よりも」
「おい!」
かおるが突っ込む




