電波系魔法が多い件について(仮)
「そっか。それで見事にその作戦は成功したよね? 俺が入るときに二人の人間が出て行くのが見えたよ。」
かおるは宮内の目を見て聞く。
「そうでしたか。はい。まあ、単純なものなんですけど、あの結界は常に上野の監視下にありました。なので、まず。幻術系の魔法で、わたしが一人でいるように見せます。これは高等なものでなくても大丈夫です。監視下にあるといっても、見えているわけではないので、存在さへ惑わせばどうということはありません。上野がそっち方面の、感知能力を持っていないのはわかっていましたから。」
「それも良太郎が?」
「まあ、そうだね。仕事柄どんな能力を持っているのかは大抵検討が付くからね。校門の見張りを俺にやらせた時点で決定だったね。」
「それで、彼がまずわたしに許可を出します。そしてわたしが入る。彼は、一人しか許可を出せないようにされていましたから、それ以上は許可ができません。」
「それだと後の二人は入れないよね?」
かおるは、首をかしげる。
「はい、そこで、彼がわたしに、その結界に入ったわたしの固有魔法電波を教えてくれます。固有魔法電波とは、結界などに入る際、勝手にその人物に当てはめられる番号のようなものです。それによって、結界を作った人間がは、感知能力がない場合に、誰が今結界に存在をしているのはを知ることができます。」
おっと、また複雑な話になってきた。かおるは、思考をフル回転させる。たとえそれが無駄な行為だとしても。
「この固有魔法電波は、通常見ることはできないのですが、目に魔力を集中させる鍛錬をすれば知ることができます。かといってもそう簡単に分かるものではないのですが、それを彼にはやってもらいました。これは、さきほどのアドバンテージポテンシャルの関係で彼にはわかるのです。」
「それを、俺が彼女に教えて、その固有魔法電波に偽装した。人間が中に入る。正直賭けに近いものだったけど、まんまと上野はだまされたみたいだったね。」
「ええ、それで、すぐに彼はその場から逃げるはずだったんです。もし、ミスをしてしまったりしてばれたりでもすれば、一番は彼の命が危ないですから。」
ああ。だから、さっき良太郎を見たときに驚いていたのか。かおるは、彼が良太郎と初対面のときの宮内の反応に納得した。
「あのときは、俺も自分の命が大事だと思ってね。すぐにでも逃げようと思ったんだけど、かなり大きな音がしていたから、激しい戦いになっているんだと思ったら、もしかしたら少しでも協力できることがあるかもしれないと思って、上野の仲間が来る可能性もあったからさ。」
「それが結果的にいい方向に進むことになったんだから、よかったってことか。」
かおるは、そういうと、コーラを一口飲んだ。それにつられて二人もコーラとカルピスをそれぞれ飲む。
「それにしても、これからどうするんだ? もしも宮内さんの家の人間が上野の仲間だったとしたら、家に帰ることもできないじゃん。」
かおるは、頭に両手を当てて、ソファーに深くもたれる。
「まあ、幸い。明日からは土曜日と日曜日だからね。最悪ここにいてもいい話になる。負傷でもしているから、近くで療養しているってことにしたらいいんだよ。俺のつてを頼っていい医者に見てもらっていることにしたらいい。まあ、本当に医者には見てもらってほうがいいけどね。」
宮内はさきほどの戦いで体をかなり酷使をしているので、確かに医者には見てもらわないといけない。
かおるは、そこであることに気がつく。
「宮内さんの家が危ないなら、助けだされた二人も今危ないんじゃないの?」
「それなら、多分大丈夫だよ。多分、その黒幕の人間は自分で直接手を下したい人間ではないんだろうから、まるで、宮内家が危ないなんてことがわかるような行動はしないと思う。」
確かにそうだな。上野を使ってことを運んだのも、自分が表に出たくないからだと考えると、合点がいくというものだ。
かおるは一人自分の中でうなづいた。
「でも、一応二人も、こちらに運んだほうがいいかもしれませんね。何があるかはわかりませんから、それに幸い、二人とも重症は負っていなく、軽症みたいなので。」
「今はどこにいるの?」
かおるが聞く。
「宮内家管轄の病院です。あとでわたしが迎えに行こうと思います。」
「それなら、俺がいくよ。宮内さんは体を休めないといけないしね。もし上野みたいな能力者がきたら、俺の能力は有効だからね。」
「すみません。ありがとうございます。」
「じゃあ、俺はここで情報収集をしようかな。」
良太郎は三人がいたソファーから、少し離れた位置においてあるノートパソコンを取りにいった。そして戻ってくるなりかおるに聞く。
「それじゃあさ。戻ってきたら君がその力を制御できるようになった理由を教えてよ。ちょっと、うわさの漆黒の力とやらが、どんなものなのか情報収集しないとね。」
まさか、自分の能力が漆黒の力であることが、この人物にばれていることにかおるは少し驚いた。しかし、よくよく考えれば通信を宮内としていたのだから、まあ、知っていても当たり前なのかもしれない。
かおるは、それに笑顔で答えた。




