策略とは上手くはいかない件について(仮)
「呼び方は良太郎でいいよ。」
情報屋はそういうと、かおると宮内のコップにコーラをまた注いで、自分のところにはカルピスを注いだ。
「じゃあ、俺もかおるでいいよ。」
「オッケーかおる。早速なんだけど、かおるはなんであそこにいたんだ? 正直、俺はかおるのことは知っているけど、君がその能力を持っているなんてころは知らなかった。」
「かおるさんには、わたしが協力をお願いしました。でも、かおるさんにも事情があって・・・。」
「俺は一度断ったんだ。」
かおるはコーラを一口飲む。宮内が申し訳なさそうな顔をしていたので、割って入る。別に彼女が悪いわけではない。
「そのときはまだ、この力をコントロールできてなかったからな。というか、そもそも、本当にこんな力を持ってるなんて思ってもみなかった。」
「ふーん。そうなんだ。まあ、その話は後々、機会があれば聞くことにして、今はこれからどうするかだね。」
「わたしはしばらくここにいたいと思います。良太郎さんがよかったらですが・・・。」
宮内は伏し目がちにして言う。
「俺は別にかまわないけどさ。でも、家には一報いれていたほうがいいんじゃない? 流石に、状況が状況だからね。誰に言うかは問題だけど。」
「ちょっと、待ってくれ。なんで、宮内さんは家に帰れないんだ?」
かおるは、さっきの会話を理解できていなかった。
「ああ、そうでしたね。かおるさんは、上野とわたしの戦いをすべて見ていたわけではなかったんでしたね。」
宮内が微笑む。
「あのとき、上野は自分をこの街に招きいれたのは、宮内家の人間であるかのような発言をしました。それは彼がわたしを動揺させるために言った言葉の可能性がありますが。あの状況で、彼自身が自分の勝利に確信を持っていた状況で、そんなことをする必要性は彼にはありません。なので、信憑性は高いと判断します。」
「それなら、俺にも心当たりがあるよ。」
良太郎がソファーにゆったりと座り言う。
「確か、俺が捕まってすぐだったと思う。上野は、すぐに誰かに電話をしていたよ。そのとき、聞いた言葉が、『お前の情報どおりだ。こいつからいろいろと話しを聞かせてもらう』って言っていた。」
その言葉に、かおるが疑問を投げかける。
「そんな捕まっているときに、聞ける状況だったのか?」
「それは俺のアドバンテージポテンシャルのおかげだな。」
「アドバンテージポテンシャル?」
かおるは首をかしげる。なんだ? アドバンテージポテンシャルって? これも、あって当然の知識なのだろうか。
かおるの表情を見て、良太郎も不思議そうな顔をする。
「かおるさんは、こちらの知識のことはあまり知らないんです。」
「ああ! そうなんだね。ごめん。つい、知っていることを前提に話しをしてしまう癖があって、アドバンテージポテンシャルって言うもは、先天性の特殊能力みたいなものだよ。他の誰も持っていなくて、鍛錬しても手に入らないもの。優位的な才能ってこと、それを俺は持っているんだ。それは秘匿事項だから、詳細にはいえないけどね。まあ、耳がいいって感じだと思っておいてよ。」
かおるは、それを聞いてますます異能力者の世界に来たことを実感した。今まではなんとなく流れに身を任せていたので、自分が自分でないような感覚でその場になじんではいたが、ようやく今彼は、平静を取りもどいていた。
先ほどの戦いではなぜか、冷静で勇敢な人間になっていたのが自分でもわかる。もしかしたら、これは能力のせいなのかもしれない。
「結構能力にも種類があって、それが統一されてるんだな。」
「そうだね。君の持っているものなんかは、その中でも超一級の珍しいものだよ。分類で言うとアンシーンアビリティ、まだ見たことのない能力に分類されるね。」
「そうなんだな。ごめん、話しがそれちゃったな。」
かおるが片手で謝る。
「まあ、それで上野には仲間がいることは分かったよ。あいつが危険なのはなんとなくわかったから、すぐに情報は出した。宮内家にね。上野にはなるべき上級能力者の人間とあたるようにして、あいつの力を削るようにしたんだけど、幾分あいつ思ったより強すぎたからね。死者こそでなかったけど、負傷者をたくさん出すことになってしまって、本当に申し訳ない。」
良太郎は宮内に頭を下げる。それを見て宮内があわてて、手を振り否定する。
「いえ、あなたの迅速な判断があったからこそ、近衛部隊を動かすことができましたし、今日だってあなたからの協力があったので、捉われた二人を助けることができました。」
またかおるは二人の会話の半分を理解できていなかった。この場で割って入るのもどうかと思い、黙っているかおるのことを、良太郎が察して説明をしてくれる。
「通信ってやつ知ってる?」




