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無限問題  作者: 城宮 美玲
恋心編
32/88

第二十八話 風邪引き①

昨日は結局、最後まで冬音は起きなかった。桜が帰り際「冬音ちゃんの弱みを握れると思ったのに…」と呟いたのが聞こえた。良かったね、冬音起きなくて…と心の中でそっと言った。


そして朝になり、なんだか体がだるい気がする。ただの気のせいだろうと思い、リビングに向かうと母の履いているスリッパの音がパタパタと聞こえた。


あたしの額に手をやり、熱を測りだす。どうしたのかと首を傾げると今度は体温計を取り出してきた。それを受け取り熱を測ってみると…38.1…風邪?


仕方が無いので今日は学校を休む事にした。病院にも行って薬を飲んでベッドに横になると自然と眠気が襲ってきた。それからどれくらい経ったのかな?


冬音達はまだ学校かな?そう考えながら薄く目を開けてみると…目の前には夏騎?それに冬音や秋もいる。でもまだ学校だと思うし、じゃあこれは夢?それにしてもリアルな夢だなー。


本当に来てたら恥ずかしくて穴があったら入りたいと思っちゃうよ。だって冬音だけじゃなくて秋や夏騎までいるんだから…さすがにパジャマ姿は恥ずかしいよ。


「これ、起きてるの?」


「起きてるんじゃないか?薄く目、開けてるし…」


「おーい春香、これ夢じゃないよ?私達、もう学校終わったからお見舞いに来たんだよー」


ハハハ、冬音達がお見舞いに来たのか。そしてこれは夢じゃないって……アレ?夢じゃない?あたしは目を見開き、ゆっくりと起き上がる。それから三人の顔を見回した。


「夢じゃない?」


「うん、夢じゃない。どうする?今更だけど着替える?パジャマだと恥ずかしいでしょ?夏騎君達がいるし」


「ああ、それはもちろん!夏騎達がい…え?夢じゃなくて夏騎達もいて…」


自分でも顔が赤くなっていくのが分かった。これ以上熱は上がらない方がいいんだけど、やっぱり恥ずかし過ぎる!夢だと思ってたのに!


「ほらほら、男子はさっさと出て行く!」


あたしが顔を真っ赤にして呆然としている間にも冬音は二人を部屋から追い出…出るように言ってくれた。それからあたしの方へと歩いて来る。


「着替えるの辛いだろうけど…パジャマ嫌でしょ?私が服を選んであげるから、決まるまで寝てていいよ」


いつもの冬音以上に優しいので少し戸惑ったけれど、いつもこれくらい優しい方がいいなと思った。少し経つと冬音がクローゼットから出した服を何着か取り出して来た。


「結構可愛い服たくさんあったね。春香に似合ってる服ばかりだから選ぶの大変だったよ。それで選んだのがこの四着」


薄い桃色の七分シャツに中に着るらしい白のTシャツとタンクトップが一着ずつ。よくタンクトップなんて見つけてきたなー…あたし、全然着てなかったから忘れてた。そしてピンクのフリルが付いたスカート。


着替えていると何となく視線を感じて振り返ってみると冬音がジロジロとあたしの体を見ていた。苦笑いしながらあたしは冬音に聞く。


「どうしたの?そんなにジロジロ見て」


「いや、スタイルいいなーと思って…」


「あ…ありがとう…」


後ろに視線を感じながらあたしは着替えを終えた。もしかして…冬音は着替えが終わるまでずっと見ていたんだろうか?なんだか視線ずっと感じたけど…。


「ほら、もう入って良いよ」


ドアの外にいた夏騎達が入って来る。あたしは体制が少し辛いので横になっていた。


「三人共、ありがとう」


「どういたしまして!早く良くなってね」


ああ、冬音が優しい!つくづく、いつもこのくらい優しかったらなーって思うよ。すると、冬音が鞄からノートを取り出した。


「これ、今日の授業のだよ!私しかノート渡せないんだよね、他はみんな別のクラスだし」


「そう言えば、そうだね」


あたしはノートを受け取って近くのテーブルに置いた。すると冬音が「あっ」と声を上げた。


「どうしたの?」


「ちょっと用事が…ほら!行くよ、季野君」


そう言うと冬音は強引に秋の腕を掴んで帰ってしまった。もしかして…あたしと夏騎を二人っきりにしようとしてる?もう二人っきりだけど…。


残されたあたし達は暫くドアの方を見つめていた。一方、冬音達は…?


「用事なんて無かったはずだ。それに夏騎を置いて来て…」


「気が利かないなー!春香は夏騎君が好きなんだよ?二人っきりにしてあげようじゃない」


「すぐ戻って来ると思うけどな」


秋は呆れて溜息を吐き、冬音はこのまま何処かへ行く気にならないので、二人は家の前で待っている事にしたのだった。


そして、やっと残された二人はきごちなくなりながらも少し話をする事にした。


「大丈夫?」


「あっ、今は大丈夫…疲れたから少し寝るね?」


「じゃあ僕は帰るよ」


せっかく冬音が二人きりにしてくれたのに!たぶん秋は冬音の巻き添えを食っただけ。夏騎は鞄を持って部屋を出て行こうとした…けれど何かを思い出したように戻って来た。


そして、頬にそっとキスをした。あたしはただ口を開けてポカンとしている。ハッと我に返った時には夏騎は帰ってしまっていた。


え?今のってキス…だよね?でも…なんで?あたしとしてはキスをされた理由の方が気になってしまった。もしかしたら両想いなの?そう聞きたかった。


でも…そんな事、聞ける訳がない。あたしは顔が熱くなるのを感じながら布団を頭まで被った。


全部、風邪が治ってからにしよう。そう決めてあたしは眠りに落ちた。








                              続く*

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