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白き観測者  作者: 春乃陽射
目覚めより

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5/5

小さな手



広場からは、子供たちの賑やかな声が聞こえていた。

ひとりが走り出すと、ほかの子供たちも声を上げて追いかけていく。


「あ、みんなだ!」


少女が声を上げると、子供たちのひとりがこちらを振り返った。


「あっ、白いやつだ!」


その声を聞いて、ほかの子供たちも集まってきた。


「昨日もいたよね!」

「ねえ、いっしょに遊ぼうよ!」


子供のひとりが、広場の向こうへ駆け出した。


「捕まえられるもんなら、捕まえてみて!」


それを合図に、子供たちは一斉に走り出した。


白き観測者は、彼らの動きを追うように歩きはじめた。


子供たちは何度も振り返り、手を振った。


「こっちだよ!」

「走って!はやくはやく!」


白き観測者が近づくと、子供たちは歓声を上げて逃げていった。


広場には足音と笑い声が響いていた。


ひとりが石畳を横切り、別のひとりがその後を追う。子供たちは互いに声を掛け合いながら、広場を走り回っていた。


そのとき、小さな子供が石畳につまずいた。


膝を打ち、両手を地面につく。


一瞬、広場の声が途切れた。


子供は自分の膝を見つめたあと、泣き声を上げた。


走っていた子供たちが足を止めた。


「だいじょうぶ?」


ひとりが駆け寄り、もうひとりが手を差し出した。


「立てる?」


子供は泣きながら、その手を握った。


近くにいた大人もやってきて、膝についた土を払った。傷がないか確かめ、子供の頭をそっと撫でる。


やがて、子供は立ち上がった。


涙を拭うと、そばにいた子供がその手を握った。


「いっしょに帰ろう」


ふたりはゆっくりと歩き出した。


残った子供たちは、その後ろ姿を見送っていた。


しばらくすると、広場にはまた笑い声が戻った。


白き観測者は、広場の端に立っていた。


昼の陽射しが、石畳の上に落ちていた。


午後になると、少女は籠を持って家へ帰っていった。


「また明日ね!」


庭の入口で振り返り、少女は手を振った。


白き観測者は、その姿を眺めていた。


少女は家の中へ消えていった。


村の人々も、それぞれの仕事へ戻っていった。


荷車が道を通り、井戸のそばでは水を汲む音が聞こえていた。家の前で洗濯物を干す人がいれば、畑から戻ってきた人の姿もあった。


やがて、陽が傾きはじめた。


白き観測者は、鐘楼へ向かった。


塔のそばでは、老人が木箱を片づけていた。


「おや。今日は村を歩いていらしたのですな」


老人は白き観測者に気づくと、穏やかに笑った。


「子供たちと遊んでいたのですか?」


返事はなかった。


老人は白き観測者の姿をしばらく眺め、それから鐘楼の脇にある小屋へ目を向けた。


「今夜も、あの小屋を使ってくださってかまいませんよ」


老人は木箱を持ち上げた。


「明日も鐘を鳴らします。よろしければ、また聞いていってください」


そう言って、老人は鐘楼の奥へと歩いていく。

白き観測者は、その後ろ姿を眺めていた。


やがて、村の鐘が鳴った。


夕暮れの空に音が広がり、家々の窓に灯りがともりはじめ、昼間に聞こえていた子供たちの声は、少しずつ遠ざかっていった。


白き観測者は、小屋の前に立っていた。


風が吹き、村の外れに広がる草原が揺れる。

昼間に見た青い花も、紫色の花も、夜の闇の中では色を失っていた。


それでも、花はそこに咲いていた。


村の鐘が、最後にもう一度鳴った。


その音が静かに消えていく。


白き観測者は、夜の村に立っていた。


その白い姿だけが、月明かりの中に静かに浮かんでいた。



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