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【変身ヒロイン×アイドル】煌坂★パステリズム(煌戦隊★キラリンジャー) 修行譚  作者: おおたこ
第3章

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第26話:狙われた0.1秒! 盗撮された変身と忍び寄る影!

【アバン】


「――ねえ葵、これ、冗談だよね……?」


スマホの画面を指さす私の手が、自分でも分かるくらい小さく震えていた。


事務所の控室。

エアコンの風が首筋に当たって冷たいはずなのに、背中には嫌な汗がじっとりと張り付いている。


画面で再生されているのは、Shorts動画の再生数が数百万回を超えてバズりまくっている、どこかのまとめ動画だった。

タイトルは『【閲覧注意】ヒーローの変身シーン、完全に弱点判明wwwww』。


「……冗談であってほしかったですが、現実のデータです」


葵がノートパソコンのキーボードを激しく叩きながら、苦々しい吐息を漏らした。


動画に映っているのは、昨日の戦いでの私たちの姿だった。

私が左腕のチェンジャーを前に突き出し、「新・煌変!」と叫ぶ。

光の粒子が身体を包み込み、衣装がバトルスーツへと変化していく、あのわずか一瞬。


映像が、超スロー再生に切り替わる。


コマ送りになった画面の中で、光が全身を覆うほんの瞬間に、私の胸元に真っ赤なターゲットマークがピシッと合わされた。

そして、画面の上にはデカデカと太い赤文字が表示される。


『検証:光が衣装に変わる直前の【0.1秒間】。防護フィールドは未展開。生身の無防備な胸元が完全に剥き出し。ここを撃たれれば100%変身不発&死亡確定』


「っ!?」


咲が後ろから画面を覗き込み、持っていた缶ココアをポロッと床に落とした。

ガチャンと鈍い音が響き、茶色い液体が床に広がるのも気にせず、咲は自分の頭を抱えて悲鳴を上げた。


「う……嘘でしょ〜〜〜っ!? 私たちの変身シーンの『隙』が、ネット上に拡散されてる〜〜〜っ!?」


「な、何ですかこれ……!?」桃が涙目になって私の肩にしがみついてくる。「誰がこんな……私たちの変身を盗撮して、こんな動画作ったの……!?」


「ダークレンズです」

翠が壁に背中を預けたまま、低い声で吐き捨てた。

木刀を握りしめる指関節が、白くなるほど強く力が入っている。


「あのバズーカカメラ持った不気味な野郎だ……。昨日の戦いの中で、私たちの変身の瞬間をハイスピードカメラで撮りやがったんだ」


「それだけではありません」葵が画面をさらに切り替えた。

「この動画、ただのSNSだけじゃありません。ダークWebの闇サイトや、異界の戦闘員たちの情報共有ネットワークにまで、高画質データとして拡散されています。……私たちの変身の隙は、今や全敵勢力の『公知の事実』となりました」


変身の隙。

私たちが今まで、当たり前のように、何の疑いもなく行ってきた『変身』というプロセス。

その一番無防備な0.1秒が、敵に完全に狙われている。


ゾクッと、ゾウリムシが背中を這い回るような気味の悪い寒気が全身を駆け抜けた。


---


【Aパート】


最上階のコマンドルーム。


重苦しい空気は、部屋全体を氷漬けにしたみたいに凝固していた。


メインモニターには、葵が解析した『キラリンジャー変身シークエンス解体図』が映し出されている。


「……信じられんな」


腕を組んだ火ノ宮紅葉さんが、低く唸るような声を漏らした。

隣に立つ雷咲ひかりさんも、いつもの威勢の良さは消え、苦虫を噛み潰したような顔でモニターを睨みつけている。


「チェンジャーから放たれる属性エネルギーが全身を覆い、防護スーツへと物質化するまでのラグ……1000分の1秒から0.1秒。……そこに一切の防護フィールドが存在しないだと?」


「ええ」美咲あきさんが、淡々とキーボードを叩きながら説明を続ける。

「暗黒撮影幹部・ダークレンズが使用したカメラのシャッター速度は1秒間に12万フレーム。私たちが肉眼で『一瞬』としか認識できない光の瞬間に、明確な『生の肉体の隙』が存在していたのです」


「……あき」

それまで窓の外を見つめていた月城玲奈さんが、静かに振り返った。

その銀色の瞳には、冷徹な緊張の色が宿っていた。


「その『0.1秒の隙』は……パステリズムだけのことですか?」


あきさんの手が、一瞬だけ止まった。

あきさんは眼鏡のフチを指でつまみ、重い沈黙のあと、ゆっくりと首を横に振った。


「……いいえ。魔法および属性キーを介して変身を行うすべての存在……我が『ステラセイヴァーズ』の変身プロセスにおいても、全く同じ0.1秒のラグが存在します」


「っ!?」


愛咲美玲さんが息をのんだ。天照陽菜さんも胸元で手を強く握りしめる。


ステラセイヴァーズ。

私たちがずっと目標にしてきた、あの完璧で絶対的な先輩たちすらも、例外ではない。

変身の瞬間という、ヒーローにとって最も神聖で、最も無防備な時間が、完全に敵のファインダーに収められてしまったのだ。


玲奈さんの白いパンツスーツの胸元が、わずかに上下した。

玲奈さんのようなプロ中のプロですら、この事態の異常さに戦慄を隠しきれていない。


「……敵の狙いは明確です」

玲奈さんの氷のような声が、静まり返った部屋に響く。


「彼女たちの存在を倒すことではない。変身という『ヒーローの概念そのもの』を破壊し、戦う術を奪うことです。……パステリズム、本日からの警備活動を――」


「玲奈さん!」


私が一歩、前に踏み出した。


「警備をやめろって言われても、引き下がれません! 街で動画が拡散されてるなら、今この瞬間も、敵がどこかで誰かを狙ってるかもしれないんです!」


「茜……」美玲さんが心配そうに私を見る。


「隙があるなら、埋めればいい! 0.1秒なんて、私たちがもっと早く動けば……仲間同士でカバーし合えば、どうにかできます!」


私の叫びに、咲が強く頷いた。

「そうだよ! 盗撮されたからってコソコソ隠れてたら、アイドルの名がすたるってば!」

「私……逃げたくありません」桃も涙を拭い、目を強く見開く。

「データ上の隙なら、実戦のアドリブで上書きするまでです」葵がメガネを正す。

「へっ……0.1秒だか何だか知らねぇが、狙ってくるならそのレンズごと叩き割るまでだ!」翠が木刀を握り直す。


玲奈さんは、私たち五人の顔をじっと見つめていた。

やがて、小さく、本当に小さく息を吐いた。


「……行きなさい。ですが、決して一人で変身してはなりません。……命を落としますよ」


---


【Bパート】


煌星市・ベイエリアの商業ビル街。


「キシャアァァァァッ! 撮ルゾ! 盗撮スルゾーーッ!」


甲高い不快な叫び声とともに、ビルのガラスを叩き割って現れたのは、暗黒撮影プロダクションの新たな刺客――『盗撮怪人 カメラコゾウ』!


頭部全体が巨大な望遠一眼レフカメラになっており、その両腕には三脚を模した鋭い槍が握られている。背後には、数拾体の『カメカゲノコ部隊』が、シャッター音を響かせながら蠢いていた。


「逃げろーっ!」「カメラを持ったバケモノだーっ!」


悲鳴を上げて逃げ惑う市民たち。その前に、私たちが滑り込んだ!


「そこまでよ、盗撮カメラ怪人!」


私が叫ぶと、カメラコゾウは頭部の巨大なレンズをレンズフードごとギギギ……と回転させ、赤く濁ったファインダーを私たちに向けた。


『ケケケッ! 来タナ、パステリズム! 闇サイトデ超バズリ中ノカモ共ガ!』


「誰がカモよ! 勝手に人の変身シーン撮ってネットに流すなんて、最低最悪のプライバシー侵害なんだからねーっ!」

咲が怒髪天を突く勢いで叫ぶ。


「問答無用です! 排除します!」

葵の合図とともに、五人が同時に左腕のチェンジャーを前に突き出した。


「行くよ、みんな!!」


「「「「「新・煌変(しん・こうへん)!!!」」」」」


カチリッ!


チェンジャーのキーが回転し、私たちの身体を眩い五色の光の粒子が包み込む!


いつもの変身。

いつもの、光が身体を覆い、私たちがキラリンジャーへと生まれ変わる、あの愛おしい時間。


――その、直後だった。


『甘イノダヨ! フレームアウト・シュートーーーッ!!』


カメラコゾウの頭部レンズが、目も眩むような凶悪な紫色の光を放った!


カシャァァァンッ!!


シャッター音ではない。大砲の全弾発射のような激しい衝撃音!


私たちが光に包まれた、まさにその瞬間――衣服が光の粒子に変化し、防護スーツが形成される直前の【0.1秒の隙】に向かって、目にも留まらぬ紫色の暗黒光弾が、寸分違わずピンポイントで突き刺さった!


ドガアァァァァンッ!!!!!


「「「「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!?????」」」」」


激痛。

防護フィールドが展開されていない、生身の胸元に、直接ダイナマイトを叩きつけられたような凄まじい衝撃!


変身の光が、バシバシッと嫌な音を立てて、ガラスみたいに木っ端微塵に粉砕された。


「あ……がっ……!?」


変身が不発に終わり、強制解除された私たちは、強烈な爆風で吹っ飛ばされ、コンクリートの路上へ激しく叩きつけられた。


「あ……茜……ちゃん……っ!?」


桃の悲鳴。

見ると、全員変身できていない。ジャージ姿の生身のまま、胸元から煙を上げて絶叫しながら転がっている。


私の左腕のチェンジャーが、パチパチと不吉な火花を散らし、カチリとも音を立てなくなっていた。


「う……嘘……でしょ……?」

咲が、血のついた手で自分の胸を押さえ、呼吸を乱している。

「変身が……途中で……消された……!?」


『ヒハハハハ! 見タか! データ通リダ!』

カメラコゾウが三脚の槍を掲げて狂喜乱舞する。


『変身ノ瞬間ノ0.1秒! 防護フィールドガナイ完全生身ノ胸元! ソコヲ撃テバ、変身ハ100%不発! 生身二直接ダメージヲ与エテ撃破完了ダ!』


「く……ッ……!」

翠が膝を突き、血の混ざった唾を吐き捨てて立ち上がろうとする。

「変身を邪魔されるなら……生身のまま叩き倒すまでだぁぁぁっ!」


翠が壊れた木刀を握り締め、生身のままカメラコゾウへ突っ込んだ!


---


【Cパート】


「翠、ダメだ! 一人で行くなっ!」


私が制止する声も届かない。

翠は疾風のような踏み込みでカメラコゾウの懐へ飛び込み、生身の魂を込めた一撃を突き出した!


だが――!


カシャカシャカシャッ!


カメラコゾウの周囲にいたカメカゲノコたちが、一斉にフラッシュを焚いた!


「くっ……あぁぁぁっ!?」


眩い紫色の閃光が、翠の視界をゼロにする!

隙だらけになった翠の腹部に、カメラコゾウの三脚槍が容赦なく突き刺さった!


ドガッ!!


「ガハッ……!?」


「翠ーーーっ!」


翠の身体が弾丸のように吹き飛ばされ、路上の自動販売機に激しく激突して動かなくなった。


「翠ちゃん! 翠ちゃん!!」

桃が駆け寄り、血を流す翠を抱きかかえて泣き叫ぶ。


「データ……データの通りに……私たちの動きが……完全に読まれています……!」

葵が割れたメガネを捨て、悔しさに顔を歪めて地面を叩く。


生身では、歯が立たない。

変身しようとすれば、0.1秒の隙を狙撃されて強制解除され、生身に致命傷を負う。

変身しなければ、圧倒的な戦力差と連続撮影のデータ解析で、生身のまま叩き潰される。


完全に……詰んでいる。


『フフフ……無様だな、パステリズム』


冷たく、優雅で、けれど悪意に満ちた声が、頭上から降り注いだ。


見上げると――崩れたビルの屋上縁に、漆黒のコートを風になびかせた男が立っていた。

暗黒撮影幹部・ダークレンズ。


男は首から下げた超大型一眼レフカメラの液晶画面を、私たちへ向けて見せつけた。


そこに映し出されていたのは、今まさに私たちが変身を打ち破られ、生身で血を流して路上に倒れ伏す、リアルタイムの映像だった。


「見ろ。お前たちが不様に叩きのめされるこの瞬間も、我が『暗黒撮影プロダクション』の闇ストリーミングを通じて、世界中の裏サイトへリアルタイム配信されている」


ダークレンズの冷たい指先が、画面を滑る。


「お前たちの輝きは、完全に我がファインダーの中に収まった。……変身という概念を奪われたお前たちに、もうヒーローを名乗る資格はない」


ダークレンズが、両腕を大きく広げた。


「宣戦布告だ、煌戦隊。……これより我が暗黒撮影プロダクションは、お前たちパステリズム、そしてステラセイヴァーズの存在すべてを二次元のチェキ牢獄へ永久保存する『暗黒撮影作戦』を開始する!」


『オォォォォォッ! 撮ルゾ! 殺スゾ! 永久保存スレーーッ!』


数十体のカメカゲノコたちが、一斉にカメラのレンズを赤く光らせ、不気味なシャッター音の怒涛を響かせ始めた。


---


【エピローグ】


雨が、ポツリと降り始めていた。


冷たい雨粒が、路上に倒れる私たちの傷口に染み込んで痛む。


「あ……が……っ」


私は必死に腕に力を入れ、泥と血に汚れた身体を起こそうとした。

だけど、身体が言うことを聞かない。

左腕のチェンジャーは真っ黒に冷え切り、二度と光を宿さないかのように沈黙している。


変身しようとすれば撃ち抜かれる。

生身では勝てない。

そして、自分たちの「無防備な0.1秒」の映像は、今この瞬間もネットを通じて世界中に拡散され続けている。


絶望。

今まで経験したどんな敗北よりも、深く、根底からヒーローとしての存在を否定されたような、恐ろしい敗北。


◇


コマンドルーム。


メインモニターに映し出される、雨の中で倒れ伏すパステリズムの5人の姿。

そして、闇サイトでリアルタイムで拡散され続ける『変身阻害の解体映像』。


火ノ宮紅葉が、壁を激しく殴りつけた。

「くそがぁぁぁっ! 変身の隙を狙うなんて……汚ねぇ真似しやがって!」


「……ですが、これが現実です」

あきさんの声が、今まで聴いたことがないくらい重く沈んでいた。

「変身の0.1秒を狙うアルゴリズムが拡散された以上、彼女たちだけでなく、私たちが現場に出撃しても……同じように変身を阻害されます」


「変身が……できない……!?」美玲さんが両手で口を覆う。


月城玲奈は、両手を固く握りしめたまま、モニターを見つめていた。

その銀色の手袋の奥で、爪が皮膚に食い込むほど強く力が入っている。


(0.1秒の隙……。私たちが長年積み上げてきた変身という光が……公知の弱点となった……)


玲奈の心に、激しい戦慄と、冷たい焦燥が吹き荒れていた。


雨の降る街。

倒れた茜の手のひらに、冷たい雨粒が溜まっていく。


「諦め……ない……」


茜は泥を舐めながら、掠れた声で呟いた。


「0.1秒……奪われたなら……1000分の1秒の絆で……取り戻してやる……!」


暗雲が街を完全に覆い尽くし、暗黒撮影プロダクションの不気味なフラッシュの光が、遠くで妖しく弾け続けていた。


絶望の淵に立たされたヒロインたちの、本当の試練が、ここから始まろうとしていた。


---


【次回予告】


茜「変身の0.1秒を狙われ、手も足も出ずに倒されてしまった私たち……」

咲「変身しようとすると撃たれるなんて……どうすればいいのさーっ!?」

葵「突破口はひとつ……変身速度を極限まで縮める『0.01秒の超速変身』です!」

桃「そんなの……身体が壊れちゃうよぉ……!」

翠「壊れてたまるか! 生身の特訓で、光の速さを超えてやるよ!」

茜「盗まれた隙を打ち破れ! 0.1秒の絆で、未来を掴め!」


次回、煌戦隊★キラリンジャー 修行譚 第27話:

『限界突破! 0.01秒の超速変身と光の絆!』


燃え上がれ、命の火★!

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