表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/60

書道チューバ―、どこの誰だか知らないオバチャンにチョコレートをもらう

「新快速はここで待ってればいい?」


妻と私が京都駅で新快速を待っていたら、知らないオバチャンが話しかけてきた。年齢は70歳くらいで、上品な服装をしていた。


「大丈夫ですよ。△のところで待ってれば乗れます」


私はオバチャンの質問に答えた。

※新快速は△(三角印)のあるところが乗車場所。


「新商品が発売になったから、買い過ぎたわ」


オバチャンが紙袋を開けると、「モンロワール」のチョコレートが大量に入っていた。京都の百貨店で大人買いしたようだ。


「そんなに買い込んで、何かあるんですか?」

「孫が好きなのよ。滅多に会わないけどね」


オバチャンはぼんやりと遠くを見た。


「お孫さんは、遠くに住んでいるんですか?」

「そうでもない。私は堅田かたたに住んでいて、娘夫婦は歩いて5分くらいの場所に住んでる」


徒歩5分の距離に住んでいる孫に滅多に会わない。謎である。


「近いのに会わないんですか?」

「えぇっとね、チョコレートが好きな孫は広島にいる。堅田の孫は好きじゃない」


オバチャンは広島に住む孫のためにチョコレートを買ったそうだ。堅田の孫は、旦那の両親に気を使って、あまり会わない。


興味をもった私は、オバチャンに訊いた。すると、オバチャンは堅田(滋賀県)に住むに至った経緯を語り始めた。


**


オバチャンは山口県の生まれ。夫が15年前に亡くなるまで、オバチャンは山口県に住んでいた。夫が亡くなった後、オバチャンは西宮(兵庫県)に引っ越した。


「宝塚のファンだったの。山口から観に行くと、交通費が高いでしょ」


西宮に引っ越してから7~8年間、オバチャンは毎週、宝塚の観覧をしたそうだ。その時は突然やってきた。


「すごい金額を使ったわ。でもね、気付いたの」

「何をですか?」

「いくら押し活をしても、何も残らない。宝塚のトップスターは手も振ってくれないわ。それなら、孫にお金を使ったほうがいいでしょ」


宝塚の押し活を引退したオバチャンは、娘の住む堅田(滋賀県)に引っ越した。

しかし、堅田の孫は、娘の旦那の両親に占有されている。気に入らない。


「だから、広島に引っ越そうって決めたの。孫を独り占めできるでしょ」


山口から広島に引っ越せば良かったんじゃないか……と言いかけたが、止めた。

とにかく、オバチャンは広島に引っ越すそうだ。


去り際に、オバチャンは妻と私にモンロワールのチョコレートをくれた。


**


「広島でも、元気に暮らしそうやな」


妻がホームのオバチャンに手を振った。


どこの誰だか知らないオバチャン。30分くらいしか話さなかったけれど、オバチャンの人生の大半を聞いた。

オバチャンの人生を要約すると約30分だ。


大した人生じゃなかったかもしれない。でも、そんなに悪くない人生だ。

オバチャンに会って、この歌を思い出した。


========================

いま輝くのよ、私たち

いま飛び立つのよ、私たち

笑い話に希望がいっぱい

希望の中に若さがいっぱい

人生いろいろ

(歌:島倉千代子、作詞:中山大三郎)

========================


広島でもお元気で!


<つづく>


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ