表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/126

66 初めてのスト……

 ドゥンドゥンドゥンドゥンと駐車場にまで店内のビートが響いている。ダウンタウンの海沿いにある、青いネオンにビーチパーティーと書かれてる店に着いた。


 車内でレイヴはワックスをつけて身嗜みを整え始めた。「俺の今日の髪すっげのってる!」と満足げだ。ヤギさんがレイヴに「僕もやって!」というと、レイヴはヤギさんの髪にワックスをつけた。


 一応私も、さっきポワズンで貰ったおまけのアイシャドーとアイライン、それからチークを塗った。チークのクリームを唇にも塗った。久しぶりにメイクしてる気がする。


 その間にレイヴがイオリにワックスを渡した。イオリは「いらない」と言ったけど、レイヴが「お兄ちゃんお願い☆」っていうと彼は「ぐぬぬ」と唸りつつ、ワックスを彼の髪につけた。


 メイクが終わったので隣のイオリを見ると、いつもウェーブの流したミドルヘアだったのが、ワックスで髪が濡れたようになっていて、彼の前髪の分け目からは男らしいおでこが強調されていた。


 しかもベストを脱いで、ボタンを二つ目まで大きく開けてる。彼の黒いシャツから胸板が覗いている。


 わお……。なんか私の欲求不満が爆発しそうになる。


 イオリはじっと私を見つめたまま、何も言わなかった。そのうちにレイヴが「リアちゃん変わったねー!最高最高!じゃあ行くぞ!」と車から飛び出した。


 私も車から出て、我々は固まるようにして歩いていき、お店の重厚な扉を開けて店内に入った。音楽のせいで何も聞こえない。そして結構暗い。


 人がたくさんいて、そこかしこにある丸い台の上で水着姿のお姉さんが腰をくねらせて妖美にダンスをしていた。


 しかもよく見ると上は着てないお姉さんも多々いる。プルンプルンだ。これは、この場所はちょっと、イオリ……!と彼の方を見ると、彼もこういう場所に来たのは初めてなのか、口を開けて絶句していた。


 ちょっと面白かった。レイヴに手を引かれて、彼が私の耳元で言った。


「気になる子がいたから、ちょっと出かけてくる!」


「えっ!?」


 レイヴはタイダイ模様の水着のお姉さんが踊っているところに走っていった。彼は踊り台にノアフォンをつけた。すると踊り台に五千ブルーと表示された。


 ああやってチップをあげるんだ……勉強することばかりだ。私は髪の毛を耳にかけて、辺りを見渡した。奥の壁際にテーブル席があった。


 チップをたくさんあげるとテーブル席で一緒に座れるのか、男性客と水着姿のお姉さんが楽しげな様子で一緒に座っているのも見かけた。


 ヤギさんもどこかに行ってしまったし、テーブルのところにイオリと座ろうと思った。振り返ると、彼はノアフォンで電話をしていた。


 頭をポリポリかいて、眉間にシワを寄せて通話している。店内の音楽で聞こえないのか、たまにえ?え?と聞いた。ふと私と目が合うと、こちらに少し手を振ってくれた。


 ……何してんの。誰と話してんの。様子からして、組織の人間っぽくない。多分だけどエミリかサラだ。多分だけど、サラな気が大いにする。イオリが返答に困ってるし。


 漸く電話を切ったイオリがこちらに来て、私とぴったりくっついた。彼の耳元に口を寄せて、聞いた。


「今の誰?」


 すると彼も同じように私の耳元で言った。


「コールマンさん。」


 ……サラかよ。苦笑いが止まらない。イオリは続けた。


「あの日からバリーと一緒に暮らしているらしい。でも彼は知っての通り、凶暴な性格をしている。彼女が当られることも多いらしい。それは可哀想ではあるが、あいつを選んだのは彼女だ。バリーは俺よりも踏み込んだ依頼をこなしている分稼ぎも多いだろうから、彼女がねだれば俺といるよりももっと色々なものを買って貰えるだろう。我慢するしかないだろうが。」


「どうしてイオリに電話してきたの?」


「相談に乗って欲しかったのだとは思う。しかし俺は今日は非番だから、相槌しか打ってない。アリシア、」


「何?」


 イオリがふふっと笑って、こう聞いた。


「妬いてる?」


 グエエエ……!私はスッとイオリから離れた。でもにやりとした彼に腕を掴まれて、ぐいっと引き寄せられた。


 ちょうどその場所では周りの人が音楽に合わせて体を揺らして踊っていた。周りの雰囲気に合わせて、彼が音楽に合わせて体を揺らし始めた。私もくっつきながら少し揺れて踊ってる。彼の胸に頬を寄せて、ゆっくり目を閉じた。


「アリシア、俺のことで、嫉妬することはあるか?」


「……なんで?」


「してくれたら、少し、嬉しい……かもしれない。」


 ああー、早く帰りたい。最近してないから早く帰りたい。帰ったら私から襲ってやりたい。私はギュッとイオリに抱きついた。彼もぎゅうと抱きしめてくれた。顔をあげると彼と目があった。


 いつも、キスしたいときは私の唇を見る。今も彼はそうした。こんな公衆の面前で恥ずかしいけど、目を閉じようとしたその時、彼のベストのポケットが震えた。


 ……。


 イオリはノアフォンを取り出して、画面を見た。私も少し覗かせてもらうと、サラの名前が表示されてた。しかもサラの名前の奥の壁紙が、イオリの頬にキスをするサラの画像だった……!


「ねえ、イオリ……この写真すごくラブラブしてるよ……?」


 彼は慌ててノアフォンを背後に隠した。


「わ、忘れていたんだ!あとで帰ったら削除しようと考えていたが、またすぐに電話してくるとは……。」


 今すぐに解除しろよ。そんな私の願いは風のように流された。彼はノアフォンを持って、人混みをかき分けて、また音の静かな入り口の方に行ってしまった。


 正直、かなりムッとしている。まだ日にちが経っていないからそういうのも仕方ないことなのかもしれないけど、イオリとサラの長い歴史を考えたらアレだけど、でも今は私とイオリのターンなんだ。


 立ち尽くしていると、肩をトントンと叩かれた。振り返ると若い、スリムだけどムキムキ筋肉の、水着姿のお兄さんが立っていた。


 黒い髪の毛にウェーブが掛かった、イオリと似た髪型の人で、目もキリッとしてイオリと少し似ている。でも彼は鼻の穴が馬のように大きい。


 彼は私の耳元で聞いた。


「ねえお嬢さん、さっきからずっと君のことを見てたよ!気づいてた?」


「え?知らない。」


「そっか、さっきの彼氏さん?」


「ま、まあ……。」


「まーでも折角ここに来たんだから楽しんだ方がいいよ!俺のところに来て!ダンスしてあげるから!」


「え!?あ!ちょっと!」


 彼に腕を引かれて、私は奥の方のメンズダンスエリアに案内された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ