45 GGしたいのですが
我々四人を乗せた車は、干し草の転がる、少し寂れた砂漠地域のグレイタウンに到着している。ターゲットとなる銀行は、店頭に色の褪せたプラスチックケースにフルーツが入っている食料品屋さんと、看板の色が薄れているガソリンスタンドの間にあった。
しかし思っていたよりも警備が分厚い。銀行の入り口には重装備のノアズ兵、銀行の屋上にもノアズの敏腕スナイパー部隊の隊員が複数名いて周囲を警戒している。
そして私のスコープで銀行の窓を覗くと、中にもうじゃうじゃと連射子銃を持ったノアズ兵が多数いた。明らかに田舎町の警備の体制じゃなかった。
それが判明してから、レイヴは車内から私のスコープでずっと銀行の様子を見ていて、イオリはノアフォンで地図を見ながら作戦を練っていて、私はやることが無いのでじっとしている。たまにエミリと話をした。
「嘘だろ……もー……警備ガッチリし過ぎだろ。あれじゃあ銀行に入る前に蜂の巣になるーもー!」
私はレイヴに聞いた。
「どんな銃持って来た?」
「ハンドガンだよ。普通のハンドガン。だって俺はそれでも照準がブレるんだから。イオリはマグナムだろ?MODで連射出来るけどマシンガンには負けるしなーうーん!あの女……!」
レイヴは歯軋りをし始めた。
「ラズベリー、あのうんちめ……俺を嵌めやがったな。この日なら中に入ってるケビンと連携が取れるとかホラを吹いて、俺にわざとこの日に襲撃させたんだ。警備が手堅いのはノアズの奴らも今日俺らが来るのを分かってたんだ、ラズベリーに聞いてな!でも俺は今日この日に襲撃しないといけない!それがオリオン様との約束だからだ!うぅぅぅん!」
「どうしてラズベリーさんがそんなことするの?レイヴのこと嫌いなの?」
「しらね。……あーでもちょっと浮気したかも。」
それだね……。私は苦笑いした。するとイオリが反応した。
「馬鹿め。それだからこんな目に遭うんだ。」
するとレイヴがじっとイオリを睨んだ。
「お前、人のこと言えんのかよ。「あ?」いつもいつも俺とリアちゃんとの会話を遮りやがって。そうかジェラってたのもイオリだったんだよな、当たり前だけどさ。」
「彼女は俺の守護霊だ……。」
でた……しかもそれは本当だから何も言えない。
「へぇー。じゃあ別にリアちゃんに対して特別な感情は無いんだ?……そうなんだって!リアちゃん!そうだっ!」急にテンションの上がった彼がバックミラー越しにエミリを見た。「母ちゃん聞いてくれ!久しぶりに会ったついでに紹介したいんだけど、母ちゃんの隣にいるのって、俺の婚約者だから!」
「え!?そうなの!?本当に!?」エミリが目を丸くして私を見た。私はブンブン首を振った。
「わ、わかんない!いつからそうなった?」
「おい貴様。」
イオリがレイヴの腕をガシッと掴んでいる。イオリの手は血色で赤く染まっていて、いかに彼が力を入れているのか、見ているだけでも分かった。レイヴは痛みに悶えた。
「やめろー!いたいいたいいたい!」
「ふざけたことを言うな!大体ゴースト相手に何を考えている!」
「ああ!?俺は相手がゴーストでもいいの!可愛いのと、それから話が合うのと、一緒にいて楽しかったら何でもいいんだよ!お前みたいに、あれこれ頭で考えて相手を選ぶ人間じゃねんだよ!それにお前には関係ねーだろーが!お前はもう既に別の誰かとカップルなんだろ!?」
「この優しいお兄様が貴様の言った条件に素晴らしく合う相手を紹介してやる!答えは猫型AIロボットだ!最近のはよく出来てて言葉を覚えるらしいぞ!お前にピッタリだ!何ならこの仕事の後で俺がプレゼントしてやる!」
「ロボットなんかいらないよー!リアちゃんをよこせよばかー!じゃあ聞こう?じゃあ聞こうよ!リアちゃんさ、俺とイオリ、どっちがいい?」
「え……え……!」
バックミラーに光る、二人の熱気のある視線が怖い。でもサラのいるイオリを選ぶと、風の噂でサラが聞きつけるかもしれない。だから言った。
「どっちかって言うと、レイヴかな……。」
「ほーら来た!」レイヴが喜びながらガッツポーズして、イオリは意外にも、雷に打たれたような顔をした。
「やっぱそうだよねー!だってたくさん電話してるもんねー!だからいいんだよ、いつでも俺のほうに来てもさ。」
「ああ?」イオリがレイヴを睨んだ。「貴様が一方的に電話しているだけだろうが!それにリアは俺からは離れられない。」
「そうなの?」
私は頷いた。
「多分、そう。」
「ふーん」と、レイヴは口を尖らせた。「じゃあ仕方ない。兄貴も一緒にデート来るしか方法はないかー。じゃあいいよ、別に兄貴も来ても。でも二人きりになりたい時は察しろよ?その時はヘッドホンと目隠しをして、ただ座ってて。」
「二人きりになりたい時だと……?」
「そりゃ勿論デートしたらさ、へへっ、ラブラブしたいもんねー。リアちゃんはゴーストだし、まさかだけど、兄貴とそう言うことしてないよね?」
私はイオリを見た。イオリは何故か、誇らしげにニヤリとした。それを見て、レイヴは体をビクッと震わせた。
「えっ!?嘘だろ!ゴースト相手にとか言っときながらお前……そうだ!今気づいた!それは浮気だぞ!」
「……リアは俺の守護霊だから。」
「えっ!?何その言い訳!じゃあ俺、その事をお前の彼女に言うからな!」
それはまずい。私としてもまずい。私はレイヴの気を逸らそうと、何か話題になりそうなものを車内で探した。
すると見つかった。いつの間にか、私の隣にいるはずのエミリが消えていたのだ。これは大スクープだ!私はすぐに口論をしている二人に伝えた。
「ねえねえ、エミリがいない!」
「えっ……!」「何!?」
二人は慌てて車の外に目を配らせた。私も探すが、周辺に彼女の姿はない。レイヴが私のスコープを持って、覗きながら言った。
「当たり前だけど銀行にも姿は見えないよ……。どこ行っちゃったんだろ?怖くて逃げちゃったのかな。」
イオリが言った。
「まあ、これから息子たちと、とびっきりの犯罪をしろと言われたんだ。その苦しみは分かる気もするが……今あのまま街の中に逃げても、組織の人間に捕まる可能性が非常に高い。彼女は正直な性格だ、もしや銀行周辺のノアズ兵に俺らのことを話しに行ったか……?」
「おいおい」レイヴがイオリの腕を掴んだ。「それは困るだろ!じゃあ俺らノアズに捕まるのか?」
「まだそうだと決まったわけではないが、有り得る。彼女は純粋な性格をしているし、こんな身に有り余る依頼を与えられて気が動転して、誰か公正な人物に頼りたくなって、真実をノアズに伝えに行ったと十分に考えられる。どうする?この場は離れた方がいい。」
「そ、そうだよね。」レイヴの声が震えた。「今ここでノアズに捕まったら終わりだ。何処か、別の場所に待機した方がいいよな。絶対に今日中にあの銀行をクリアしないといけないんだし。」
レイヴがアクセルを踏んだ瞬間に、私は叫んだ。
「待って!」




