27 クレイジードライバー
森の中でトレイラーを爆走させているのは私だ。木を避ける為にハンドルを切り替えまくって、避けきれないものはトレーラー前頭部にあるトゲトゲのついたシールドがバンバン受け止めている。
「おい!何をそんなに急いでいるんだ!?」
助手席のイオリが叫んだ。彼はシートベルトをぎゅっと握り、上下左右にガタガタ揺れている。漆黒の髪の毛がシェイクされてるのがちょっと綺麗で見惚れていると、イオリが私の頬を押してきた。
「な、何?」
「俺じゃなくて前を見ろ!前を!……それで、今からどこに行くんだ!?まさかヴィノクールじゃないだろうな!?」
「今からトロピカルバイスに行く!さっきヤギさんがイオリの今月のラッキースポットは海辺だって言ってた!」
「ラッキースポット!?占いを信じて、あの物騒な南の島に向かってるのか!?一体お前はどうなっている!?……大体何がラッキーだ、そのラッキーの規模だって、どうせ小銭を拾うレベルのラッキーに決まってる!」
「いいでしょ、ラッキーじゃないよりかは、ふふ!」
「ああああっ!……俺の人生、ここから巻き返すイメージが全然出来ん!こんなことなら貯金を全部使っておけばよかった。ノアズに全部取られたんだろうな、俺の十億ブルー。」
「えっ!?」
つい運転が乱れてトレーラーが軽く木に掠ると、イオリが私の肩をべしんと叩いた。
「おいぶつかっただろうが!動揺するな!」
「だって十億ブルー!」
「それはもう過去の話だ……ぬあああああ!」
「大丈夫、巻き返せるって!」
「どうやって!?」イオリの叫びが森に響いた。「もう俺は重要指名手配されてるんだぞ!ノアズの職員……これからは衛兵って呼ぶべきだな、もしそれに見つかったら射殺されてもおかしくない!クソォォォシードロヴァァァァァァ!」
「トロピカルバイスに行ったらラッキーになれる!」
「占いは適当な言葉とシンクロニシティの合わせ技だ!ラッキーだと!?どこをどう考えたら、あのピンクや水色のネオンが蔓延る夜の海辺に俺のラッキーが落ちているのか!?ああ、よかろう。試しにそれを信じてやる。しかし、もしそれが嘘だったらヤギの首を絞めてやる!シードロヴァァァァァ……待ってろよ、くっ、ふふっ、アッハッハ!」
やばい。遂にやばい領域にイオリが行ってしまった。高笑いをしている助手席の人が怖いので、私は更にアクセルを強く踏んだ。




