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04

 聖都を出て二日目、前から来た行商人に湿地帯の詳しい場所を聞いた。この先に有る分かれ道の南に有る草原の先が湿地帯だそうだ。一人では危険だから止めておけと、この行商人にも言われたが、やばそうなら逃げるから大丈夫だと言って先に進んだ。


 三日目の早朝に街道の南に有る草原と湿地帯の境目に着いたのだが・・・・・


「なんつーか、沼とか亜熱帯な感じのを想像してたんだけどなぁ」


 草原の後半から地面が湿り始め、草原の切れ目からは地面が粘土質に変わり水が染み込まずに薄く広がっていて、周囲には草の代わりに高さ2m前後、直径20cm位の細い木が疎らに生えていた。


 まぁ突っ立っていても仕方が無いので、気配を探りつつ先に進んで行く事に。滑り易いが、移動には問題無い。沈んで足を取られるよりマシだろう。


 歩いて十五分程で人と然程変わらない大きさの気配を察知した。全部で五匹?それとも五体か?初見の相手だしと慎重に近づいて行くと、木々の切れ間から全身に鱗を纏った鰐の様な頭の二足歩行している生物を見つけた。多分あれがリザードマンなのだろうがイメージとちょっと違った。武器は持って無いし鎧も着てないな。


 まぁ野生生物なんだし、武器はまだしも鎧を着ている方がおかしいか。何処で調達してくるんだよって話だし。


 更に近寄って良く見てみると、鰐や蜥蜴と言うより小さな恐竜と言った方が近い感じがした。身長と言うか体高は150cm前後で足は前後とも短めで後ろ足は太い。攻撃は爪と牙、そして長さ1m程有る尻尾かな?鱗の防御力は未知数だけど、打撃による内部へのダメージは通る筈だ。


 取り合えず一当てしてみるかと駆け出し、一番近い奴へと向かって行くと、俺に気が付いたリザードマン達が一斉に身を屈めた。


 その反応に嫌な予感がして足でブレーキを掛けようとした・・・けど、滑って止まらねぇ!


 次の瞬間リザードマン達が次々と俺に向かって飛んで来た。その為の太い後ろ足かよ!


 下にも横にも逃げられない。為らばと跳び箱の要領でリザードマンを飛び越え、着地と同時に振り返った。


「あっぶね・・・えぇ~・・・・・」


 リザードマン達は飛んで来た勢いのまま腹で着地して・・・そのまま滑って移動していた。ペンギンかよ!


 前足と尻尾を器用に使い、木に引っ掛けて方向転換して俺を取り囲むように移動してくるリザードマン達に、連携も出来んのかよと毒づいた。

 速度が落ちてくると後ろ足を使って地面を蹴って加速してくるし、思っていた戦闘方と違い過ぎて少し動揺してしまった。


 おいおい、ガチなパワー系の生物だと思ってたよ!うつ伏せのまま迫って来るとか、やり難いだろ!


 流石にこの足場で囲まれるのは拙いと駆け出すが、奴等の方が早くて回り込まれた。


「仕方ねぇ、全力でやらせて貰うぜ!!」


 脳内麻薬のエンドルフィンを分泌させて身体能力を100%引き出す。思考速度と動体視力が上がり奴等の動きが遅く感じた。


 走りながら目の前の木を蹴り真横に飛んで、一体目の顎を交わして着地と同時に直ぐ横に来た二体目の胴体を蹴り飛ばし木にぶつけて包囲を抜ける。


「ぅおおぉぉりゃぁああぁぁ!!」


 木にぶつけて転がった奴の尾を左脇に挟んで振り回し、木を使って方向転換して来た奴に向かって投げつけ、飛んで行くリザードマンを追いかけた。


 足場が悪過ぎて力が乗り切らないが、ぶつかって動きを止めた奴を武器として使い、叩きつけ投げ続けた。やがて全てのリザードマンが動かなくなり、最後に止めだと首を折って回った。


「あぁ~しんど・・・取り合えず全部バッグに仕舞うか・・・・・」


 まさかこれ程苦戦するとは思わなかった。人型に近い事や日本でのゲームや小説から得た情報に捕らわれ過ぎていたし、地の利が向こうに有った事も大きい。これからは先入観は捨てないと危険だな。


 色々驚かされたし、面白い物も見られたけど遊びに来た訳じゃない。狩りをするならスパイクが必要だと、リザードマンの回収を終えると予定を切り上げて聖都に戻る事にした。狩ったのは五匹と少ないけどバートさん喜んでくれると良いなぁ。




 三日後に聖都のバート商会に着くと、バートさんが血相を変えて駆け寄って来て俺の肩を両手で掴んで揺さぶってきた。


「ジン君!無事で良かった!諦めて帰って来たんですね!!怪我は?!怪我は有りませんか?!」


「え・・・あ、ああ、怪我は無い・・・けど・・・・・」


「本当ですか?!隠す必要は有りませんからちゃんと言って下さい!送り出してから一人では無理だと、言うんじゃなかった、万が一の事が有ったらと後悔していたんです・・・・・良かった・・・本当に無事で良かった!!」


 俺はこの時、困惑して如何返して良いか解らなかった。今までこれ程に心配された事が無かったからだ。しかも先日会ったばかりの相手にだ。


「もう、無理はしなくて良いですからね。近場で狩れるラビット系にしておきましょう。何なら取引先への配達でも・・・・・」


 何だろう・・・心が満たされて行く気がする。涙目で俺の肩を揺するこの人の力になりたいと素直にそう思えた。


「・・・・・ごめん・・・俺の事ちゃんと話しておくべきだったよ・・・それと、心配してくれて有り難う、バートさん」


「ジン君が謝る必要は有りませんよ。さぁ、疲れたでしょうし、今日の所はゆっくり休んで、明日にでもこれからの事を話しましょう」


「あ~・・・いやぁ、ちょっと言い難いんだけど・・・その~、取り合えず獲物を広げられる所に案内してくれる?」


「は?」


 帰るのが早かったからか、背中のバッグ以外手ぶらだからか、俺が逃げて来たと勘違いしているバートさんの背中を押して、案内して貰った解体用の倉庫に倒したリザードマンをバッグから取り出して行くと、バートさんが驚愕の表情で固まった。


「ちょっと苦戦したけど、次からはもっと上手くやれるからさ。これが幾らになるか解らないけど用意して欲しい物も有るし、話を聞いて貰えるかな?」


「・・・ぇ・・・あ・・・ジ、ジン君・・・これ、一人で狩って来たんですか?それに、その鞄は・・・まさか・・・・・」


 ギギギと音が鳴りそうな感じでこちらを向いたバートさんの問いに「勿論俺一人だよ」と笑顔で答えて話を続けた。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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