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「それじゃ俺は帰るぞ。防具屋の場所は大丈夫だな?」
「あ、はい。すみません、俺が知らなかったばかりに仕事中に抜けさせてしまって」
ドラインさんと別れて防具屋へ、場所は南地区の冒険者組合の近く、中央広場と南門の中間位の位置だった。
「お願いします、一匹分で良いんです。それも外皮じゃなくて内皮だけで良いんですよ。何とか都合付きませんか?」
「いや、悪いけどうちも予約が入ってるから如何にもなぁ。あんたの所には世話になってるから何とかしてやりたいが・・・・・すまんな」
「あれ?アルバートさんじゃないですか。こんな所で会うなんて奇遇ですね」
中に入るとアルバートさんが防具屋の店員に頼み事をして断られていた。
「ああっ!ジン君帰ってきてたんですね!リザードマン!リザードマン一匹売って下さい!それさえ有れば車輪の研究が進むんです!」
「え?車輪って・・・俺の頼んでる奴ですか?だったら幾らでも渡しますから、ちょっと待ってて下さい。すみません、バートさんに紹介されてきたんですけど、オーガの買い取りってして貰えますか?」
「「お、オーガだと・・・・・」」
アルバートさんの用は冷蔵馬車の車輪に使う素材探しだったので、ちょっと待って貰って、防具屋に鬼の買取を頼んだら二人が目を見開いて息を飲んだ。バートさん達も似たような反応だったけど、そんなに珍しいのかな?
「あ、あれ?ダメですか?無理なら他に行くんで、何処か紹介して貰えませんかね?」
「か・・・買う!買い取るぞ!いや、買い取らせて下さい!お願いします!」
「ちょっと待ったあああぁぁぁ!!ジン君、私に売って下さい!リザードマンよりもっと良い物が出来ますから!ねっ!」
「おい!ふざけんなアルバート!うちにバートからの紹介で来たんだから、うちが買い取るに決まってんだろ!お前はリザードマンで我慢しとけ!」
「い~え、うちとジン君の関係と現在手掛けているジン君からの依頼に使う事を考えればうちに売るのが当然です!!」
如何やらかなり良い素材が取れるらしく、二人が揉め始めたけど、如何しよう・・・何か折衷案無いかな?
「え、え~と・・・アルバートさんは皮が必要なんですよね?他は防具屋さんとかで如何です?それでダメなら二人共にリザードマン二、三匹付けますけど、如何します?」
リザードマンを勝手に売っちゃうのはバートさんに悪いと思うけど、まぁこれ位なら良いだろ。
「・・・・・リザードマン二、三匹って・・・兄ちゃん何もんだ・・・・・ああっ!ジンって、ドラゴンスレイヤーのジン・マキシマかあああぁぁぁ?!こいつはたまげた、バートの奴偉い大物と付き合いあんだな・・・アルバートもか・・・・・良かったら、うちとも定期的に取引しねぇか?」
「ん~・・・バートさんが買い取れない獲物を狩った時は持ってきますよ。それで良いですか?」
「ああ、勿論だ!いやぁ~いい縁が出来た!バートの奴に感謝だな!・・・所で他に何か持ってない?」
「他にはニードルフィッシュとか言う魚しかないですけど、買います?」
「いや、流石にそれは要らねぇ」
そんな訳でアルバートさんに鬼の皮とリザードマン三匹、防具屋さんに鬼の残りとリザードマン三匹を売って帰った。因みに鬼の売却総額は百二十万メルとリザードマンの倍以上で驚いた。剣と魔法の世界で表面に傷の殆ど無い獲物とか先ず有り得ないのが高額買取の理由だ。
もしかしたら、そう言う点でも俺が生きやすいこの世界が選ばれたのかもしれないな。来て直ぐに金持ちになったし。
家に帰り衛兵や晶達に留守の間の報告を受けたが、特に何も起こらず至って平和だったそうだ。暫く店の様子を見ていたが特に忙しい訳でもないので屋内へ。
「さて、取り敢えず捌いてみるかな。豆の時みたいに妙な変化があるかもしれないしな」
食べる気はなかったが、もしかしたらとニードルフィッシュを三枚におろして調理してみた。
結果から言おう。ニードルフィッシュはダメだ。煮ても焼いても食えないとはまさにこの事で、どの調味料を使っても苦みが消えないし、悪臭を放ったりヘドロのようなペースト状になったりと、見た目も味も最悪の結果に終わった。
そして二日後にガルバデスが頬を腫らしたハルを連れてやってきた。ハルの奴、殴られたのか?
「明日から指揮官として復帰するので、今日は礼と謝罪に来たのだ・・・先ずは礼を。そなたの助言が無ければ、私は役目を果たせずに目の前で聖下を失う所だった。この腕一つで済んで、本当に良かったと思っている。そして、この愚息が迷惑を掛けて済まなかった。聖下から話は全て聞いた、恩人であるジン殿に無礼を働くなど有ってはならんと言うのに、この馬鹿者が」
「父上、私は罪を・・・・・」
「何度も言わすなバカ息子が!貴様騎士と言う者が如何言う存在かまだ解らんのか!!我等の命は国と聖下と民の為に在り、聖下の命は絶対だ!聖下がお許しになられたのだ、そこに不満なんぞ有ってはならんと何度言ったら解る!貴様、騎士を辞めるとでも言うのか?!一度立てた証を、誓いを破ると言うのなら全てを捨てて何処へなりと行くが良い!!」
「いや、それは言い過ぎだって。その辺にしといてやれよ」
「ジン殿、心配はいらん。こやつは一人で野営の準備、天幕の一つも張る事の出来ん男だ。出て行くなんぞ出来やせん。そこらで野垂れ死ぬか、精々毛布に包まって干し肉を齧りながら夜を明かすのが関の山よ。守護騎士等と煽てられ、いい気になりおって。行軍中も馬から降りもしない根性無しが。私は反対したのだ、騎士とは剣の腕だけで成る物では無いとな」
ハルは俯いて悔しそうな顔をしていた。尊敬している父親に認めて貰う所かここまで言われちゃなぁ。
「ジン殿。聖下にこやつの事を頼まれたようだが、断って頂いて構いません。聖下の命とは言え飯を食わして貰った上に訓練の手解きまでして頂いた。更には聖下と殿下の命を助けて頂いた。だと言うのにこやつは恩を仇で返す様な真似をしおって。これ以上迷惑を掛ける訳には参りません。どうかお断り頂けませんか」
「ん~・・・俺としてもそれはちょっとなぁ・・・現状あんたが戦えない以上、この国に何か有ったら俺が出張るはめになるだろ?だからハルを鍛えて俺の出番を減らしたい、と言うか無くしたいんだよね。そんな訳だからせめてあんたを超えて貰わにゃ困るんだよ。そんであんたにゃ衛士達を鍛え直して貰えると助かるかな。今のままじゃ戦なんて事になったら役に立たないし」
「む・・・確かに戦となれば不安が有るか・・・世が平和で有る今こそ鍛えておくべきなのかもしれんな」
「ハルは自分から罰を望んでるんだし、俺に扱かれて壊れるか、それとも物になるか二つに一つって訳だ。まぁ、俺が一桁のガキの頃にやってた基礎訓練だし、出来ないなんて言わねぇよなぁ?ハルさんよ」
と言う訳で、有無をも言わさず翌日からハルは俺の預かりとなって、訓練の日々が始まるのだった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




