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 周囲を見渡すと正面奥の神像の前が片付けられていて舞台の様になっているのが見えた。ここで教皇達が祝詞を唱えながら舞うのだそうだ。

 良く見れば舞台の手前に衛士達が居て、その中にガルバデスとハルの姿が見えた。


「ハ、ハルが仕事をしてるだと・・・・・」


「・・・・・ジン兄さんヴェルテール様は副団長なんだから当たり前だよ・・・家じゃあれだけど・・・・・」


 ライエルも大概酷いな。と言うか、家の子達からすると唯のお隣のお兄さんみたいになってるんだよな。主に俺のせいで。


「早く始まらないかなぁ・・・お昼の鐘がなり終わったら始まるんだよね?」


「そうそう、鐘が鳴ると教皇聖下達が奥の扉から出てきて神像の前に並んで、鐘が鳴り終わったら始まるんだ」


「へぇ、そうなのか。良く知ってるな、ライエル」


「俺は春生まれで、十五の時に孤児院を出て直ぐに聖誕祭だったからさ、冒険者登録して街中の清掃とかしてたんだけど、最終日は仕事にあぶれちゃって、やる事も無いから見に来たんだ」


「おまっ!そう言う事は早く言えよ!誕生祝しそこなったじゃねぇか!」


「え・・・だって、忙しかったし・・・ジン兄さんには世話に為ってばかりだからさ・・・・・」


「つまんねぇ遠慮すんなよな。帰ったら全員、誕生日教えろよ。因みに俺は夏生まれだ」


 カラーン―――


「あ!出て来たよ!わ~・・・素敵な衣装・・・・・」


「・・・ほんとだ・・・アンジェリカ様素敵・・・・・」


 正午を告げる鐘が鳴り響く。祭壇の横の扉が開き、先ずは教皇が、次にアンジェリカが入って来て、その後ろに十代半ばの男の子、そして神官らしき男性が四人入って来た。


 カラーン―――


 舞台の中央に教皇が立ち、その左側にアンジェリカが、右側に男の子が並ぶ。四人の神官はアンジェリカと男の子の後ろに二人ずつに分かれて並んだ。後ろの神像の配置を模しているのだろう。


「素敵ねぇ・・・俺的には派手過ぎな気もするけど。まぁ神事だし、こんなもんか・・・あの男の子は誰だか知ってるか?」


 カラーン―――


 教皇とアンジェリカと男の子が何やら話している。最終打ち合わせだろうか?ガルバデスとハルが教皇達へと近寄って行った。


「あ、ジン兄さんは知らなくて当然か。皇太子様だよ。去年の秋に成人したから今年から闇の神役なんだ」


「アンジェリカの弟か・・・そう言や、聖下に似てる―――」


 カラーン―――


 四回目の鐘が鳴り響いた時。この世界で聞く筈の無いカチャリと言う金属音が聞こえた気がして、開いたままの入り口へと振り返った。


「如何したの?ジン兄」


 何か嫌な予感がする。これは・・・日本で数回感じた事の有る・・・殺意―――


「―――ッ!全員伏せろおおおぉぉぉ!!」


 俺は叫びながらミリーとエレナを引き倒しつつライエル達の確認をした。三人は一瞬戸惑いながらも少し遅れただけでしゃがみ込んでいて安心した。


 カラーン―――


 五回目の鐘が鳴り終わった次の瞬間、轟音と共に創造神の神像の台座が砕け散った。


「父上!!」「アンジェリカ!治癒の光を!急いで!!」


「・・・・・え・・・ぁ・・・・・は、はい!」


 舞台からハルと教皇の叫び声が、周囲からは悲鳴が聞こえた。ガルバデスに当たったのか・・・拙い!第二射が来る!!


「ハル!教皇達を入り口と神像の直線上から外せ!!誰でもいい!入り口を閉めるんだ!!」


 ハルに指示を出して身体を起こし状況を視認した。台座を破壊されて倒れた神像の傍に血塗れのガルバデスが倒れていて、その左腕は肩口から無くなっていた。まさか、対物ライフルか?!


 ハルが教皇とアンジェリカの手を引き壁際へと向かおうとするが、アンジェリカがガルバデスを治療しようと動き始めた為に後ろ向きに引かれる形になり、その場に倒れてしまった。


 カラーン―――


 六回目の鐘と同時にハルが教皇を壁際に突き飛ばし、アンジェリカの上に覆い被さる。俺はハルとアンジェリカの下へと駆け出した。


 このままじゃ間に合わない。イチかバチかまともに制御出来ていない身体強化を使うしかなかった。


「ぅおおぉぉぉあああぁぁぁぁ!!」


 細かい操作なんてしている暇はなかった。一気に全身に魔力を広げて爆発させた。


 全く制御が出来ない。骨が軋み、筋肉が悲鳴を上げ、床を蹴った右足が勝手に前に出て身体を引き中を舞った。


 大気を切り裂き一瞬で倒れた神像の前に着地し、床を削りながら転がる神像を右手で掴んで振り回し、ハル達の前の床に突き刺した所で限界が来た。


 全身の筋肉が痙攣して俺はその場に崩れ落ち、事の成り行きを見ている事しか出来なくなった。


 カラーン―――


 七回目の鐘が鳴ると同時に神像が爆散し、弾丸はハルの着ていた鎧の背中部分を削って床に着弾した。


「・・・ぁ・・・ハ・ル・・・・・急・げ・・・今の・・・うち・・・だ・・・・・」


 ハルが立ち上がり、気を失ったアンジェリカを抱えて走り出した所で入り口の閉まる音が聞こえ、俺は意識を手放した。




 ガスッ―――


 闇の中に音が響いていた。


 ゴスッ―――ガスッ―――


 これは打撃音か。それも、人を殴る音―――


 周囲の闇が晴れると、見覚えの無い部屋の中に居た。


 何処だここは―――この音は何処から―――


 音のする方へと移動すると、女性に馬乗りになって殴り続ける男性が居た。


 何やってんだ!止めろ!それ以上殴ったら死んじまうぞ!


 俺の声が男性に届く事は無く、男性は女性を殴り続けた。


 止めろ!止めてくれよ父さん!母さんが!母さんが!!


 叫び声を上げた次の瞬間、視界が紅に染まり、全てが消失した。




「・・・ぅ・・・ぁぁあああぁぁぁぁ!!・・・ぁ・・・夢・・・か・・・・・」


「ジン兄ちゃん!」「大丈夫?どこか痛くない?」


 気が付くと知らない部屋のベッドの上に居た。


「ん?何処だここ?え~と、特に何処か痛いとか・・・は・・・・・あれから如何なった!教皇やアンジェリカは?!ガルバデスは無事か?!」


 妙な夢・・・いや、俺の過去であろう夢を見たせいだろうか、記憶が少し混濁していたようだ。


「その・・・ガルバデス様はアンジェリカ様が治療してるけど・・・・・凄く危険な状態だって・・・・・ジン兄さんは別の神官が治療しに来てくれたんだけど、他人の魔力を受け付けないとかで治療が出来ないって言われてさ・・・何だかうなされてたみたいだけど本当に大丈夫?あ、他に怪我人とかは居ないよ」


「そ、そうか・・・・・さっきも言ったけど、何処も痛くないから大丈夫だ」


「・・・・・あのさ・・・あれ、何だったの?あんな魔法見た事も聞いた事も無いけど・・・ジン兄さんなら何か知ってるんじゃないの?」


 意外と鋭いな、こいつ。ハルに出した指示からの推察か?


「ハァ・・・知ってる・・・が、教えられない。理由は狙われているのが俺達じゃ無いと言う事と、狙われたのが教皇達、皇族だからだ。知れば巻き込まれるのは確実で、お前達を危険な目に合わせる訳にも、危険な真似をさせるつもりも無いからだ。言ったろ、お前達は戦う為の身体じゃないって」


 ベッドから降りて不満げに俯くライエル達の頭を撫でてから部屋を出た。ってか、ここ何処よ。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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