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部屋に入って全員が揃うのを待った。皆には部屋に備え付けのコップを持って来る様に言ってある。唯話すだけってのも味気ないし、色々有って疲れたからカロリーバーとスポーツドリンクでも飲み食いしながら和気藹々と話せたら良いなと思ってだ。
全員が揃い床に車座に座ってスポーツドリンクとカロリーバーを配って、さぁ話をと思ったら、皆また泣いてるし。甘い物なんて森に入った時に果物を見つけた時だけだったのだそうだ。
隣に座ったミリーとエレナの頭を撫でながら、泣き止むのを待ってから話を始めた。
「さて、明日の予定だが、朝食後に全員頭と体を洗って小奇麗にしてから服屋に行くぞ。下着と着替えも含めて一人五着は買う事。その後は俺が懇意にしているバート商会に行く。そこの会頭のバートさんは俺の恩人だから失礼の無い様にな。それと、ヒースとニックはそこで配達の仕事が決まったから真面目に働くように」
「「は、はい!」」
元気良く返事をする二人を見て頷いていると、ライエルが不満を言ってきた。
「ちょっと待ってくれよジン兄さん!何で俺じゃないんだよ!俺が一番年上だし計算も一番だろ!今まで俺が皆を守ってきたんだ!俺にやらせてくれよ!」
「はぁ・・・それだよ、お前を外した理由は。言っただろ『誰彼構わず噛み付くな』って。バートさんに無理言って雇って貰うってのに、お前がそうやってバートさんや客に噛み付いたら全員クビになるだろうが」
「そ、そんな!幾らなんでも雇い主に噛み付いたりしねぇよ!」
「い~や、お前はするね。今現在、助けられた俺に噛み付いてるのが良い証拠だ。それとも何か?まだ俺の事疑ってんのか?」
「そ、そんな訳ねぇだろ!あっ・・・そ、その、ジン兄さんには気を許してるって言うか・・・その・・・・・」
「で、バートさんにも気を許したら噛み付くってんだな。これで解ったろ?お前等はもう冒険者じゃねぇから力を誇示する必要はねぇんだ。これからは必要以上に敵を作るような真似はするな」
「・・・・・はい・・・すみませんでした」
「いい機会だからお前達に冒険者を辞めさせた理由も言っておくか・・・お前達は幼少期に必要な栄養が摂れなかったせいで色々足りてないんだよ。身長も低いし骨も細くて筋肉も付いてない。戦う為の身体じゃないって事だ。これからちゃんと飯を食えばある程度は身体も出来上がるだろうけど、戦う事を生業にしていける程にはならない。あのまま続けても死ぬだけだから辞めさせたし、怪我もさせたくないから無闇に喧嘩を売るなって言ったんだ」
取り敢えずは納得してくれたし、これからの教育次第で変われるだろうと思う。気分を変えて雑談でもと思ったら、また泣いてるし。
こいつ等も今まで親身になってくれる奴が居なかったんだろう。その気持ちは良く解る。俺もバートさんに心配されて嬉しくて泣きそうだったしな。
でも、泣きながら謝ったり礼を言うのは止めろ。何言ってるか解かんねぇよ。
何か色々有って濃い一日だったけど、俺を慕ってくれる兄妹分も出来たし、良い一日だったと就寝した。
翌日、朝食後に全員を丸洗い。こいつ等兎に角汚くて、桶の水を何度も替えて綺麗になるまで洗った。あ、女の子達は部屋に水を運んで自分達でやらせましたよ。
「これからは面倒でも毎日体と頭は洗うんだぞ。雇い主や他の従業員だけじゃなくて、お客さんにも失礼になるからな」
そして、おかみさんに聞いた一般的な店に服と靴を買いに行った。
「下着も含めて一人最低五着だぞ。あまり変なのはダメだけど、気に入った奴なら何でも良いからな」
今までボロい古着屋にしか入った事が無くて最初は萎縮していたけど、直ぐに慣れてわいわい楽しそうに話しながら服を選んでいた。
俺は店員に頼んで上着を作って貰う事にした。着替えは各三着有るけど、上着だけはこの一着しかない。これは師匠から貰った皆伝の、後継者としての証だから他の服を着る気がしなかったけど、流石に七年経ってヘタってきたし、お金に余裕の有る今の内に同じ型の物を作って、これは大切に保管しておこうと思った。
全員買った服に着がえてバート商会へ・・・行く前に昼食を近くの食堂で摂った。服選びに時間が掛かり過ぎたな。主に女の子が。
しかし服と靴は高いな。俺の上着の仕立て代二着分の前金を含めて全部で三十万メル以上かかったぞ。
昼食後にバート商会へ。全員でバートさんに挨拶をして、ヒースとニックを置いて宿に帰る事に。
「バートさん、二人の事宜しくお願いします」
「あ・・・よ、よろしくお願いします!」
頭を下げる俺を子供達はギョッとした目で見ていたが、ライエルだけは直ぐに気が付いて俺と同じ様に頭を下げた。良い傾向だな、こうして少しづつ変わって行けば、孤児だとか貧民だとかの偏見も無くなって行く筈だ。
宿に帰って直ぐにおかみさんと親父さんに話をした。
「給金とか要らないんで、こいつ等使って貰えませんか?何なら授業料を払っても良いんで」と。
「うちは家族四人で十分回せてるんだが・・・・・」
「あら良いじゃない、仕事に余裕が出来れば買い物とか楽になるし、何か有ったらジン君が責任取ってくれるんでしょ?」
と言う事で、明日からライエルは厨房の下働き、女の子達は給仕や掃除をする事になった。これで俺が狩りに行っている間に街中をふら付いて面倒に巻き込まれる事もないだろう。おかみさんに昼食代として十万メル支払っておいたので、俺は明日から暫く狩りに出よう。
会員証の裏を見た。昨日今日で百万以上使ってる。まだまだ余裕は有るけど、こいつ等の為にも稼がないとな。
夕方に帰ってきたヒースとニックが商業組合の会員証を皆に見せて羨ましがられていた。残りの三人にもちゃんと仕事を見つけてやらねば。
夕食後に自室で魔力操作の訓練をしていると扉がノックされてヒースとニックが入ってきた。
「え~っと、その・・・ジン兄さん、ありがとう御座います・・・・・」
「あの、バートさんに聞きました。俺達の為に頭下げて頼んでくれて、本当にありがとう御座います!」
ヒースはちょっと口下手で口篭ってたけど、ニックはしっかりと言いたい事が言えたみたいだ。
「気にすんなって。半ば無理やり連れ出したのは俺なんだ。出来る事は何でもするさ。明日からバートさんの言う事ちゃんと聞いて頑張るんだぞ」
「「はい!」」
で、その後他の皆もやって来て、他愛の無い話で盛り上がり就寝した。明日から俺が狩りに行くからカロリーバーをねだりに来たのだ。ちゃっかりしてるなぁ。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




