異色
次の日、イベント当日になったクロエは、高校が終わると一目散にゲームを始めパーティーの拠点らしき小屋に入った。
「早すぎて誰もいないや…」
ポツリとクロエが喋ると、少し遅れてユナがゲームを始めた通知が来た。
(あっ!そうだった…昨日パーティーメンバーとフレンドになったから、フレンドがゲームを始めたら通知が来るんだった)
クロエは今までフレンドがいなかったため、通知に少し驚いた。
クロエが小屋でウロウロしてると、ユナが入ってきた。
「クロエちゃん久しぶり!って、昨日ぶりか!!」
突然背後から声をかけられ、クロエはびっくりして声を上げた。
「うわっ!」
「そんなお化けみたいな扱いしないでよ!」
「ごめんね…」
ユナは、クロエが本気で反省していて、申し訳なく感じた。
「時間があるし新しいパーティーの拠点を探そっか!今の小屋小さいからね」
ユナの発言をきっかけにクロエとユナの新しいパーティーの拠点探しが始まった。
「拠点はポイントで買うことができるから。今600ポイントしかないから大きいのは買えないけど…」
とユナが言った。
そう。このゲームはポイントで、「技の習得」、「拠点の購入」、「スキンの購入」など、全てポイントでやりくりできるのだ。
ちなみに600ポイントは、平均的なポイント数だ。
「クロエちゃんは何ポイント持ってるの?」
ユナが少しでも足しになればと思い尋ねると、
「…60」
(まあ初心者だし、スキンも初期のままだからしょうがないか)
「60ポイントかぁ」
ユナがそう呟いた時だった。
「あの……60億……」
「わかってるよ!60ポ……億!?」
ユナは目を見開き、クロエを凝視した。
そう、クロエはこのゲームで最強のプレイヤーであった。
ユナは、未だに開いた口が塞がらない。
「ク、クロエちゃんは初心者ではない?」
ユナが驚きながらクロエに聞くと、クロエは無言で頷いた。
ユナには無言で頷くのがかっこよく見えたが、実はユナの圧に怯えていただけだった。
それからユナはクロエにあれこれ質問をした。
「イベントってでたことある?」
「なんでそんなにポイントが多いの?」
「なんで初期スキンなの?」
「なんで……………なの?」
ユナの勢いは止まることを知らない。
クロエはまた、岩のように固まってしまった。
ユナの勢いに押されるクロエが可哀想にも見えてこなくもない。
クロエは聞かれたことに対して、ゆっくりと小さな声で話し始めた。
ユナの質問はしばらく続いた。クロエは一つずつ、ゆっくりと答えていった。
Q イベントってでたことある?
A ソロならある。
Q なんでそんなにポイントが多いの?
A ダンジョンを一人で攻略したりソロイベントで1位
になったことがあるから。
Q なんで初期スキンなの?
A 興味ないから。
クロエはその後もいろいろな質問に答えた。
その中でユナは、気になったことがあった。
(ダンジョンを一人で攻略したり、ソロイベントで1位になったりって、かなりの実力者だよね…)
「クロエちゃんって何のダンジョンを一人で攻略して、何のソロイベントで1位になったの?」
ユナが珍しく真剣な顔をしてクロエに質問する。
「し、試練の迷宮とかです。そ、ソロイベントはモンスター地獄ってやつです。」
クロエは小さな声で答えた。
ユナは開いた口が永遠に塞がらない。
(クロエちゃんって、初心者じゃなくてこのゲーム1位の超実力者だったんだ!!!!!)
(でもなんでどこのパーティーにも入ってないんだろう?)
ユナには疑問がどんどん湧いてくる。
パーティーに入っていない理由は簡単だ。クロエが人見知りで話すと緊張してしまうため、クロエからパーティーに入ることを避けていた。
だがユナに無理やり引っ張られてしまってはしょうがない、とパーティーに入ったのだった。
「クロエちゃんってそんなに強かったんだ!」
とユナが言うと
「ありがとうございます」
と言ったクロエの表情は、珍しく笑顔だった。
2人は、クロエのポイントで、ありえないほど大きいパーティーの拠点を購入した。
しばらくして、2人がパーティーの拠点にはいると、そこにはティアとルーナがいた。
「なんですか?このお屋敷は?」
ルーナが驚愕しながら聞いた。
「ねえ!これどうしたの!?」
ティアも食い気味に聞いてきた。
ユナはさっきのことをクロエに説明するように言った。
「あの…その…」
クロエが話す内容を迷っていると、ユナが、まるで自分のことかのように誇らしげに話し始めた。
「クロエちゃんって初心者だと思うじゃん!実は試練の迷宮のクリア者でポイントを60億持ってるんだって!!」
(こんなに興奮しているユナを見たことがない。)
クロエはそう思った。
「えっ!? ちょ、ちょっと待って!?」
ティアは何度もクロエとスキンを見比べた。ルーナも驚きのあまり、言葉を失っていた。
「だったら!」
ティアが喋りだした。
「だったら、クロエが初期スキンはおかしいよ!みんなでスキン買いに行こう!」
「私は要らないから、みんなのを買いますね」
クロエは、スキンには興味ないからいらないのだ。
「そういうことならっ!スキンを売ってるお店に早く行こっ!」
ティアが元気よく走り出すと、
「そう来なくっちゃ」
ティアの提案にユナが乗った。
「そんなこと申し訳ないですよ。クロエさん!この恩は絶対に返します!」
ルーナはそう言いながらクロエの手をギュッと握った。
クロエの手は、少し温かく感じた。
店に着いた3人はスキンを選び、クロエはそれを見ていた。
「私はこれにします!」
ルーナは、白いウサギの耳がついたスキンを指差した。
「ルーナ、ウサギの被り物にするんだ!」
ティアが楽しそうに言った。
「はい。かわいいなと思って……」
ルーナは少し恥ずかしそうに笑った。
「じゃあ、私はこれ!」
ティアが選んだのは、オレンジ色のキツネの耳と尻尾がついたスキンだった。
「ティアらしいね!」
ユナが笑いながら言った。
「でしょ!」
ティアは嬉しそうに答えた。
ユナは悩みに悩んだ末、白いリボンがついてる水色のパーカーを選んだ。
「それじゃあ、買いますね」
クロエが3人のスキンを購入した。
「ええっ!? 本当に買ってくれたの!?」
ティアが目を輝かせた。
「クロエちゃん、ありがとう!」
ユナも満面の笑みでお礼を言った。
「クロエさん、本当にありがとうございます……!」
ルーナも嬉しそうに頭を下げた。
3人が新しいスキンに着替えると、さっきまでとは見違えるような姿になっていた。
クロエは、そんな3人を静かに見つめていた。
(みんな、嬉しそう……)
その様子を見て、クロエも少しだけ嬉しくなった。
「あと30分でイベント開始だからパーティーの拠点に戻ろう」
パーティーリーダーであるユナが言うと、全員パーティーの拠点に向かって歩き出した。
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3話のタイトルは、「ランク別モンスター討伐戦」です。




