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きっかけ

大粒の雨が降る日、学校の教室で窓の外を眺めている女の子がいる。


私の名前はクロエ。高校に通っていて、人と話すと緊張してしまうため、いつも一人でいる。


そんな内気なクロエが唯一、人と話せるのがVRゲームの世界だ。


始めたきっかけは、相手のリアルな顔が見えないから緊張しないと思った。ただそれだけだ。


このVRゲームは、モンスターを討伐すると、討伐したモンスターのレベルによってポイントが手に入る。

そして、手に入ったポイントで技を習得することができる。


また、ダンジョンと呼ばれるものがこのゲーム内にはたくさんあり、中でも最高難易度のダンジョンである「試練の迷宮」は多くのプレイヤーやパーティーがリタイアしている。


試練の迷宮は全部で6カ所あり、それぞれクリアすると、火、氷、風、雷、シールド、ヒールの6種類のうち、その迷宮に対応した最強技が手に入る。もちろん、ポイントもありえないほど入ってくる。


そして、このゲーム内で試練の迷宮をクリアしているプレイヤーがいるらしい。


しかも6つ全ての試練の迷宮をたった一人でだ。


ただでさえ、6つの試練の迷宮は、それぞれクリアしたプレイヤーが一人しかいないのに。


クロエはいつも、「一人」でのモンスター討伐、一人でのダンジョン攻略などをしている。


なぜなら、彼女には友達がいないからである。


いつものようにクロエがログインすると、そこには現実とは違う景色が広がっていた。


たくさんのプレイヤーが行き交う街。


その中でクロエは、いつものように一人で歩き始めた。


そして、いつものようにモンスターを倒しポイントを集めていた。


一人で休んでいると、どこからか女の子が突然近づいて来て、


「ねえ!そこにいる初期スキンの子!」


近くから大きな声で話しかけられ、人と話すのが苦手なクロエはビクッとした。


クロエは顔だけをゆっくり相手へ向けた。それと同時に、また話しかけられた。


「初期スキンだけど、初心者? だったら私のパーティーに入りなよ。一人でいると襲われちゃうよ! ほら、早く!」


クロエは喋る暇もなく手を引っ張られた。

いや、例え喋る暇があったとしても喋らないだろう。


しばらくすると、小さな小屋に着いた。


(パーティーの拠点だろう)


小屋に到着したとき、クロエはそう思った。


その小屋に入ると、自分の手を引っ張った子がこう言った。


「私はユナ、このパーティーのリーダーやってるんだ!いわゆるパーティーリーダー!よろしくね」


クロエは、(それって同じことじゃん)と心の中で思いながらも優しく頷いた。


クロエが顔を上げ周りを見渡すと、そこにはユナの他に2人のプレイヤーがいた。


ユナの自己紹介が終わると、他の2人も自己紹介を始めた。


「ルーナです、戦うのはまだ怖いから回復の練習してます。最近ヒールが使えるようになったので、けがをしたらいつでも言ってください!」


ヒールは回復技の中でとても簡単だ。そのため、一番最初に覚えるプレイヤーが多い。


(この子、おとなしそうで、すごいかわいいし、優しそうで友達もいっぱいいそう)


クロエは、羨ましそうな表情でルーナを見ていた。


「ティアです!!私も初心者でユナさんから技を教えてもらいました。だから、ファイアーボールやアイスボールなどが使えて、初心者の中では強い方だと思います!よろしくね!!」


(元気いっぱいでグイグイくるタイプかも…そうしたら少し苦手かもしれない)


クロエはそう思った反面、ティアちゃんは強くなると感じていた。


実は、このゲームでは、ポイントを使って技を解放し、習得する。これでやっと、技を使えるようになるのだ。なので、技を覚えるには練習をしなければならない。

さらに、ポイントはモンスターを討伐しないと入手できない。だから、ティアはそれだけ努力したのだろう。


このゲームでは、ポイントを使ってスキンを変更することもできる。

そのため、初期スキンのままゲームを続けているプレイヤーは少ない。


「このパーティーには、ルーナ、ティア、今日来ていない初心者2人、そして私の、計5人がいるんだ!初心者を多く集めているから君も初期スキンだし連れてきちゃった!」


ユナは太陽のような眩しい笑顔でクロエの方を見ながら喋った。


クロエは、ユナがずっと見つめてきたので石のような表情をしていた。


「あっ…そうだ!初期スキンの子自己紹介してよ!」


ユナからの急な要求に、いつか来るだろうと心のなかで必死に考えていたクロエはゆっくりと話し始めた。


「……クロエです。…よろしくお願いします…」


それは今にも枯れそうな花のような声だった。


「クロエっ!よろしくね!」


みんなからよろしくと言われたクロエは、少し嬉しそうな顔をしていたようにも見えた。


「じゃあ明日の、ランク別モンスター討伐戦のイベントは、クロエちゃんも出るよね?ビギナーだから安心だね!」


ユナがクロエに言った。


ランク別モンスター討伐戦というのは、名前の通りランク帯をパーティーで決めて挑戦するイベントだ。


そして、参加するランク帯とモンスターの討伐数で報酬となるポイントの量が変動する。


今回参加するビギナーというのは、このイベントのランク帯で最も低いものだ。


ランク帯は下から、「ビギナー」、「アドバンス」、「マスター」、「レジェンド」の4つがある。


先ほども言った通り、今回は一番ランク帯の低いビギナーでの参加だ。


(パーティーでの初イベント、緊張する…)


クロエは心の中で怯えていた。しかし、それが表情に出ていたことに、誰一人として気づかなかった。


もちろんクロエはさっきパーティーに誘われたばかりだから、【パーティーでのイベント】は初めてだ。


(せっかくやるなら頑張ってみよう!)


クロエは自分自身に言い聞かせた。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

本作の更新情報はXでもお知らせしていく予定です。

よろしければ、そちらもチェックしていただけるとうれしいです!

https://x.com/neko123ss

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