宿命
宏斗はハルクヴァールに帰ってきて以来、食事量は減り、授業にも集中できなくなっていた。
唯一、中庭のベンチに座り噴水を眺めることは欠かさなかった。
雪が高く降り積もっても、噴き上がる水が凍りつこうとも。
そんな日々が続いていたある日。
いつものように、宏斗はベンチに座っていた。
そこに、シューイチが隣に座った。
「久しく会っていなかった気がするな。お前の口が動かずとも、その顔を見れば何を考えているかはわかる。愛するものを失った気持ちはよくわかる。長く生きたからじゃない。俺が失ったのは100年もない間だ。生まれてからな。その後は失ったものを抱えて生きてきた。今でも失い続けている。だが、それを仕方ないことだとは思っていない。俺は戦い続ける。奪われた者たちの魂を背負って。」
「…たましい。」
「お前もまだ燃え尽きちゃいないだろ。前を向けとは言わない。ただ、失ったものに気負わされるな。過去を忘れず、今を生きろ。」
シューイチは立ち上がる。
「自分を見失うな。そして、周りを見ろ。お前は一人じゃない。俺が言いたいのはそれだけだ。」
そう言って、シューイチは去っていった。
宏斗はシューイチの言葉を反芻する。
自分の手のひらを見つめ、オルフェの血が染みついているように感じる。
しかし、リリサやほかの者たちを思い出し、洗い流されていく。
食堂
外は暗くなり、人はほとんどいなかった。
リリサを除いて。
リリサは広い食堂の端で、一人寂しく食事していた。
宏斗は隣に座る。
リリサは深く考え事をしており、宏斗には気が付かなかった。
「はあ…。」
深くため息をつき、空っぽの皿を見つめ、そろそろ自室に帰ろうかと動き出した。
そこでようやく宏斗に気付いた。
「!宏斗君、居たんだ。」
話しかけられても、宏斗は依然として口を閉じたままである。
ただ、その目は月明かりに照らされ、紅輝であった。
リリサは1年前の自分を思い出す。
語らずとも伝わる宏斗の表情は、自分とは格も違う。
驚いて立ったままだったが、落ち着きを取り戻し座る。
「宏斗君、いろいろと変わったね。」
「…そうか。」
「うん、少なくとも私が知っている宏斗君とは全然違うよ。」
「それは、リリサの見方が変わったからだと俺は思う。」
「そうかもしれないけど、そうじゃないかもしれない。けど、宏斗君は私の想像以上に変わったよ。」
「俺から見れば、リリサもだいぶ変わったように見える。俺のことをもう避けなくなった。」
「私ももう、子供じゃないからね。あの時とは考え方が少し変わったよ。」




