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勇者はだれ?  作者: 臥亜


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結界の夜

王城の地下には、誰も知らない部屋がある。


建国より前から存在する“核”。


そこに刻まれているのは、巨大な魔法陣。


王都全域を覆う結界の源だ。


王城の上空には、見えない膜が張られている。


魔王軍が直接侵入できない理由。


それが、この結界。


そして――


今夜。


アルヴァンは、その前に立っていた。


静かな地下空間。


青白い光を放つ魔法陣。


背後に、黒い霧。


「今なら王も油断している」


霧が囁く。


「祝宴の後。警備は薄い」


アルヴァンは結界を見つめる。


脳裏に浮かぶ。


歓声。


笑顔。


「勇者様」


拳を握る。


「……これで終わるんだな」


霧が嗤う。


「始まりだ」


アルヴァンは袖をめくる。


腕に刻まれた黒い紋様が光る。


契約の証。


彼は剣を抜く。


それは聖剣に似せた魔族の剣。


「やれ」


霧の命令。


アルヴァンは剣を振り上げる。


その瞬間。


「待って!」


声が響く。


地下の入り口から、リュカが駆け込む。


後ろにノアとガルド。


「間に合った……!」


アルヴァンは振り向く。


驚きはない。


「来ると思った」


霧が唸る。


「邪魔者か」


リュカは息を切らしながら言う。


「やめて!」


「それ壊したら、王都は終わる!」


アルヴァンは静かに答える。


「終わらせるんだ」


「不公平な世界を」


リュカは首を振る。


「壊しても、誰も救われない!」


アルヴァンの目が揺れる。


「俺は救われなかった」


空気が凍る。


リュカは一歩近づく。


「だからって、同じことするの?」


「村を壊した魔族と同じこと!」


その言葉が、刺さる。


アルヴァンの呼吸が乱れる。


霧が怒鳴る。


「迷うな!」


黒い力がアルヴァンの腕に絡みつく。


紋様が強く光る。


「約束を忘れたか!」


アルヴァンは歯を食いしばる。


「……黙れ」


霧がさらに力を注ぐ。


「契約は絶対だ!」


アルヴァンの剣が暴走する。


黒い光が溢れ出す。


リュカは剣を構える。


「止める!」


アルヴァンが突進する。


激突。


火花。


重い衝撃。


ガルドが横から斬り込む。


ノアが結界に干渉する。


だが。


アルヴァンは強い。


契約の力で増幅されている。


「どけ!」


彼の一撃が床を砕く。


魔法陣に亀裂が走る。


ピシッ。


空気が震える。


王都の上空。


見えない膜に、ひびが入る。


遠くで雷鳴のような音。


リュカの心臓が凍る。


「やばい……!」


アルヴァンは結界へ向かう。


迷いと苦しみの表情。


「俺は勇者だ……!」


リュカが叫ぶ。


「勇者なら、壊すんじゃない! 守るんだ!」


その言葉。


アルヴァンの足が止まる。


霧が激怒する。


「裏切る気か!」


黒い力がアルヴァンを包む。


体が浮く。


目が赤く染まりかける。


契約による強制。


「ぐっ……!」


アルヴァンは呻く。


理性が削られる。


リュカは走る。


怖い。


でも止まれない。


跳躍。


渾身の一撃。


「――ライトニング・スラッシュ!」


閃光。


アルヴァンの腕の紋様を斬る。


黒い血が散る。


契約紋が、裂ける。


霧が絶叫する。


「なに……!」


アルヴァンが床に落ちる。


呼吸が荒い。


紋様は完全には消えていない。


だが、弱まった。


結界の亀裂も、広がりは止まった。


静寂。


アルヴァンはリュカを見る。


震える声。


「……なぜ、止めた」


リュカは涙をこらえる。


「あなたが勇者だから」


アルヴァンの目が見開く。


「まだ、戻れる」


霧が再び集まる。


怒りに満ちて。


「愚か者ども!」


「計画は続行する!」


霧は結界の亀裂へ向かう。


自ら侵食しようとする。


ノアが叫ぶ。


「まずい、直接破壊する気だ!」


ガルドが構える。


リュカは立ち上がる。


「今度こそ止める!」


アルヴァンは、震える手で剣を握る。


葛藤。


痛み。


そして。


彼は立ち上がった。


「……俺も戦う」


霧が咆哮する。


勇者が、魔王側から離れかけている。


だが契約はまだ生きている。


戦いは終わらない。


結界はひび割れたまま。


空の向こうで、魔王の城がわずかに動く。


世界は、まだ危うい。

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