反逆の勇者
夜明け。
王城の鐘が鳴り響いた。
それは祝福ではない。
警鐘。
「勇者アルヴァン、王城結界破壊未遂の疑いあり!」
王都に動揺が走る。
兵が城内を駆け回る。
地下での戦いは、すでに報告されていた。
結界の亀裂。
魔力反応。
勇者の紋様。
証拠は揃っている。
リュカたちは王城の一室に囲まれていた。
目の前には王と重臣たち。
冷たい視線。
王が低く言う。
「説明せよ」
アルヴァンは前に出る。
「……事実だ」
空気が凍る。
「私は魔王と契約を結んでいた」
ざわめき。
怒号。
「裏切り者!」
「処刑だ!」
リュカが叫ぶ。
「違います!」
「結界は壊れてません! 止めました!」
だが重臣の一人が言う。
「勇者が契約したという事実だけで十分だ」
ノアが冷静に言う。
「契約はほぼ解除済みです」
「証明は?」
言葉に詰まる。
完全には消えていない紋様。
アルヴァンは袖をめくる。
黒い傷跡。
「未だ残っている」
兵がざわつく。
王は深く息を吐く。
「……勇者は、民の希望だ」
「疑念を抱かれた時点で、その資格はない」
アルヴァンは目を閉じる。
覚悟はしていた。
王が宣言する。
「アルヴァンを王都より永久追放」
「協力者三名も同罪とする」
リュカが息を呑む。
「私たちも!?」
「勇者を庇った」
それだけで十分だった。
兵が剣を構える。
ガルドが一歩前に出る。
「やるか?」
緊張。
だが王は手を上げる。
「血は流すな」
「夜明けまでに王都を去れ」
冷たい判決。
アルヴァンは膝をつく。
「……当然だ」
リュカは拳を握る。
守ったのに。
信じてもらえない。
王城を出る。
王都の通り。
昨日まで歓声をくれた人々が、今日は石を投げる。
「裏切り者!」
「偽勇者!」
石がアルヴァンの額を打つ。
血が流れる。
彼は何も言わない。
リュカが怒鳴る。
「やめて!」
だが止まらない。
ノアが静かに結界魔法で石を弾く。
ガルドが睨むだけで、人々は距離を取る。
門前。
朝日が昇る。
王都の外。
アルヴァンは振り返らない。
「すまない」
リュカは言う。
「謝らないで」
「一緒に決めた」
ガルドが肩を回す。
「面倒になったな」
ノアは地図を広げる。
「だが利点もある」
「王都の権力構造に縛られない」
アルヴァンは低く言う。
「魔王城への道は、北の断崖だ」
「空間座標はそこに刻まれている」
リュカは王都を見つめる。
守れなかった信用。
でも。
まだ世界は終わっていない。
「……行こう」
四人は歩き出す。
その背後で。
王城の塔の上。
ひとりの影が立っていた。
白髪の老人。
聖剣を語った男。
彼は呟く。
「試練は進んだな」
その瞳は、すべてを知っているようだった。
「勇者は、まだ生まれていない」
空の裂け目がわずかに広がる。
魔王の城が、近づいている。
王都追放。
だがそれは終わりではない。
ここからが、本当の勇者の旅だ。




