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記憶喪失の記憶ですか!?

「辞めちゃった?」

「はい。綺麗さっぱりと」

「昨日の今日で?」

「はい。昨日あの後すぐに」


 え?昨日のはなんだったの?

 僕と瑠奈は呆気にとられてしまった。

 蛯原さんがバスケ部のマネージャーを辞めたらしい。


「お二人に触発されちゃいました」


 不良少女と噂される瑠奈と記憶喪のフリを続ける僕になにを触発されたんだ?


「不満があるならハッキリ態度で示さないといけないなって。他人の顔色ばかり伺ってちゃダメなんだって」


 僕の場合は記憶喪失のフリをしてるから自分勝手に動いてるだけですけど?


「瑠奈の態度がデカイだけじゃないの?」

「キロ坊がそんなに早死にしたかったとはな」

「100歳まで生きたいです。ごめんなさい」

「うふふ、お二人はいつもこんな感じですか?」


 そういえば、僕はいつの間にか瑠奈を怖がっていない。

 それどころか一緒にいるとなんだか安心するな。

 それも彼女を知れば知るほどいい奴なのは明らかだし。


「父さんの熱狂的な信者だからね」

「違う!あれは神なのだよ喜路来くん」

「はいはい」

「うふふ。でも本当にありがとうございました。これからも良ければ声かけてくださいね」

「もちろんだ。クラスメイトだからな」

 

 嬉しそうに返事をする金髪美人の瑠奈だけど、何度見ても僕の目には尻尾をふるゴールデンレトリバーにしか見えなかった。


「なにか言った?」

「なにも」


 こっわ!

 この人は能力とか持ってないくせに動物的直感が鋭すぎる。

 たぶんうちの母さんといい勝負かもしれないな。


 * * *


「ねえ氷河くんちょっといいかな?」


 お昼ご飯を食べ終わると、クラスメイトの女子数人から声をかけられた。

 ちなみに瑠奈はトイレへ行っている。


「いいけど、なにか僕に用でもあるの?」

「うん。これをちょっと渡したくて……」


 3人いた女子のうちの1人から手紙を渡される。


「へ、返事は放課後の屋上でお願いします。では午後も授業頑張りましょう」


 顔を真っ赤にして走り去ると他のふたりもそれを追いかけていった。

 これってもしかして……


「不幸の手紙か?」

「うん、不幸のてが……って違うでしょ!いつの時代の人だよあんたは。たぶんラブレターっぽい」


 封緘としてハートのシールが貼られているから間違いないだろう。

 なんで僕なんかに!?

 

 記憶喪失なのはクラスメイト全員が知っている。

 そんな僕に告白しても昔を覚えていないはずだから意味はないと普通なら思うはずだ。


「知ってる奴なのか?」

「あんまり」

「クラスメイトだけどキロ坊は記憶喪失だからな」


 そうじゃなく本当にあまり知らない人なんだけど?


「瑠奈はどんな子か知ってる?」

「そうだな……目がふたつに鼻がひとつ、それと口がついてて耳もふたつあるな」

「ひとつでも欠けてたら人間じゃないけどね」


 ようするにあまり知らない子なのだ。


「なあ、その……キロ坊は彼女欲しいのか?」

「うーん、相手うんぬんより過去にいろいろあったからしばらくは遠慮したいな」

「そうだな。記憶ないフリを続けるのもそれはそれで大変そうだけど、それがいいかもな」

「……えええええええ!」


 周りには聞こえないほどの小さな声であっけらかんと瑠奈が言った。


「いつから気づいてたの?」

「最初から」

「……」


 父さん……ピンチです。

 僕はいったいどうしたら……


「誰にも言わないから安心しろって。これだけのことをするんだ、それなりに理由があるんだろ」

「父さんのアドバイスだよ。昔、父さんも階段から突き落とされて同じように過ごしたって」

「……さすがだな。犯人を探すため、同じように狙われないために記憶喪失のフリをするとは」


 ちょっと違うんだけど?

 頭が絡むとめんどいなこの人は。

 

 ただ気楽に高校生活を楽しみなさいとは言われたけど。

 そういえば犯人って誰なんだ?

 探してませんって言ったらさすがに父さんも怒るかな。


「犯人探しに」

「任せろ!」

「まだ言ってないけど、協力してくれるの?」

「だから任せろ!」


 なんだかやばい人に協力を求めてしまった気もするが、それは後の祭りだった。

 

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