久々の錬金術
目の前には鉄と不純物が混じった原石と、銀と不純物が混じった原石。それにボクは手をかざします。
「高温で溶かすので、絶対に流れる液体には触れないでください」
ボクの注意に、周囲で見ていたシャルドネ達は距離を取り始めました。
「はあああああ! てええええいい!」
そして、大声を出し気合を入れて鉄と銀の形を変形させます。鉄は土台。銀は音を響かせる部分として、形を整えます。そして……。
「これで完成です。どうですかこの素晴らしい形状は!」
巨大な『音叉』が四本、目の前に立っています。
きちんと配置も考慮し、小さな小屋の前の門みたいな感じも出しつつ、きちんと『音叉』としても使える優れものです!
「これまた大きい鉄の塊ね」
「鉄の塊とは失礼です! これは土台を鉄、しかもところどころ平等に空洞を空けてわざと揺れるように構造を整えた上に枝状の銀を設置。これが音を響かせる形状となっていて、中身を空洞にすることでさらに音を響かせる仕組みとなっているのです。そしてもっとも見て欲しい部分はこの鉄の土台に掘られたモンヨウガフンイキヲオオォォォ……。止めないのですね」
息が切れました。いつもなら強引にシャルドネが話を切り替えるのですが。
「どこまで続くか試したのよ」
何か掌で転がされた気分です! 次はたくさん息を吸ってから解説してやりますよ!
「んじぇー、さすが鉱石精霊んぼ。粘土細工なら得意んじぇが、鉱石の加工はできないオイラ達はただ尊敬するだけんじぇ」
目をキラキラ輝かせるノーム達に、少し照れてしまいます。
「さて、ボクの仕事は終わりました。次はフーリエの出番です」
「は、はい!」」
四本の巨大な『音叉』の中心に立ち、正面の凄まじい結界に守られている小屋に向けてフーリエは鈴を鳴らしました。
『リーン』
そして、その音は『音叉』にも伝わり、『音叉』からも大きな鈴の音が鳴り始めます。
『リーン』『リーーン』『リリーン』
その音は徐々に大きく広がり、やがて小屋の結界は薄くなっていきました。
「フーリエはそのまま鳴らしてて下さい。ボクが取りに行きますね」
「はい!」
ボクは一歩踏み出して、小屋へ行きます。
先程まで凄まじい結界があった個所なので、正直怖いですが……フーリエとボクの『音叉』を信じましょう。
一歩。一歩。確実に歩いていき、そして小屋の目の前に到着しました。
小屋には小さな扉があり、そこを開くと一冊の書物がありました。凄く古いですね。
「これが……神術の?」
それを取り、小屋から出ます。そして結界があった場所より後ろまで歩き、フーリエに指示を出しました。
「フーリエ、もう大丈夫です」
「はい!」
鈴の音を止めます。まだ『音叉』から音が鳴り響いていますが、徐々に収まるでしょう。
「ふう、正直結構怖かったです」
「お疲れ様でした。ゴルド様」
「ええ、フーリエがわざわざ来てくれたからですよ」
流れるように頭を撫でてしまいました。しかしこの時のフーリエはいつも嬉しそうな顔をするので、やはりこの行動に間違いは無いのでしょう。
「ゴルド。一つ報告があるわ」
「なんですか?」
シャルドネが真剣な顔でボクを見ます。まさか、敵襲でも?
「……体が……軽いの」
ああ、そういえば魔力を抑制する特殊な音なので、シャルドネに入り込んだ魔力が一時的に収まったのでしょう。
「良い事では?」
「いや、私は別に良いのよ。定期的に悪魔のフーリエに魔力を吸ってもらえれば。問題はあっちよ」
そう言って、指を刺した先には。
「んじぇー。力が入らないんぼ」
「んがー。魔力が薄いんじぇー」
「……んぼ」
ふむ、もう少し指向性を考慮した作りにすればよかったですね。失敗失敗。
「失敗失敗じゃないですよ。ゴルド様」
「あはは」




