感動的?な再会
「美味しいです! 美味しいですゴルド様!」
「それは良かったですねー」
フーリエ(本物)が到着して、感動の再会……と思ったら、すごい速さで席に座り芋を食べ始めました。
「フーリエ様、こちら『とてもきれいな水』ですんじぇ」
「あわわ! ありがとうございます!」
まあ、フーリエからすれば、記憶を共有しているドッペルゲンガーと入れ替わっただけなので、感動も何も無いのでしょう。現に普段と変わりませんし。
「というか、あの『どっぺるげんがー』と本物が出会うとどうなるの?」
シャルドネのふとした疑問にフーリエは答えます。
「はむ……、えっと、もぐもぐ、ごくっ。マリー様から言われた話だと、どちらも自我を持ってお互いどちらが残るか戦い始めるそうです」
「……やめておきましょう。可愛いフーリエが争うなんて、私には耐えられないわ!」
時々シャルドネのその茶番は何なんでしょうね。
とはいえ、シャルドネは時々自然な微笑みをフーリエに見せます。ずっと『心情読破』を使えば、どこかは読み取れるのでしょうけど、そんなひどい事はしません。常識ある精霊なので。
☆
フーリエの食事も終え、本題の『神術の書物』が眠る小屋に再度来ました。今度は鈴を持ったフーリエも一緒です。
カンパネとやらはこうなる事もわかっていたのでしょうか。
「では、いきますね」
りーん。そう鳴り響き、周囲の魔力は減少……してはいるのですが、一定の魔力からは減りません。
「さすがにこの魔力でもシャルドネは難しいですね」
「はい。シャルドネ様基準で考えると、腕一本で済むくらいですね」
ぱああああああん!
ぽこっ!
「……あの、せめて平等にしませんか?」
「ふふ、甘いわねゴルド。これはフーリエ教育第二弾。名付けて『威力が倍になっていくお仕置きパンチ』よ」
「威力が倍ですか?」
頭に疑問を浮かべるボクとフーリエ。それを見てニヤニヤしながら話し始めます。
「フーリエ、今のは威力一のパンチよ。次もし悪い事をしたら威力二のパンチよ。そして次に悪い事をしたら威力は四よ。そして次に……」
「しゃ、シャルドネ様! ご、ごめんなさいです!」
なるほど。徐々に恐ろしい拳が飛んでくるんですね。これは……脅迫ですね。
「ちなみにさっきのボクのパンチは威力いくつですか?」
「四ね」
「ひっ!」
あれで四って、八は消滅しますよ!
「そんな冗談は置いといて、どうするのよ。こんな小さな鈴一つで足りないなら、フーリエが来た意味がなくなるわよ?」
「そうですね……鈴を増やす事もできませんし……音を増やすなら……」
ふと、手に鉄の棒を生成しました。
「なんか久々に錬金術っぽい事をしたわね」
「まあ、錬金術師を名乗ってますから」
ピンっと鉄の棒をはじくと、キーンと音を立てて揺れます。なるほど、一を二。二を四ですか。
「シャルドネの『フーリエ教育第二弾作戦』で行きましょう!」
ボクの発言に、全員が「え?」と言いました。
☆
「んじぇ! んじぇ!」
「運ぶんぼ! あ、それは左側んじぇ!」
「重いんが!」
ノーム達に、大量の鉄の原石を小屋の近くに運んでもらいました。
「一体何をするのですか?」
「鉄を利用して、音を増幅させるのです。こういう形の物を四本立てるのです」
小さな一本の棒をフーリエに渡します。一本の棒ですが持ち手部分は一本で、中心から二つに分かれています。確か別世界だと『音叉』という物でしたっけ。
「ゴルドの魔力で作れば?」
「大きいものを作るつもりなので魔力が枯渇します。精霊の魔力は無限ではないのです」
うんうん。とノーム全員も首を縦に振りました。
「そ、そう。でもノーム達は随分と協力的ね」
「当然んぼ! ノームは鉱石の原石を見つける事は得意んじゃけど、加工ができないんじぇ」
「……なるほど。本当に錬金ね」
「等価交換と言ってほしいです。これで書物が見れるなら、原石を高純度の鉄に換えるくらい簡単な……予想より多いですね」
小さい小屋をはるかに超える鉄の原石の山。中には銀も交じっていますよこれ。
「鉄も銀も見分けができないのが土の精霊の惜しい所んじぇ。できればその分別もお願いしたいんじぇ」
「まあ良いでしょう」
「んじぇ! ありがたいんぼ!」
さて、ノームの大行列も……ん? 最後尾に小さなノームが歩いてきました。
手には小さな銀の原石を持っています。
「んぼ! んぼ!」
「んじぇ! ノーラ! そんな小さな鉱石は役に立たないんじぇ!」
「でも、少しでも役に立つなら、ウチの鉱石も使って欲しいんじぇ!」
「ご迷惑になるんじぇ! 早く戻すんじぇ!」
「いややんぼ! ゴルド様、これも使ってくださいんぼ!」
渡された銀の原石は、とても小さく、そこから取り出せるのは本当に小さな豆粒くらいでしょう。
「初めてのお仕事でとれた鉱石んじぇ! 役に立てて欲しいんぼ!」
キラキラとした目で渡された銀の原石。
周囲は心配そうに見ています。
「ゴルド……」
シャルドネも「何とかしてあげて」と言わんばかりの表情です。
いや、この空気を何とかしてくださいよ!
何ですかこの感動的なのかお笑いなのか分からない空気は!
だって小さいノームですよ! このボクのいたたまれない心をまず何とかしてほしいです!
「……心中お察しします。ゴルド様」
あ、今のフーリエは悪魔では無いので『心情読破』が使えるのですね。というか精霊に『心情読破』を使える人ってこの世界にそれほどウヨウヨいるのですか?
「こ、こほん。これは高純度過ぎて使えません。加工はしますが、これは大切に保存することをお勧めしますよ」
そう言ってボクは手をかざして原石から銀だけを抜き取り、小さいコインに変えました。
「あ、ありがとうんじぇ! 大切にするんぼ!」
「は、はい」
さて、途中脱線しましたが、本番はこれからです。
目の前には大きな鉄や銀の原石の山。
「いきますよ。久々に『錬金術師』のお仕事です!」




