上司(ゴルド)の命令
フーリエ(本物)は不思議な鈴を持っています。その鈴の音は周囲の魔力を抑える効果があり、もしかしたらこの強力な魔力の結界を一時的に抑制する事ができるかもしれません。
「そもそもあの鈴は何なのですか? 普通の鉱石で作られたようにも見えませんし」
「……わかりません。ただ、エルフのきゃっ! ……失礼しました。エルフが昔から持っている大切な物だとかぎゃあ!」
ぎゃあって言いましたよ。
「まあ……当然よね。今は夜。そんな中森を一人の幼い少女が歩いてここに来てるんだから」
「仕方が無いです。昼間はフーリエも忙しいのですから」
「……ゴルド様、ちなみに今日の出来事をワタチの記憶だけで言うと、タプル様の手伝いとテツヤ様の鍛錬の手伝いと姉へ連絡……をしながらゴルド様と一緒に行動、そして大ノーム様と戦闘です」
あ、記憶共有だと行動も倍になるのですか。
「重労働ね。もしくは一人の負担が減るようにフーリエを増やせば良いんじゃない?」
「どういう計算をしたらそうなるんですか! 思考が三倍になるだけですよ!」
「あ、そうか。分担されるわけじゃないのね。あはは」
人手不足も増やせば解決……とはいかないみたいですね。
フーリエ(本物)には引き続き頑張ってもらって、現在何をしているかというと。
「お待たせしましたんじぇ! ノーム一族全力で料理をしました! お楽しみくださいんじぇ!」
小さいノーム達が頭に大きな皿を乗せて、色とりどりの料理を運んでいます。
「……その、大丈夫なの?」
あ、シャルドネはセイラの料理にトラウマがあるのですよね。
エルフは基本的に草食で、しかも素材そのものの良さを引き立てた料理……つまり、そのまま食べます。
死神グリムもそうですが、エルフの場合は空気中の魔力だけで生きていけないそうなので、草木からの魔力で補っているのだとか。
ボクは空気中の魔力以外に、地面に座ればとりあえず砂とかから魔力を取り込めます。
直接口にすれば早いのですが、味覚こそないものの、歯に砂が挟まるのは苦手なのです。
「シャルドネ様! ご安心を! オイラ達は土の精霊んじぇ」
「土料理の大皿とかはゴルドに流し込むわよ?」
「できますけどやめてください」
「土の精霊は農作物についての知識も豊富んじぇ!」
「美味しい豆や御芋を調理したんぼ!」
そしてテーブルに並べられたのは、色とりどりの野菜が主の料理の数々。これは凄いですね。
「……味は?」
「安心してほしいんじぇ! 地の精霊は魔術もそれなりに使えるから焼き料理もあるんぼ。しかし、シャルドネ様にはまずこれを食べて欲しいんぼ!」
そして差し出されたのは、湯気が出ているだけの……芋ですね。
「……セイラの料理の記憶が」
「過去に何があったかわからんじぇが、とにかく一口! それだけでわかるんじぇ!」
恐る恐る湯気が出ている芋を口に運ぶシャルドネ。心配そうにボクとフーリエは見ています。
「な、なにこれ、すごい美味しいじゃない!」
そう言った瞬間、ノームは喜び飛び跳ねました。
「え、うそ、本当においしい。ただ熱いだけじゃなく、こう……しょっぱい?」
「なるほど、『岩塩』ですね」
「さすがは鉱石精霊様ですんぼ。こちら、オイラ達が頑張って集めた『岩塩』をふんだんに使った一品んじぇ。そして調理方法は地熱を使った『蒸す』方法で、長時間じっくりと待ち、細い木の枝がスッと入るようになれば完成……んぼ!」
「どうして精霊ってこう、こだわった物に関しては説明が長いのかしら?」
じーっとボクを見てきました。目を横にそらすと偶然フーリエが目に入ったのですが、何やら震えています。
「フーリエ、どうしました?」
うつむいています。気分が悪いのでしょうか?
「ずるいです! 美味しそうです! もうちょっと待ってて下さい間もなく到着しますから!」
ああ、シャルドネの食べる姿を見て、羨ましくなったのですね。




