不穏な空気
シャルドネの体内にある魔力も安定し、再度大ノームの場所へと行きました。
大ノームの反応はとても冷たいものでした。
「んじぇ? 娘は元気になったんぼ?」
「おかげさまで」
「んー、どうやったかは知らないけれど、災難だったんじぇ」
「本当にそう思っていますか?」
ボク含め、三人は大ノームを睨みました。
「んー。半分しか思っていないんぼ。だって、ここで人間がくたばっても、オイラ達には関係無いんじぇ」
心の無い回答。いや、エルフの存在があったので、ボクもすっかり忘れていました。
そもそも精霊に心がある事自体、少ないですからね。
「まあ、強いて言えば、オイラ達の部下のノームが鉱石精霊『なんか』に負けたのが悔しいんじぇ」
殺気を感じました。
周囲の小さなノームたちは、全員ボク達を見ています。目視で把握出来る範囲では二十くらいでしょうか。
「鉱石精霊『なんか』とは、ずいぶん喧嘩腰ね。何か恨みでも?」
「あるんじぇ。オイラ達よりちょっと早く生まれて、ちょっと直系だっただけで、なんかエラそうなのが気にいらないんぼ」
「その通りんぼ!」
「んじぇ!」
「んじょ!」
ノームがぴょんぴょん飛び跳ねます。すると地面が少し揺れている気がします。
「鉱石精霊って偉いの?」
「さ、さあ。少なくともボクを見てもらえれば」
「……変な意地はあるわよね。ノームの意見も一理あるわ」
「どっちの味方なんですか!」
真剣に考えないでください。周囲のノームは貴女を殺そうとしたのですよ!
「まあいいわ。それで、どうすれば良いのかしら?」
「再戦んじぇ!」
「そうんぼ!」
「んじぇ!」
もともとそのつもりだったのでしょうか。少しでも戦力を削ろうとシャルドネに魔力を送って、休憩と称してその間も魔力を送り戦力を削る。
賢いというか、卑怯と言うか。とにかく怒りの感情がこみ上げてきました。
「シャルドネ、ノーム二十体と大ノーム一体。どっちが良いですか?」
「じゃあ二十で。ついでに、フーリエはそっちが良いでしょ?」
「え、それだとシャルドネ様が」
「体内の魔力が多すぎると危ないのでしょ? じゃあそこまで増える前に全部倒せば良いのよ」
「……わかりました。でも無理はしないでください」
そして、フーリエはシャルドネの手を離しました。
「んじぇ? その人間一人でノーム百体を相手にするのかんじぇ?」
「はあ? 百とは随分と大きく『ざっ!』出たわ……ああ、後ろにいたの。そう、気が付かなかった」
「シャルドネ、勝負です。ボクが先か、シャルドネが先か!」
内心大笑いしながら、ボクとフーリエは大ノームに向かって走りました。
「ああああ! やってやろうじゃない!」




