ノームの集落の入り口
頬を膨らまして拗ねるフーリエを慰めつつ、ノームの集落に到着しました。
なんとこの辺りの魔力は、他と比べて溶け込むように流れてきます。別な言い方をすると、居心地が良いです!
「……湿気が……ちょっと嫌ね」
「何を言ってるんですか! この魔力の流れが良いのですよ!」
「そう言われても、私は魔力なんて感じないわよ。あるのはこの狭い道と暗い洞窟。そして漂う湿気。お日様が恋しくなるわね」
ということで、現在狭い洞窟を歩いているわけです。
時々屈んで進む場所もありますが、ノームの身長はボクの膝くらいしか無いので、問答無用で突き進んでいきます。
「いっそのこと……この尖った岩くらいは殴って良いかしら……」
「や、やめるんも! それは長年時間をかけてようやく育った『つらら石』だんじぇ! 精霊術ではとても再現できない自然の美の結晶もんな!」
「わ、わかったわ。慎重に避けるから、そういう大事なことは先に言ってもらえるかしら」
「……まさか、すでに」
「いや? 壊してないわよ?」
「……む、本当っぽいもんぼ。『心情読破』で何も読み取れないもんじぇ」
まさか、ここに来てシャルドネの『心が欠けている状態』が肉体的強化部分以外に役に立つとは思わなかったです。というか『つらら石』壊したんですね。
「ところでゴルド様」
ふとフーリエが話しかけてきました。
「どうしました?」
「あの、槍みたいなものが刺さったノームが二体ほどいると思うのですが、痛くないのでしょうか?」
ボクも同じ疑問は抱いています。
だってすごく自然な流れで『では案内しますんなんなー』って言われたので、ずっと気になっていました。
「んな? もしかしてオイラの事を話してるんじぇ?」
「はい。先程から突き刺さってて、痛くないのですか?」
「問題ないんじぇ。それよりも手足が冷えている状態の方がオイラ的に辛いんな」
「……後でワタチが離れた時にゴルド様が聖術を使ってくれます」
「ありがとんなー同士ー」
「ええ! 仕事増やさないでくださいよ!」
というか、ノームが聖術を使えば良いのではと思いました。
フーリエの件はすでに周知しているので、聖術を使うのは控えてもらっているのですが、こうなるなら先に『冷え症』を治してから進んだ方が良かったと思いました。
「土の精霊は神術と精霊術しか使えんもんじぇ」
「え、そうなのですか?」
「同士が規格外って言いたいんも。まあ仕方がないんじぇけど」
てっきり精霊は一通り使えるものだと思っていました。
「エルフもそうだんもー。血で異なるんけど、精霊術と闇の魔術が使えるんじぇ」
「ええ! そうなのですか!」
反応したのはフーリエでした。
「そうだんも。エルフは人間に近い感情を持っているから、闇の魔術と相性が良いんじぇ。一方で使えなくはないけれど、信仰する対象がいないから神術が不得意んじぇ」
「すごい興味深いです! では人間の場合は!」
「人間はそもそも無所属に分類んも。だから魔術が得意んじぇ。もちろん『カンパネ』という神がいるから、神術も使えるんじぇ。闇の魔術はエルフと同様んじぇ。ただ、精霊術は使えないんが」
「あわ、あわ」
何やら盛り上がってますね。ボクとシャルドネはあくびをしました。
「ご、ゴルド様! これは大発見です! 今すぐにでも雪の地の魔術研究所に論文を提出したいです!」
息を荒くするフーリエ。
そしてここでボクはノームの口を押えるべきだと後悔しました。
「え、同士は知ってるんよじぇ?」
「……まあ」
「なんで教えてくれなかったんですか!」
ちょ、凄まじい勢いで魔力を吸ってくるのですが!
目が、目がああああ!
「まあ待ちなさいフーリエ」
フーリエの肩にポンと手を置くシャルドネ。
「フーリエに答えを全部教えたら、フーリエの為にならない。 ゴルドはそう思って、きっとわざと教えなかったのよ」
「ご、ゴルド様……」
「んじぇ? そうなんも? なら悪い事をしたんも」
すごく罪悪感があります。いや、単純に教えると終わりが見えない気がしたのであえて言わなかったのですが。モノは言いようですね。
「そ、その通りです。シャルドネ、いつ『心情読破』を取得したのかと驚きましたよ。流石は最初から行動していただけありますね」
「ま、まあねー……貸しよ」
ボソッとボクに貸しを一つ作り、そして再度歩き始めると、ノームが一斉に止まりました。
「ついたんも。この先が『原初の神から生まれし精霊ノーム』の集落んじぇ!」
まるで地底王国。
そんな言葉が口から漏れそうなほど、すごく大きな町がそこにありました。




