大きな建造物
門は大きく、横の門番用扉はギリギリ一人入れるかどうかの大きさでした。
この周囲に住む人々はここを『大きな建物』と言ってますが、おそらくそう近い将来に『城』や『国』という単語が広まる事でしょう。
それもレイジという黒服男の計画だと思うのですが、疑問なのはガランの方です。
シャルドネの父にして最強の人類。それ以外はただの置物同然とも思える状況に、この周囲の人たちは何も思っていないのでしょうか。
「フーリエです。ガラン様に『会いに』来ました」
「む? 報告では無く……か?」
「はい!」
強気に出るフーリエ。後ろにはボクとシャルドネとマリーがついています。
「う、うむ、レイジ様に相談を……」
そう言った瞬間でした。
「その必要はありませんよ」
「れ、レイジ様!」
黒服の男が現れました。
いつみてもその白い肌を見ると、日に浴びていないのではと思います。
「ガラン『王』がお待ちです。どうぞお入りください」
「お待ちとは随分ね」
「ふふ、『姫』が来たのです。丁重に入れなければ失礼に当たります」
やはりこのレイジという男は異世界の知識を蓄えています。おそらく今マリーが持っている『ネクロノミコン』から得た知識と思いますが。
「それではこちらになります。『姫』」
「その『ひめ』って単語、なんか背筋がかゆいからやめてもらえるかしら?」
「それは失礼。ではシャルドネ様一行、こちらです」
☆
城の中はとても広く、天井が高いです。声を出せば響き渡り、とても人間の手で作ったとは思えません。
(人間の技術だけなわけが無いじゃない。あの部分は魔術よ)
相変わらずマリーが心を読んで会話をしてきますが、もう慣れです。もし都合が悪い事を想像したらテツヤのセクシー姿を想像しましょう。
(……ごめん、自重するわ)
さて、進むにつれて近づくのは玉座でしょう。奥に大きな椅子があり、左右は鎧を来た兵士が数十。国を守る兵士と王の姿がそこにありました。
「まるで中世。王様と騎士って所ね」
その光景にマリーも言葉が漏れました。
「おや、そちらのお嬢様も我々の知識をご存じで?」
「ええ、もっともワタクシはこの『ネクロノミコン』なんて本で得た知識では無いけれどね」
「……どこでそれを?」
「あら、知っている素振りね。ふーん、ミッドの父に売り込んだのは貴方なの」
「……心を読まないで欲しいですね。礼儀知らずのお嬢様ですね」
レイジの声色がどんどん下がっていく中、玉座は近づいています。どっしりと構えるガランが近づくにつれて圧を感じました。
「『平民』はここまでです。ここからは神聖な領域です」
「ふん、何が神聖よ。ただガランがいるだけじゃない」
ガシャ!
周囲の兵士がシャルドネに向けて剣を構えました。
「待て」
ガランの声が響きわたり、一斉に周囲の兵士は剣を納めます。
「シャルドネか。森の地以来と言った所か」
「ふん、会いたくはなかったわ。それよりも聞かせてもらいましょう。どうしてエルフの集落を襲ったのかしら?」
「あれは」
「あれは必要な犠牲です」
ガランが話す瞬間レイジが横から言葉を投げました。
「必要な犠牲?」
「ええ、あれこそ必要な犠牲です。魔術を使うことができるエルフ族に力を見せつけることで、エルフはガラン王に逆らえなくなるのです!」
「言っている意味がわからないんだけど!」
「当然です。『姫』にはこれから覚えてもらう単語ですからね!」
完全に暴走しています。ひとまずエルフの集落を破壊した人物に代わりはありませんし、この場は……。
ん?フーリエの顔色がおかしいです。
「フーリエ、どうしました?」
「……ゴルド様、お気をつけてください。あのガラン様という方の魔力を覗くと、腰に激痛が来ます!」
「シャルドネ! 戦闘態勢です!」




