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微かに潜む影

 平和な世界とシャルドネから聞いていましたが、どうやらシャルドネがいなくなってから色々と状況が変わったようですね。

 フーリエから依頼を受けてから、シャルドネは少し言葉が減った気がします。


「平和な世界から一変したことにショックですか?」

「まさか、心が欠けている私にショックなんて感情ないわ」


 そんな返事をしつつも表情はどこか悲しい感じを出しています。


「といっても、村に危険が迫るのを事前に防げるなら喜んでやるわ。それに、ゴルドにも悪くない条件を出されたのでしょう?」

「はい。フーリエに感謝です」


 報酬内容は、魔術研究所で現在知りうる神術の研究結果と、『森の地』へ行けるように手続きをしてくれるらしいです。


 もともとフーリエはこの草の地周辺の警備として派遣されましたが、森の地に住むエルフからも警備の依頼を受け、特別に入ることができるそうです。

 今回フーリエが事前に連絡を取ってくれたことで、エルフの集落には話が通っており、魔獣の群れ及び親玉を倒せばエルフの集落に行けるとのこと。


「私も森の地は興味があったの。何かが住んでいるというあやふやな答えしかなかったからね」

「というか、セイラから何も聞かなかったのですか?」

「そうね、森には妖精が住んでいるとしか。セイラがエルフなんて、本当に知らなかったわ」


 そもそもセイラが何故この村に来たのかがわかりませんが、色々事情もあるのでしょうか。


「さて、魔獣についての情報だけど、まずはこの地図を見てもらえる?」


 そう言って広げた地図は、とても簡単に書かれた紙でした。シャルドネお手製でしょうか。


「ここが今の場所で、北東に行けば岩の地。南に行けば森の地ね」

「なるほど。最北端は雪の地。そこから岩の地。草の地、森の地と繋がっているのですね」

「そう。この「く」の形に大陸はなっていて、今はちょうど真ん中。岩の地は最北端の雪の地の中間辺りね」

「離島はどの辺ですか?」


 一番最初にシャルドネと出会った場所は『離島』と呼ばれている場所でした。海を渡ったのでどこかにあるのでしょう。


「この『く』の形の最北端と最南端の間の部分に離島があるわ。だから言ってしまえばどこの地からでも内側からなら離島に行くことは可能なの」

「なるほど。ようやくこの世界の地理がわかりました」

「それで、この今いる場所は草の地と呼ばれているけど、いくつか集落があって、一番大きな街がここにあるの」


 そして指を指した場所は「く」の形の一番最西端でした。しかしそこから少しシャルドネは強めに発言します。


「まず言っておくのは、ここには行かないわ」

「……どうしてですか?」

「色々事情はあるの」


 本当ならここで『心情読破』を使って事情を聞き出すところですが、シャルドネには使用できません。

 後ほど話してくれることを祈りますか。


「わかりました。まずは魔獣退治をしましょう」

「ええ、フーリエが遭遇した場所はここから北に行った場所の森ね」

「ん、待ってください。ボク達がここに来た時は草原で森では無かったような?」

「森を行けば時間的に短縮はされたけど、動物がいるから少し危険と思って遠回りしたのよ。まさか誰かが来てるとは思わなかったけどね」

「なるほど。では今回はその森に行くのですね」


 森の部分に丸をつけて、打ち合わせは終わりです。


「さて、出発は明日で良いかしら?」

「はい。その間に色々準備しています」

「あ、だったらこれお願いしても良いかしら?」


 そう言って渡されたのは、一本のダガーでした。


「……ミッドから拾っていたのですね」

「本来は私の物よ。無いとは思うけど刃こぼれとかしてないか見てくれる?」

「ボクの生成した鉄ですが……分かりました。では預かります」


 そう言って、ダガーに触れました。


 すると、予想外の出来事が起こってしまいました。



「があ!」



「え、どうしたの?」


「……腰痛が」


 突如襲ってきた腰痛に驚きシャルドネは少し苦笑します。


「もう、こういう時にそんな笑いは……え、待って、確か聞いた話だと」


 そうです。


 本来悪魔の本体を倒せば、付着している悪魔の魔力も消滅します。

 ミッドはダガーを持っていたため悪魔の魔力は付着するでしょう。

 そして悪魔の魔力がボクに反応したと言うことは。



 ミッドの母親の中にいた悪魔は、まだ生きているということです。

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