雪の地北部の洞窟
打ち合わせは雪の地北部の洞窟に行く間に行われました。
本来はこういう状況には国が軍を整えて、危険地帯に調査などを行うのでしょうが、国という概念が無いこの世界では、自主的に治安を守っている部隊が調査等を行う事になってました。
残念な事に、誰一人として戻ってこなかったという現実から、治安を守っている部隊からの志願者はゼロ。ということで、ボク・シャルドネ・マリーの三人で行くことになったので、歩きながら話そうという事になったのです。
「神……ということだけど、何か方法はあるの?」
「ある……かも知れませんとしか言えません」
「曖昧ね」
ボクは苦い顔でしか言えません。
そこに気がついたマリーが代わりに答えます。
「一番の主軸はシャルドネよ。そして、相手は神。神術の『心情読破』や『認識阻害』は息を吸うように使えるのよ。ここで作戦を話したら、シャルドネを通してバレるわね」
「ゴルドとマリーは大丈夫なの?」
「心情読破に対抗できる神術、『心情偽装』でなんとかするわ」
「……わかった。信用する」
真剣な目でボクを見ます。しかしシャルドネの手は震えていました。
相手は鎌を持った死神。何故無差別に人を殺すのかは不明ですが、それも含めて調査したいところです。
「まもなく到着ね。あれは……何かしら?」
茂みに隠れてマリーが目を細めて見る先には、黒い獣のような形の生物がいました。
「あれは……悪魔でしょうか」
「悪魔? どうしてここに?」
「分かりませんが、見る限り低位の名無し悪魔と思われます。ちなみにこれ以上は『絶対に』探りません!」
「……わかってるわよ」
悪魔の魔力と精霊の魔力の相性は最悪……というより、一方的に精霊の魔力が悪魔の魔力に負けてしまうので、回復が大変なのです。
「でもワタクシが見る限りでは、生物にも見えるわね。もしかして、悪魔の薬を飲んだ獣……かしら?」
「それも考えられます」
「なら、倒せるわね!」
一瞬でした。
シャルドネは、一瞬で茂みから出て、まずは目の前の悪魔に拳を入れます。
「ゴルド! 残りの数!」
「えっと、六です!」
「了解!」
周囲を一周し、次に近い悪魔へ拳を入れます。その間に遠い悪魔は異変に気がついたのか、仲間を呼ぼうと吠えようとします。
「ワオッ!」
氷の槍が悪魔の喉に刺さり、声が出せない状態となります。
「マリーは普通の魔術も使えるのですね」
「ええ、これくらいは護身術よ。錬金術師さんも見せてくれても良いのよ?」
「では、『投石』!」
ボクの生成した石は、シャルドネの背中を狙っていた悪魔に命中。怯んだ所をシャルドネが回し蹴りをして命を絶ちました。
「ふう、これで六。周囲は居ないわね?」
「魔力探知にも引っかかりません。おそらく大丈夫です」
「こうして見ると、錬金術師さんはやはりずるいわね。魔力の塊なのでしかた無いのだけれど」
マリーがボクを見て突然不満を口に出しました。
「心情読破をポンポン使えるマリーに言われましても、そちらの方がボクとしてはすごいと思うのですが」
「これは生まれつきなのよ。神術に関しては相性が良いの。多分……神の心も読めるかもしれないわね」
それはすごいですね。でしたら是非この先にいると言われている神に使ってもらいたいです。神に使えたらの話ですけどね。
少し進むと洞窟の入り口に到着しました。さて、洞窟の周囲を念の為『魔力探知』で調べま……。
「ぬああ!」
突如、後ろへ飛ばされました。
シャルドネが瞬時に反応して、ボクの体を捕まえます。
「大丈夫?」
「ええ、大丈夫です。ですが、これから大丈夫では無いと思います。だって、あれは……」
そう。予想はしていましたが、できれば外れて欲しかったです。
『何の用だ、下位精霊。それと人間』
頭に直接呼びかけるその声は、恐怖がこみ上げるほど恐ろしい音圧。そして、その姿は人間が想像して描いた神と言われる外観から外れた容姿をした化け物でした。




