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つかの間の休日

「……暇ですね」


 精霊として、またしても初めての感情が生まれました。

 今までは神々が住まう世界でのんびり観察したり、適当に鉱石を作っては壊しを数百年繰り返していたのですが、今思えばそれはとても贅沢な生活だったのでしょうか。


 というのも、昨日までは悪魔に体を乗っ取られた船長や、この周囲で強い分類に入るマリーとの手合わせに体を動かし、暇も無かったのですが……。


「今日は……休みよ!」


 とシャルドネが言ったので、ボクは絶賛独り言で自分自身の実況をしているのです。暇です。

 昨日取った宿の部屋中に何かないか探しましたが、特にはありません。ちなみにここの宿は船長兄弟を引き渡した報酬で泊まれました。


 天井の穴を数えるのもなかなか奥が深いと最初は思いつつ、数分もすれば飽きます。

 毛布の繊維を迷路に見立ててやっても、終わりが見えません。飽きました。


 マリーからは『錬金術師の証の手配はしたから、もう少し待ってて』と言われ、精霊術は一時的に禁止されてしまいました。

 魔術や神術を使えるので、それほど苦ではありませんが、自分が否定されているみたいで嫌ですね。

 そんな事を思っていたら、ドアがノックされました。


「ゴルド。入って良い?」

「シャルドネですか? どうしました?」

「暇を持て余しているなら、町に一緒に行かないかしら? ここは一度しか来てないから、どんな町か見てみたいのよ」

「わかりました」


 一人で行けば……という言葉が出かかりましたが、ボクも暇ですので、ここは一緒に行くことにしました。



「ということで、ここが魔術研究所近辺の商店街ね!」

「雪が降っている中、それを忘れさせるくらい賑やかですね」


 ここに来て最初に目に入った商店街に到着しました。

 周りを見ると、様々な店が並んでいて賑わっていて、肉を焼いている店や、本を売っている店など。やはり研究所があるせいか薬や魔術書が多いですね。


「ゴルドは魔術書使わないの?」

「人間が作った魔術書は多少解釈されているので……」

「そういえばゴルドって魔術以外は何が使えるのかしら?」

「一通りですね。一般的な魔術。神々が使う神術。精霊が使う精霊術……これは鉱石に限りますが」

「あの光の球は?」


 光の球というと船長を灰にした球でしょうか。


「あれは聖術ですね。魔術とは異なります」

「へえ……何かズルいわね」

「精霊ですから、魔力の塊なので許してください」


 それを言ったらシャルドネは人間離れした肉体を持っているので、それもどうかと思います。


「あ、傷薬をちょうど切らしていたのよ。ちょっと買って良い?」

「良いですよ」


 あ、そういえば治癒術も少しは使えました。でもこれを言うと怪我をしたときにボク頼りとなってしまうので、できるだけ傷薬に頑張って貰いましょう。


「これ欲しいのだけれど……マンドラゴラの根一つで良いかしら?」

「おお、これはなかなか良いマンドラゴラだ。これだと傷薬五個だな」

「あら、予想以上ね。わかったわ」


 そう言ってシャルドネは店員さんから布に薬草が塗り込まれた傷薬を貰いました。傷口に巻くのでしょう。


「ふふ。さすがゴルドの選定したマンドラゴラね。マンドラゴラの根一つで傷薬が予想の倍以上交換できたわ」

「それは良かったです。悲鳴を聞いてまで抜いた甲斐がありました」


 マンドラゴラを抜く際に発せられる悲鳴は、人間が聞くと精神が破壊されると言いますが、別に精霊のボクはまったく平気というわけでもありません。

 突然隣で大声の悲鳴を聞いたら誰でも嫌ですよね。そんな感じです。


「あ、服も買いましょう。これだとマンドラゴラ一つで良い服が買えるわね」

「そうですね。所々ボロボロですし」

「女物だしね?」

「……それは言わないでください」


 船長と戦っている時もですが、このモフモフがどれだけ集中力が消えたことやら。とはいえ好意でゲイルドから貰った物です。あまり文句は言えません。


 衣類の店に入り、色々な商品を眺めます。

 やはり雪の地という事もあってか、今着ているコートの様な服が多いですね。


「これなんかどう?」


 迷うこと無く女性物を勧めるシャルドネ。だから一応ボク設定上は男ですよね。


「男物が良いです」

「えー、可愛いのに」

「本当にそう思ってますか?」

「……そうよ?」

「一瞬躊躇いましたね!」


 そんな会話をしながら、ようやく決まった服は。


 シャルドネは、主に赤と白を主体としたコートで、金髪がとても良く栄えます。ゲイルドから貰った子供用の服よりは少し大人な雰囲気を出した少しスリムな感じですが……やはりにじみ出る子供っぽさは隠せませんね。


 ボクは黄色を主体としたロングコートにしました。腰のベルトで体を固定し、機動性を少し考えました。銀髪と黄色って、案外相性は悪く無いのですね。


「ブーブー」

「不満は百年後くらいに聞きますよ」

「絶対にこっちの方が可愛いのに」

「だからそれは……女性でも着る人が限られる目に刺さるような桃色のコートを見せつけないでください!」

「あはは、じゃあとりあえずこれにするわね」

「……はい」


 根っこが一つ無いマンドラゴラと、もう一体を渡して服を二着購入しました。店員さんからは服をもう一着でもと言われましたが断りました。後ろで桃色コートを見せつける人間がいるので、早急に店を出ましょう。

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