[手合わせ]ゴルド 対 シャルドネ
店を出て、町を歩いていると、マリーがいました。
「あらマリー。マリーも買い物?」
「ええ、あなた達は服を?」
「そうよ。少しボロボロだったから新調したのよ」
「そう。あの服も似合ってたけど、それもいいわね」
「ありがとう。あれは頂き物だったから、ゴルドが修繕してまた着るわ」
「ええ!」
聞いてませんよ!
出来ますけどそれは精霊術だから疲れるのですよ!
「あら、それは良いわね。物の修繕も錬金術師の役目よ?」
「っぐ! 嘘かどうか確認したいのに、マリーの『心情偽装』で読めません」
「ふふふ」
先ほどからすました顔でボクを見ていますが、またしても良からぬ事を考えているのでしょうか。話し方もなんとなくシャルドネに似ていますし、集中しているのでしょう。ボロが出ないように。
「それよりも偶然出会えて良かったわ。はいこれ、錬金術師の証よ」
「早いですね。翌日ですよ?」
「ワタクシを誰だと思っているのかしら?」
「……ボクを留めようとした、ちょっと怖い魔術師くらいに思っていました」
「失礼ね! 否定出来ないのが残念だけど!」
そう言って、錬金術師の証である小さいメダルを渡されました。これは金ですね。
「各地にある雪の地の人間が管理している施設だったら、これを見せれば身分証明くらいにはなるわよ」
「え、岩の地では使えないのですか?」
「岩の地の人間がこのメダルを知らないわ。言葉だけは知ってるみたいだから、岩の地で錬金術師を名乗りたいなら、まず岩の地に住んでいる雪の地の人間に聞きなさい」
「わかりました。そうします」
とはいえ、雪の地と雪の地管轄の場所ではこの証は使えそうです。まずは安心と思っておきましょう。
「私には何か無いの!」
「シャルドネに?」
「窓から一緒に飛び出して助けたのよ! 何か無いの!」
「そうね……」
そう言って、マリーの目つきが少し変わりました。
「ワタクシを最後の最後で落とした時の腰の痛みが消える傷薬が欲しいわね」
「要求!」
「当たり前よ! 着地と共に落とすなんて、普通に飛び降りたと変わらないわよ!」
「暴れるマリーが悪いんじゃ無い!」
「ワタクシの所為なの!」
まさかボクと船長兄弟が戦っている間に、見えないところで負傷者が居たとは思いませんでした。
というか、マリーを送るのに時間がかかったって言ってたのはこの事でしたか。
「全く、シャルドネと親しくなってからというもの、いつも何か起こるわよね」
「えー、それを言ったらマリーだって」
喧嘩もおさまらなさそうなので、仲裁に入りますか。
「それ以上の喧嘩は周囲に迷惑がかかります。ちょっと場所を変えましょう」
「そうね。折角だし少し体を動かしたいわ」
「望むところね。魔術の真骨頂を見せてあげるわ!」
この人たちは……。
☆
「なんでボクがシャルドネを前に立っているのですか!」
「ワタクシ、今腰痛い」
「魔術の真骨頂は!」
「え、精霊のあなたがもはや魔術の原初と言っても過言じゃ無いと思うし、ワタクシより説得力があるかと」
「そうですけど!」
広い場所に到着して、まずマリーはボクに「じゃ、よろしく」と言って後ろに下がっていきました。
シャルドネはその場で拳を振って、イメージトレーニングをしています。
「シャルドネはやる気満々ですし!」
「良いじゃない。軽い手合わせよ。ほら、棒術使ってたじゃない」
「あれはとっさの……まあ良いです」
そう言ってボクは自身の魔力を出して、鉄の棒を出しました。
「ふふ、少し気合いを入れないとね」
シャルドネから一瞬殺気を感じました。これは油断すると危ないやつですね。
「では開始の合図行くわよ」
マリーは右手を挙げました。下げたら試合開始でしょうか。
「開始!」
……手を下げないのですか!
「てえええいい!」
「ぬああああ!」
危なかったです。非常に危なかったです。
鉄の棒を目の前に構えた途端、そこにシャルドネは殴りかかってきました。
「新しい服も良い感じに動きやすいわね。てえい!」
「服の感想を言いながら回し蹴りをしないでください!」
回し蹴りを屈んで回避。その回転を利用して今度は低い回し蹴りをしてきます。
「たああ!」
「ふああ!」
鉄の棒を利用して少し宙に浮き、下方の回し蹴りも回避。これはなんとかうまくいきそのまま体制を整えます。
「や、やるわね。正直驚いたわ」
「はあ、はあ、人間全員がこれほどだったら、神々の世界の精霊達は今頃脅えてますよ」
「何を言っているかはわからないけど、とりあえず褒めてくれてるみたい……ね!」
拳の連打。それを棒で受け、時々『土壁』を作り障害物を生成。
「あー! だからこれ堅いんだって!」
「知ってますよ! だから……こう!」
土壁を爆破させます。中には可燃性のある鉱石を入れていたので、魔術で発火。ボクの作った土壁なので、破壊もボクなら簡単です。
爆破した土壁は、細かい石をまき散らし、それをシャルドネに襲いかかります。
「ていていていてていてていてていててててててい!」
いやいやいや! 全部手で受け流してますよ!
やっぱり人間辞めてませんか!
「せえええい!」
驚いている隙を突かれました。
ボクの頭にはシャルドネの拳が触れてるだけで痛みはありません。つまりこれは、完全な勝利宣言です。
「はあ、はあ、私の勝ちで良いかしら?」
「今日は……です。力が戻ったら再戦しましょう」
「良いわよ。ふふ」
そう言って、ボクとシャルドネの初戦は……初戦?
「よく考えたらこれで一対一で良いですよね」
「出会った時のもカウントしてるの!」
「当然です」
「……良いわよ。じゃあ近いうち勝ち越すわよ!」
ボクの発言に予想外だったのでしょうか。笑いつつも悔しい顔も作り、とても楽しそうでした。
「シャルドネがあそこまで楽しそうなのは、見たこと無いわね」
「そうなんですか?」
「ええ……色々あったからね。ちなみにシャルドネに『心情読破』は使った?」
心情読破ですか? 確か検問の時に一度。
「ええ、使いましたよ? 検問で何かを言いたかったそうなので」
「そう……あの子、心が少し戻ったのね」
マリーの優しい目つきと、過去を思い出しているのか、若干の悲しそうな微笑みに、何か疑問を感じた休日でした。
ゴルドとシャルドネの様に、主人公二人が戦う時って裏切りや闇落ちなどがありますよね。そういった物語も考えましたが、今回は普通に手合わせで二人が仲良く手合わせする場面を書きました。楽しんでいただけたらと思います。




