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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第8章 ドラゴニア情勢は複雑怪奇
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行方不明

 わたしは「はぁ?」と、首をひねりつつ、

「いきなり、何をバタバタと…… アメリアがいなくなったって? でも、道に迷ったとか、どこかで遊んでいて遅くなってるとか、そんな感じでは……」

「いえ、そのような冗談を言えるような場合ではありません! ひと言で言えば、マジヤバイみたいな、とにかく、アメリアが行方不明なのですよ!!」

 パターソンは、わたしに覆い被さるようにして言った。パターソンの口から「マジヤバイ」が出てくるとは、意外。でも、それほど深刻に考えるところだろうか。本当にアメリアが行方不明になったとしても、居候がいなくなったと考えれば、食い扶持が削減できたという解釈も成り立つわけで、であれば、特段の問題はなく、アンジェラさえ無事なら……

 わたしは、ここで、「あっ!」と声を上げて、パターソンの胸ぐらをグイと捕まえ、

「アンジェラは無事なの!? アメリアと一緒にいたんじゃないの?」

 すると、その時、パターソンのすぐ後ろから、

「お願いします。アメリアさんを…… どうか、アメリアさんを助けて……」

 と、アンジェラが悲痛な声で訴えた(今までパターソンの陰に隠れていて、しかも応接室が暗いこともあり、彼女はわたしの目に入っていなかった)。正直、アメリアがいなくなっても痛くもかゆくもないのが本音だけど、アンジェラがこう言うなら、仕方がない。

 わたしは「ふぅ」と小さくため息をつき、

「分かったわ。アメリアは捜してあげるから、いつ、どこで、どのようにしていなくなっちゃったのか、状況を説明しなさいよ。」


 というわけで、クレアやパターソンの話を総合すると、以下……

 日頃の外出の際、基本的に帝都の駐在武官(親衛隊)に護衛を受けることの多いアメリアとアンジェラは、自分たちが保護される側にいることで、わたしやパターソンに迷惑をかけていると思い、「汚名挽回」を思い立った。すなわち、今後は一切の護衛なしで外出できるようになるため、まず手始めに、帝都の市場まで、アメリアとアンジェラだけでこっそりとお使いに向うことにした。この日の目当ては、本日のみ限定入荷の「エルフの森の高級トリュフ」のゲット。市場に着くと、アメリアは、バーゲンセールのオバサンのごとく「うおぉ」と大音声を上げ、他の買い物客の群れ(つまりライバル。貴族や大商人にはグルメが多いらしい)の中に、ただひとり突入し、それっきり、行方が分からなくなってしまったという。

 アンジェラは、いつまでたってもアメリアが戻ってこないので、どうしようと途方に暮れていたが、そこに偶然にも、スヴォールのところに行く途中のパターソンが通りがかった。アンジェラが「かくかくしかじか」と事情を話すと、パターソンは「それは大変だ」と、彼女とともに、アメリアの捜索を開始したという。

 当初、パターソンは、「迷子になっただけで、すぐに見つかるだろう」と思っていたが、どこを探してもいない。そこで、急遽、帝都の駐在武官を招集し、裏通りや、細い路地や、さらには地下下水道にまで捜索範囲を広げたが、手がかりさえつかめない。アメリアは、帝都で頻発している誘拐事件に巻き込まれた可能性もあり、身の安全が危ぶまれる状況だという。なお、アメリアの捜索のため、スヴォールの住居兼研究所の訪問は中止とのこと。

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