表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第8章 ドラゴニア情勢は複雑怪奇
75/293

研究の進捗状況

 パターソンは、ここで、抱えていた資料を机の上に置き、

「ところで、カトリーナ様、先ほど、私を『呼ぼうとしていた』とは、いかなる用件で?」

「ええ、そのことね。実は、とても、くさい…… いえ、そうじゃなく、でも、やっぱり、とてつもなく、くさい話には違いないんだけどね……」

 すると、パターソンは「ははは」と苦笑しつつ、

「分かりにくい表現ですが、意味はおおよそ分かります。以前、重武装人造人型兵器の研究・開発を依頼したスヴォールは、その後、どうなっているのか、あるいは、研究が進んでいるのかということでしょうか」

「よく、今の言い方で分かったわね。『くさい』以外に何も言ってないけど、さすが。で、どう? 少しは研究もはかどっているのかしら」

 すると、パターソンは、何やら言いにくそうに口をモゴモゴとさせ、数秒後、踏ん切りがついたかのように、

「申し訳ありません、カトリーナ様。実は、スヴォールとは、あのとき以来、接触していないのです。え~、この際、なんともはやですが……」

 と、パターソンは顔を伏せ、本当に面目なさげ。でも、気持ちは分かる。あんな「くさい」ところに、自らの主体的意志で出向こうという人は、実際問題、いないだろう。日頃はソツのないパターソンだけど、スヴォールの研究の進捗状況を確認せねばと思いながら、ついつい後回しになってしまったということも、十分にあり得る話だと思う。

 わたしは、特に表情を変えることもパターソンを見上げ、

「分かったわ。あなたを責めてるわけじゃない。ただ、スヴォールに研究を依頼してから、結構、日も経ってるから、この辺りで、ひとつ、研究の進み具合を見てきてくれる?」

「承知しました。で、カトリーナ様は、どうされます? 御自分の目で確認されますか」

「わたし? わたしは、当然……、いえ、遠慮しておくわ」

 と、深い意味も浅い意味もあるわけではないが、とりあえずはニッコリ。

 パターソンは一礼すると、クルリと向きを変え、これからすぐにスヴォールの住居兼研究所に向かうのだろう、やや駆け足で応接室を出た。


 プチドラは、ジ~ッと、わたしを見上げ、

「マスター、通常一般人の社会道徳的な観点から言えば、今みたいに、彼一人に全部をというのは、その、なんというか……」

「分かってるわ。誰もが嫌がるような汚くてくさい仕事を、上司としての権限を活用して部下に押しつけるのは、いかがなものか、ということでしょ」

 プチドラはコクリとうなずいた。わたしにも、多少、後ろめたい思いはあるし、自らスヴォールの研究の進捗状況を確かめたい気もする。でも、あんな、筆舌に尽くしがたいようなところ……、思い出すだけでも、オェ~。

「それじゃ、プチドラ、あなただけでも、パターソンと一緒に行く?」

 プチドラは、左に右にブルンブルンと首を大きく回した。やはり、プチドラも、イヤなものはイヤということらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ