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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第6章 ぶっ壊れて逝っちまっている錬金術師
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このまま平穏無事に終わっては

 ここは帝都の一等地、わたしの屋敷。

「ふわぁ~~、眠い…… どうして夜は、時間が経つのが早いのかしら」」

 わたしは寝室のベッドの中で暖かさに包まれながら、早い話が朝寝坊。

 ちなみに、(宮殿から)屋敷に戻った後は、取り立てて言うほどのこともなく(すなわち、平和そのもの)、数日が経過した。この間、わたしは昼前に目を覚まし、寝ぼけ眼をこすりながらプチドラを抱いて応接室に赴いて朝昼兼用食を口に運び、アメリアとアンジェラの天然ボケ・ツッコミによるやかましい漫才あるいはコントを横目に、ようやく意識がハッキリとしてくるというパターンの繰り返し。


 この日も、(非常に強力な)後ろ髪を引かれる思いをどうにか断ち切ってベッドから這い出すと、プチドラを抱き、夢遊病者のようにフラフラと応接室に向かった。

「カトリーナ様、おはようございます。とりあえず、お食事です」

 応接室では、例によってパターソンが、いつもの朝昼兼用食を運び込み、

「いやあ、しかし、戦争が回避できたのは、何よりでした」

 と、心から喜んでいる様子。確かに、戦争大好き全開バリバリみたいな危ない人は、そうそういるものではない。パターソンも、わたしから、ドラゴニアの債務の一部を負担することにより、ドラゴニアのワイン産出地帯におけるマーチャント商会の権利を譲り受け、その結果、ウェルシーとマーチャント商会の戦争が回避される見通しとなった話を聞くと、ホッと胸を撫で下ろした。

「ウェルシー本国にも、この度の戦役は中止と、動員令解除の命令書を送付しました」

 パターソンは、業務量としては、一旦始めた戦争準備の中止やウェルシー本国と帝都とのやり取りなど、結構忙しくなったはずだけど、さほど苦になっていない様子。否、むしろ喜んで仕事に取り組んでいるような雰囲気。

「アンジェラさん、世の中が平和に治まるということは、すなわち、唯一神の思し召しでもあるのです。唯一神の思し召しということは、取りも直さず……」

「でも、唯一神のほかに神様がいないとすると、論理的には、戦争が勃発することも、唯一神の思し召しということになるのではありませんか?」

「え~っと、え~っと……、それはですね、やはり、唯一神ですから、そこは……」

 食事をするわたしの傍らでは、いつものように、アメリアとアンジェラによる漫才あるいはコントが繰り広げられている。アメリアは、答えに窮したのか、助けを求めるような目でわたしに視線を送っているが、戦争と平和の背後にどのような神の思し召しが働いているかなど、わたしに分かるわけがないではないか。


 ともあれ、わたしはひととおり朝昼兼用食を平らげ、

「ごちそうさま。まあまあ美味しかったわ。それはそれとして、パターソン、ちょっと……」

 と、彼に向かって手招きした。平和が訪れたとホッとしているパターソンに言うのはどうかという気もするが、わたしとしては、このまま平穏無事に事が終わっては面白くないような気もするので……

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