隻眼の黒龍、動く
6体の鎧武者たちは、ガシャン、ガシャンと金属音を響かせつつ、プロトタイプ1号機をぐるりと取り囲み、
「ウガガガガガガガー! ウガガガガガガガー!! ウガガガガガガガー!!!」
と、何度も繰り返すようだが、またしても大音声。だだ、こうなると、いわゆる尺を稼ぐ以上の意味を見出しがたいような気もするが……
これに対し、プロトタイプ1号機は、
「ウガガガガガガー、ウガガガガガガー、ウガガガガガガー」
と、良く言えば勇敢に、おそらく客観的に言えば無謀にも、ファイティングポーズを取りながら鎧武者たちに向かっていった。
その時、アンジェラがわたしの服の袖をそっと引き、
「お姉様、いくらなんでも、1対6では……」
「そうね、多分、勝ち目はないでしょう」
そして、わたしは隻眼の黒龍を見上げ、
「頼むわ。火炎攻撃であの6体を一網打尽というわけにはいかないと思うけど、騎士団やニコラスたちがいなくなった分、戦いやすいでしょう」
すると、隻眼の黒龍は、「分かった」とばかりに大きな頭でこくりとうなずくと、巨大なコウモリの翼を広げ、空中に舞い上がった。
そして、プロトタイプ1号機と6対の鎧武者がどつき合っている(より精確に言えば、周囲を鎧武者たちに囲まれてタコ殴りにされている)ところの上空に移動し、6体の鎧武者のうち1体に狙いを定め、急降下。その1体を位置エネルギーと運動エネルギーの相乗効果により押しつぶした。
しかし、その鎧武者もさすがと言おうか、隻眼の黒龍に押しつぶされただけでは戦闘不能になることはなく(「ウガッ、ウガガガッ」と、かなりのダメージを受けているようではあるが)、起き上がって隻眼の黒龍に挑みかかってくる。
これを見たブラックシャドウは、前方に少し身を乗り出し、
「これは予想以上の性能だな。あの隻眼の黒龍のボディプレスを受けても、ぶっ壊れないとはね……」
と、何やら感じ入っているような……、しかし、単にそれだけではなさそうな様子。一体、何を考えているのだろう。ほんの少し前までは、やかましいくらいに「商談」を言ってたのに、今はそうした話を切り出してくる気配はない。何か企んでいるのだろうが……、一体、なんなんだか……
ちなみに、その間も戦闘は続き、プロトタイプ1号機の相手をしていた(より精確に言えば、取り囲んでボコボコにしていた)残る5体のうち2体が、攻撃の対象を変更したらしく、プロトタイプ1号機から離れ、またしても(もう、いい加減にしてほしいが)、
「ウガガガガガガガー! ウガガガガガガガー!! ウガガガガガガガー!!!」
と、今度は隻眼の黒龍に向かってガシャン、ガシャンと突進してきた。




