手前勝手な騎士様たち
プロトタイプ１号機も６体の鎧武者も「ウガガ」ばかりだが、今回は、少しだけ今までと違っていた。プロトタイプ１号機は、意味や意図は不明だが、左右の腕をぐるんぐるんと回転させると、
「ウガガガガガガー、ウガガガガガガー、ウガガガガガガー」
と、自らが対戦している鎧武者に向かって、激しいパンチの連打を浴びせた。なお、「激しい」とは、（多少の誇張を交えながら）具体的に表現すると、毎秒何十発ものパンチを繰り出すみたいな、かつての北斗七星にちなむ拳法漫画の主人公のような勢い。
これには、ブラックシャドウも少し感心したのか、身を乗り出して、
「ほお、あの小さい方も、結構やるじゃないか」
プロタイプ１号機のパンチの連打を浴びた鎧武者は、「ガガ…」と、弱々しい声を発しつつ、２、３歩、後ずさり、そのままガシャーーーンと大きな音を立てて後方に倒れた。
ただ、プロトタイプ１号機は、その鎧武者にとどめを刺すのではなく、ガシャン、ガシャンと金属音を響かせつつ、ドラゴニア騎士団や青年ドラゴニア党を追い詰めている他の５体の鎧武者に背後から迫り、
「ウガガガガガガー、ウガガガガガガー、ウガガガガガガー」
と、５体の鎧武者を相手に激しいパンチの連打を浴びせていく。
これを見たアース騎士団長は、
「おお、豪傑殿、かたじけない！ しんがりを引き受けてくださるか！！ では、我々としては、その好意に謝意を表しつつ、今のうちに速やかに撤退、撤退だぁーーー！！！」
と、騎士団や青年ドラゴニア党に号令をかけた。要は、「逃げろ」ということだろう。なんだか、漫才かコントの一場面のような気もしないではないが……
ブラックシャドウも、これには少々、いや、かなり呆れたのだろう、
「なんとも手前勝手な騎士様たちだねえ」
プロトタイプ１号機の予期せぬ大活躍（と言ってよかろう）により、ドラゴニア騎士団と青年ドラゴニア党は、ともかくも虎口を脱することになった。このままプロタイプ１号機の猛攻が６体の鎧武者たちを木っ端微塵に粉砕すれば万々歳ではある。
しかし、この世の中、簡単にそんなうまい話があろうはずはない。スヴォールは、ドラゴニアン・ハート城を押しつぶすように乗っかっている巨大な〇〇〇の上で手足をバタバタと動かし、
「こらぁー！ 何をトロいことしてるんだぁ！！ トロいヘタレは、この戦いが終わったら、お仕置きの○○○だ、ウキキキキィーーー！！！」
と（例によって、「〇〇〇」は筆者の自己規制）、全く意味不明なことを叫んでいる。
とはいえ、６体の鎧武者には通じるところがあったのだろう、
「ウガガガガガガガー！ ウガガガガガガガー！！ ウガガガガガガガー！！！」
耳障りなので「ウガガ」で張り合うのはやめてほしいが、それはともあれ、６体の鎧武者たちは息を吹き返したのか、一斉に大音声を挙げた。
