無能な味方は……
6体の鎧武者たちは、ガシャン、ガシャンという金属音を響かせながら、
「ウガガガガガガガー! ウガガガガガガガー!! ウガガガガガガガー!!!」
と、大音声を上げ、横一線になって、わたしたちとの間の距離を詰めてくる。
アース騎士団長と騎士団も、今や本気の戦闘モード、6体の鎧武者たちを鶴翼の陣で取り囲むように、さっと横に広がった。
ニコラスと青年ドラゴニア党も、すぐにその陣形に加わろうとしたが、
「下がっていろ! 今度の敵は手ごわいぞ!!」
と、アース騎士団長から一喝され、しかし、引き下がるのではなく、6体の鎧武者たちの側面を駆け抜けてその背後に回り込み、
「青年ドラゴニア党の意地を示すんだ!」
と、気勢を上げた。これで、一応、鎧武者たちを包囲した形ではある。
他方、隻眼の黒龍は、なんだか緊張感をそぐようなトーンで、
「困ったな~」
わたしは隻眼の黒龍を見上げ、
「困ったって、何が?」
「このまま乱戦になってしまうと、火炎攻撃で一気に、というわけにはいかないでしょ」
確かに、敵味方が入り乱れての乱戦で隻眼の黒龍の火炎攻撃をかければ、ドラゴニア騎士団と青年ドラゴニア党の面々にも巻き添えの犠牲者が相当数出るだろう。わたし的には一向に構わないことではあるが、さすがにアンジェラの見ている前では、そういうわけにいくまい。
ところが……、こういう場合のお約束と言おうか、
「ドラゴニアの平和は、我々、青年ドラゴニア党が守る!」
と、最初に動いたのは、自分の実力もわきまえていないであろうニコラスだった。そして、青年ドラゴニア党の面々もニコラスに続き、各々の武器を構えて6体の鎧武者の背後から斬り込んでいく。
鎧武者たちの正面で対峙するアース騎士団長は、「ああ」と天を仰ぎ、
「なぜ、おまえは、いつもっ……!」
しかし、そのまま何もせず見ているわけにはいかないので、
「ドラゴニア騎士団、総員、突撃!!!」
と、騎士団に号令をかけ、自らも近くに鎧武者を目標に、剣を振り上げる。
「あらららら……」
と、これは、あきれ返った隻眼の黒龍の声。
わたしも「ふぅ」と小さく息を吐き出し、
「彼らの頭は兜を乗っける以外の役には立たないみたいね」
真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方とはよく言ったものだが……、しかし、事態はそれだけでは済まなかった。
「ウガガガガガガー!!!」
ここに来て、プロトタイプ1号機が何を思ったか、6体の鎧武者に負けないくらいの大音声を上げた。




